■24 星の集い《デルタクロス》
雨の日って何か憂鬱な気分になりませんか?
シンプルな三角形のマークを見せつけられても困るんだけどな。
と、私は内心を思ってしまった。
放心状態の私達に首を傾げたスノーは、追加で何かを描き始める。
それは三角形の頂点一つ一つに星マークを加えたものだった。
「星?」
「そうだ」
「だからなに?」
「わからないか。発想力の問題か、知識の問題か……」
「酷い!」
私は怒鳴った。
するとスノーはさらに何かを描き加え始める。
ちょっと時間が掛かった後、私達に見せてくれたのは一つの完成された絵だった。
「これで分かるか」
「あれ?コレってもしかして……」
「星座?」
「そうだ。夏の大三角。はくちょう座、わし座、こと座、それぞれのα星であるデネブ、アルタイル、ベガ、を繋げた夏の代表格の星座だ」
「うーん、α星とかよく分かんないけど、夏の大三角とかロマンチックだよね」
「なにがだ?」
「織姫と彦星とか」
「ああ昔話か」
素っ気ない反応のスノー。
多分興味ないのだろう。
私も言ってはみたが、そこまで信じてはいない。昔は七夕とか楽しかったけどね。今でも好きだけだ。
「それでコレをエンブレムにするの?」
「そうだ。しかしこれはあくまでも一つの案に過ぎないがな」
ちなっちの質問に何処か歯切れの悪い言い方のスノー。
多分本人はコレがいいのだろう。
私もかっこいいし可愛いし別に良かった。
ちなっちに視線を送ると軽く頷く。
私が代表して伝えた。
「私達もそれでいいと思うよ。じゃあ後は名前だけど……」
「デルタクロス……」
「「?」」
私達は頭にはてなマークを浮かべた。
「『星の集い』。そう言ってみただけだ」
「どう言うこと?」
「デルタは数学で言う変数や関数の質量を表す記号でもあるが、他にはギリシャ語の第4字。しかしこの場合は三角形を表している。クロスは……」
「クロスは?」
黙り込むスノー。
しかしゆっくりと小さな声で口を動かしている。
「交差」
「ん?」
「交差。その名の通りの意味だ!」
「どう言うこと?」
私はさらにはてなを披露する。
隣ではポンと手を叩くちなっち。
しかしそんな私の脇腹をツンツンと膝で突くちなっち。
私は彼女に振り返ると耳元でこう伝えられる。
「つまり、星が私達のことで交差が巡り合わせってことだよ。友達とか友情って意味」
「なるほど!」
私もポンと手を大きく叩く。
つまりは造語だ。
でもそれがスノーの思っていることで、ギルド名とエンブレムにその想いを象ったのだ。
しかしそれが気恥ずかしいのか、チラリと私達の顔を睨むように見る。
ちょっと怖かったけど、私はほんわかした顔でいた。
「なんだ」
「別になんでもないよ」
「怪しいな」
「怪しくない。それよりもさ、早く登録しちゃお!」
「あ、ああ」
私はスノーの背中を押した。
後ろでは頭を掻くちなっち。
苦笑いを浮かべながら、息を吐き出していた。
「やれやれ。やっとだよ」
「ではギルド名は『星の集い』。ギルドマスターはマナさん、種族は〈ヒューマン〉。サブギルドマスターはちなっちさん、種族は〈エルフ〉ですね」
「「はい」」
「かしこまりました。ではこれにてギルド登録は完了です。お疲れ様でした」
そう受付の人に教えてもらうと、急に私達それぞれの前にウィンドウパネルが出現する。
急なことでびっくりして私。
そこにはレベル18になった私のパラメータの横に、新しく追加されたギルドについて記載されていた。
しかもそこには“F”と記号がある。
何のことだろう。
「あのこのFってなんですか?」
「そちらはギルドランクになります」
「ギルドランク?」
私は首を傾げた。
ちなっちは「ふーん」と呟き、対するスノーも「なるほど」と口にする。
如何やら解っていないのは私だけらしい。
「あの……」
「ギルドランクと言うのはギルドの現在のランクを表したものです。こちらはFからSまで存在しており、ギルドで受けられるギルドクエストや他の方々の依頼、何かしらの功績を成し遂げるたびにポイントが貯まっていく仕様です」
「ポイントが貯まるとどうなるんですか?」
「ポイントが一定値にまで達するとギルドランクが一つ上がります。そうなれば特別な特典がギルドから与えられる形になっております」
そう受付嬢の人は教えてくれた。
つまり頑張れ頑張るほどいいものが貰えることになる。
それは楽しみだった。
「ちなみにEランクに達することで、ギルドホームを入手することが可能です」
「ギルドホーム!」
私は机をバンと叩いた。
その時に見せた驚きと笑顔から受付嬢のNPCも笑顔を見せる。黒髪ボブカットの髪が滑らかに光を受けて反射する。
「はい」
「ねえちなっち、スノー!」
「うん。マナの言いたいことはわかってるよ」
「ギルドホームを獲得する。当面の目標は決まったな」
「うん。じゃあ皆んな、やろ!」
私は大きく頷いた。
ちなっちは頭の後ろで腕を組み、スノーもふんと鼻を鳴らしていた。
いよいよ私達、『星の集い』の始動である。




