■22 初めての対人戦
明日からまた怠いです。
如何やら私は絡まれてしまったそうです。
相手は男の人三人。
〈ヒューマン〉〈ドワーフ〉、それから〈ドラゴニュート〉と全員違う種族です。
しかもプレイヤーのようで厄介でした。
「あの何ですか?」
「聞いたぜ。お前レジェンドレアのアイテム持ってるんだってな!」
「えっと……」
「持ってんなら俺達に寄越しな!さもないと痛い目見ることになるぜ!」
「それはやだけど、渡しちゃうのもやだよ」
私ははっきりとそう言った。
しかし男達はそれが面白くないのか一方的に挑発を加えて苛立たせようとする。
「はぁん!こっちはわざわざ街中で警告してやってんのによ」
「街の外でそんなに痛い目見たいか!」
「見たいか!」
「うーん。それもやだなー」
私はまるで動じない。
と言うか側から見ている千夏ちゃんも変な顔をしている。
「ねえ話聞いてたら、そっちの勝手な言い分だよね?」
「うっせえ黙ってろ!お前には関係ねぇんだよ!」
ちなっちに怒鳴る〈ヒューマン〉の男。
「第一レベルも低い癖に関わんなよ!」
私はそれが妙にカチンと来た。
「ねえ私の友達に酷いこと言わないでくれるかな?レベルは低くても、私よりも強いんだよ」
「ああそうだろうな。どうせ、レジェンドレアのアイテムに助けられてるんだろ」
「うんそうだよ」
「開き直るのかよ。じゃあアレだ。ただのまぐれなんだな。笑えるぜ」
「笑ったらいいよ。本当のことだもん」
私がそう言うと場が凍りつく。
もっとも怒るのものかと思ったのだろうか?
馬鹿にされて苛立つのが狙いだろうか?
生憎と私はこれが実力だとは到底思わない。結局私は運がちょっぴりいいだけなのだ。
「はぁっ。拍子抜けだぜ」
「拍子抜けでいいよ。それよりもさ、もういい?迷惑なんだけだ」
「まだ話は終わってねぇ!」
「しつこいと嫌われると思うけどなー」
ちなっちがそう言った。
そう言われた〈ヒューマン〉の男はちなっちに殴りかかろうとしたが、それをヒョイっと避ける。
それに腹を立てた男。
怒りを露わにする。
「覚えておけよ!街の外に出たらコテンパンにしてひん剥いてやる!」
「それは嫌だよ。うーん、そうだ!」
「マナ?」
ちなっちが声を上げた。
「私と1対3で戦って、勝ったら上げるよ」
「マナ!」
私はそう言った。
「もちろんこの剣は使わないよ。だからちなっち預かってて」
「あっ、それはいいけど。いいや何言ってんの!」
ちなっちは慌てた様子で私に怒鳴った。
「面白ぇ。その勝負受けてやるよ!」
「3人なら楽勝だぜ!」
「ヒャッハー!」
男達は盛り上がっている。
「で、こっちが勝ったら二度と私や私の仲間に手を出さないこと。いいね。もちろん、他の人もだよ」
私は他の人に聞こえるようにわざと声を張った。
これ以上面倒ごとに巻き込まれるのは甚だごめんだ。
「いいぜ。受けて立ってやる」
「じゃあそう言うことで。今からでから?」
「やってやる!」
「チャンスは一回ね」
「俺達のレベルの方がお前より高ぇんだよ!」
確かに私の今のレベルは18。
この人達のレベルは20。
明らかに不利なのはわかる。目に見えてわかる周知の事実だ。
けどレベル差だけで戦いは決まりはしない。
それは私が一番身に染みて解っていた。
「ねぇちなっち、対戦モードってあるのかな?」
「一応な。設定は済ませといたから」
「じゃあそれでやろ。いい?」
「ああ構わねぇ。約束は守れよ。それと後悔すんなよな!」
「そっちもね」
私はにこやかにそう返事を返した。
「ホントにやるのマナ?」
「うん、やるよ」
「相手はマナより強そうだけど」
「大丈夫だって。私は負けないから」
私はそう答えた。
不安そうにしていたちなっちも何かを察したのか、歪な笑顔を向ける。
「なるほどね」
「うん、そう言うこと。一瞬で決め切るから」
「期待してていいんだよね?」
「うん。任せて!」
私はそう胸を張った。
「おい早くしろ!」
「ごめんごめん」
私は駆け寄った。
周りにはたくさんのギャラリーの姿。
噴水の前で、これから決闘?を行う私達を見物に来たのだろう。
「本気だな」
「うん。私も約束を守るから、そっちも私が勝ったら約束守ってよね」
「ああ。男に二言はねぇ」
「そう言う人は最初っから人の物奪おうとしないんだけどなー」
正論を小言で呟く。
そんなこんなで私は初めての対人戦を経験することになるのだった。
ちなみに武器は〈普通の剣〉を装備している。
「行くぞお前ら!一気に畳みかける!」
「「おう!」」
そう言って男達は私に襲いかかって来た。
剣やナイフ。それから棒の先端にトゲトゲの球体が付いた棍棒を振るう。
真っ直ぐ私に向かって来ていて、私はそれに合わせた。
「行くよ!」
すかさず私の姿はその場から掻き消えた。
ほんの一瞬の出来事。
瞬く間に男達は地に伏せた。
地面に倒れ、戦闘終了の合図が鳴る。
そんな一瞬の出来事に周りのギャラリーもポカーンとした様子で倒された男達ですら訳がわからなかったようだ。
しかし恐怖を覚えたように震えている。
「な、なにが起きやがった」
「俺達……やられたのか?」
「か?」
プルプルと体を抱き寄せ震えている。
今の一瞬で何が起きたのか理解できていないようだった。
「ナイスマナ!」
「うん!」
私は駆け寄るちなっちに手を振った。
しかし男達は我に返ると私に向き直り睨みつけた。
「い、今のはインチキだ!チートだ!」
「チートって、アンタら何言ってんの?男に二言はないんでしょ?」
「うるせぇ!」
「あっ、街中で意味なく襲ったら犯罪だよ?」
「くっ!」
男は静止する。
確かに皆んなガヤガヤと話し始めた。
だから私は簡単に話しておく。
「今のはこのブーツのおかげなんだ」
「ブーツだと?」
「うん。このブーツね、〈雷光の長靴〉って言うアイテムで、雷の速度で一瞬だけ移動できるんだ」
「雷、だと?」
「そう雷。だから皆んな見えなかったと思うけど、光って見えないでしょ?たった一瞬だけど、それをできるようにするからこの剣でもスピードに身を任せて斬ればこんな風に一瞬で倒せるんだよ。一度に倒せるのはそんなに多くないけどね」
私はそう伝えた。
確かにチートアイテムに近い。けど、チートじゃない。運営も認めた使い方だと信じたかった。
「ふざけんな!そんなのが認められ」
「でも斬られたでしょ?」
「それは……はっ!?」
「「あわわわわ……」」
男達は急に震え出した。
私が何をしたのか。もう皆んなお分かりだろう。
普段絶対に私はしないけど、これ以上面倒なことに巻き込まれるのも困るのでちょっとだけわからせてしまった。
斬る瞬間。
ほんの一コマの恐怖を与えたのだ。
まるで止まったようにスローで斬った。
それが少なからずトラウマみたくなったのだろう。
でもそんなに記憶には焼き付いていない。それだけ確かだ。今のは言葉で惑わせただけ。頭に血が上っている相手を冷静にするためだった。
スノーならきっとドン引きするだろう。
「「「う、うわぁぁぁぁぁぁ!」」」
男達は逃げ出した。
私はそんな男達にこう伝えた。
「いいわかったー!もうこんなことしちゃ駄目だからねー」
私は大きな声でそう叫んだのだ。
それが聞こえたのか聞こえてないのかは定かではないけど、ちょっと懲らしめるには良かったのかもしれない。
「ちょっとやりすぎちゃったかなー」
「そんなことないって。マナの度胸やっぱ凄いわ」
「そんなことないよ」
「それにトラウマとかなんとか言って、実際そんなことしてないんでしょ?」
「うん。ちょっとわざと言ってみただけ。そうしたら向こうが勝手に勘違いしちゃったし」
「人間にできる芸当じゃないのになー。まあそのうち気づくだろ。さらに報復に来るとも思えないし」
「だよね。安心した」
私は軽く返答した。
そう。実際そんなことしていない。てか人間には出来ない。
確かに雷の速度で移動出来るけど、それもほんの一瞬でそんな持続はしないのだ。そんなこと出来るわけない。ただ単純に斬っただけが正解だった。
まあそれに気がつくのも時間の問題だろう。
さてと、かくして私達の今後は守られたのだった。




