着弾
「弾着……今ッ!」
上空で眩いほどの光が放出された。学園全体が揺れ、爆発の黒煙が校舎内に侵入する。脆い部分は粉々に砕け散り、破片が辺り一面に転がった。
「すごい威力です……ッ!」
「シエスカさん! あっちでも爆発が起きました!」
男子側の闘技場上空に同様の閃光が走った。第二波の衝撃波は時間にズレがあったが僅かなズレだったためかなり強く感じる。闘技場の上部構造物はほぼ崩壊し、大きな砂岩のブロックが敷地内または外部へと落下し砕けた。落石注意とはこの事を言うのだろう。
「空で何かがバラバラになって敷地内に落ちて行きます!」
観測員の子がそう叫んだ。だが、私には良く見えない。私に見えるのは爆発後の煙が漂う空で小さな物が僅かながらに散ってゆくさまだけだ。
「第三波、来るよ……ッ!」
「第……三波?」
次の瞬間、屋上付近の上空でまたしても閃光が走る。屋上から見える二つの明るい光。弾着点だ。爆発したのは別棟上空で屋上の小さな扉は瞬く間に物理で開放された。室内にも熱気と衝撃波が侵入している頃だろう。四階だけだと思うが。
「ミナミさん! これじゃあ洒落になりません! トマホークの発射ポイントは何処ですか!?」
「今やってるって……」
「どうしましたか……?」
「来るよ……第四波」
ミナミさんが見つめる画面には確かに高速で飛翔する何かが三つ、映し出されていた。その速度は実にマッハ2.5。地上の迎撃システムでは無理がある。同時に忘れかけていた『グレイ・アイ』からの緊急通信が入った。
『こちら「グレイ・アイ」。第五波の発射を確認。弾数は合計五発。目標は真っ直ぐ王都に向かっている』
ミナミさんの探知範囲外からまたしても対地ミサイルが発射された。数は5発。しかも進路先には王室がある。これは「あたご」からの発射ではない。
「『グレイ・アイ」』、発射ポイントの特定は!?」
『今やってます。少々お待ち下さい』
無線越しにキーボードを強く叩く音が聞こえる。同乗する特定班も必死だ。
「弾着……今ッ!」
『こちら「グレイ・アイ」! さっきの爆発でレーダーが言う事を聞かない! レーダー損傷! 繰り返す、レーダー損傷!』
電子妨害か。灰色の眼、『グレイ・アイ』のレーダーが機能しなくなった。これにより発射ポイントの特定が格段に難しくなった。
「ミナミさん! 第四波は一体何処から……!」
「今やってるよ……それよりもう直ぐ王都に第五波が迫るけど良いの?」
「……あっ」
同時刻、王都上空で五発の対地ミサイルが上空で炸裂した。王都に暮らす人々は思わず外へ駆け出し生身で弾着の衝撃波を受けた。子供は吹き飛ばされ、頑丈な柱に身を寄せる。だが、脆い柱は別だ。脆い柱は瞬く間に粉々となりつかまっていた人は竜巻に巻き上げられたかのように上空へと舞った。
王都の城はとても頑丈だ。この世界に耐震対策があるとも思えないが被害が出たとしたら景色を眺める窓ガラスだ。全てが大きな音と立てて割れ破片による怪我人も出た。
「誰か王都と通信できる人は……」
「……」
屋上は静まり返った。誰もテレパシーのような能力を持っていないのだろう。もし持っているとするならばそれは所謂ご都合主義。現実は非常である。
「第六波……来るぞ!」
「今度は何処ですか!?」
「……まだ予測は出来ない。でも、数は全部で三発! でも挙動が少しおかしいような……」
私は直ぐにロングちゃんの下へ駆け寄った……が、さきほどの閃光を浴びてか小さく丸まっていた。耳を手で閉じて震えている。完全に戦意損失だ。
「よっ! 大丈夫か? さっきは凄い光だったなー」
「へ!? マリさん!? さっきグラウンドに居たはずじゃあ……」
「あぁ、やる事なかったから此処まで駆け上ってきたよ。良い運動になったなー」
まさか垂直に立つ校舎の壁を走ってきたとでも言うのだろうか。いや、彼女なら良い兼ねまい。それよりだ。
「あの……グラウンドで待機させていたアパッチは……」
「ん? アパッチだぁ? それならまだ……あぁぁぁぁ!?」
横に並んでいたアパッチは、皆悉く横転し中には炎上している機体もあった。まだ小さな爆発をしている。巡航ミサイルトマホークは敵味方関係なく外に露出している全てをなぎ払っていた。そして今、第六波が不審な動きで静かに迫っている。
「悪いわ、シエスカ。あれはさすがに治せそうにねぇ」
「うん、知ってる」
中にはまだ飛べそうな機体もあった。が、今となっては使う機会がない。それより私はマリに一つの質問をする。
「ねぇマリ。今結構ピンチなんだけど助けてくれない?」
「いいぜ、乗ってやるよ」
私はマリにミサイルの迎撃が出来るかどうかを訊いてみた。
「なぁ? そもそもマッハってなんだよ」
私は説明した。
「ふーん、で、どうやって落とせば良いわけ?」
作戦も任せた。
「……分かった。やってみるよ」
「本当に出来るの?」
「大丈夫、大丈夫。まだまだ体力はたんまりと残っているぜ!」
数秒後、通信が途切れがちになっていた『グレイ・アイ』から速報が入った。
『目標到達時間まで残り8分!』




