捕捉
「じゃあいっちょ行ってきますか!」
そう言うと彼女は再び屋上を掛けて飛び降りた。相変わらずの運動神経だが、一瞬彼女の身体が青白く光ったような気がする。
「あれだな! 行くぜーー!」
遠くから見たら彼女は間違いなく飛んでいる。
「さすが向上魔法ですね、もう見えなくなりました」
遠目で見つめるシャールに私は疑問をぶつけてみた。
「ねぇシャール。向上魔法って……」
すると不思議そうにシャールは首を傾げて答えた。
「そのまんまの意味ですよ? 強化系魔法の親戚のような魔法です。身体力や気力などを出来るだけ引き出す魔法でして強化魔法さえ持っていれば誰でも使用できる上位互換のような魔法です」
本当にこの世界の魔法は種類が多い。段々とシャールの説明についていけなくなった丁度その頃、マリさんはミサイルの手前まで到達していた。
「おーい、シエスカー? この細長い奴をぶん殴れば良いのか?」
ぶん殴る?
「えっ? 殴るの!?」
「勿論、殴ってみれば何かが分かるさ!」
「何が!?」
「そんじゃ、行くぜーーー! とりゃゃゃゃー!」
カンっと言う金属音が響いた後、トマホークは上空で炸裂した。激しい閃光が学園の一歩手前で輝いている。そしてもう一発も炸裂し大きな光が二つ形成された。
「どうだ!」
「えーと……」
愕然とした私は返答に困った。何と返せば良いのか。まさか音速を飛ぶ鉄の塊が拳で破壊されるなんて誰が想像しただろうか。
「す、凄いね……」
「もっと褒めても良いんだぞー?」
無線越しではあるが彼女は何かしらの達成感で溢れているようだった。だが、浮かれている暇はない。トマホークは軌道を変えながらもう一発迫っているのだ。
『こちら「グレイ・アイ」。最後の一発を見つけた。学園の北側から迫っている』
「了解、見失いようにしっかりとマークしていて頂戴」
『了解』
北側と言えばそこには険しい山岳地帯が広がり普通の人間ではとても頂上までたどり着けないような山々が連なっている。そこをトマホークは細心の注意を払いつつこっちへ向かっているのだ。
「マリさん、聞こえますか? 最後の一発は北側から向かっているみたいですよ」
「分かった。今から向かうわ!」
一瞬屋上へ戻って来たかと思えばそれだけ言い残しまた助走をつけて飛んで行った。瞬きをする間もなかったと思う。
「行っちゃった……」
そしてまたその場に立ち尽くしたのであった。
同時刻、観測機『グレイ・アイ』
『こちら「グレイ・アイ」。目標を見つけた。敵方の海岸線北北西の位置だ』
「……何を見つけたのよ……」
『敵の潜水艦だ』
ダメだ、ダメだ、ダメだ! と返すべきなのだろうが、状況が状況だ。今はグレイ・アイの情報を信じ私は現場海域に対潜ヘリコプターを投入する事にした。サメ退治の時間だ。
『こちら「ヒヨドリ1番機」、目標の位置を知らせ』
『こちら「グレイ・アイ」、目標はA地点からC地点の間。予測海域のデーターを送る』
『了解、早めに頼む』
この対潜ヘリコプターは第2護衛隊群所属のヘリコプター搭載護衛艦「いせ」の搭載機だ。「いせ」は速やかに艦隊を編成しなおし同現場海域に急行した。「いせ」を守る各護衛艦がそれぞれ輪形陣を取り敵潜水艦からの雷撃に備えている。
『コンタクトッ! 目標、第七波を発射した! 到達まで残り10分弱ッ!』
同時刻、マリが北側のトマホークを片付け屋上へ丁度返って来た。帰ってきて早々、私は再びマリさんに迎撃のお願いを取り付ける。
「いいぜ、何度でもやってやるよ!」
彼女はやる気充分。私はトマホークの情報を聞き出した。
『目標、計6発。海岸より迫りつつあり!』
『こちら「ヒヨドリ1番機」、目標をソナーで捕らえた! これより対潜爆雷を投下する!』
『こちら護衛艦「たかなみ」、これより本艦は敵潜に対し攻撃を行う。アスロック、攻撃始めッ!』
同時刻に三つの通信が同時に入る。私は聖徳太子じゃあないんだぞっと思いながらそれぞれに「了解」と返答した。
「たかなみ」からアスロックが、「いせ」搭載の対潜ヘリコプターから対潜爆雷が。そして音速で確実に迫る6発のトマホークが同時刻で進行している。
『……ん? ちょっと待ってくれ……この音は何だ?』
「グレイ・アイ」は何かを捕らえた。
『これは……探信音ッ!?』




