虎と龍、獅子と竜
1562年
尾張の大名、織田信長が駿河、遠江、三河を治める海道一の弓取り
今川義元を破る桶狭間の戦いから2年が経った。
各地で勢力争いが激化し史実よりも早く各勢力が台頭してきていた。
尾張、美濃(現在の愛知県西部と岐阜県南部)に加え
遠江、駿河(現在の静岡県)を手中に納め
三河(現在の愛知県東部)の大名、徳川家康と
近江(現在の滋賀県)の大名、浅井長政を傘下に加えた織田信長
甲斐(現在の山梨県)、信濃(現在の長野県)、飛騨(現在の岐阜県北部)
上野(現在の群馬県)を治めている武田信玄
その武田信玄と同盟を結ぶ越後(現在の新潟県)、越中(現在の富山県)、
そして能登、加賀(現在の石川県)を治める上杉謙信
陸奥(現在の青森県、岩手県、宮城県、福島県)と
出羽(現在の秋田県、山形県)を平定し、
2年前に北条氏康との戦の勝利し関東の下野(現在の栃木県)へ
勢力を延ばしている伊達政宗
一方政宗に敗れたものの未だ大勢力を維持し
武蔵(現在の東京都、埼玉県)、上総・下総(現在の千葉県)、
相模(現在の神奈川県)を擁し常陸(現在の茨城県)の大名、佐竹氏を
傘下に加えている北条氏康
この5つの勢力が入り乱れこれから激しい戦いを繰り広げようとしていた。
場所は岐阜城
本拠地を美濃国の岐阜城(旧稲葉山城)に移していた信長は
主だった家臣と傘下である家康と長政を招集し、
次なる作戦を伝えていた。
「今や畿内の地は三好により盤石になりつつあり
攻め落とすには少々時を要する
その間に武田、上杉、北条、伊達に背を突かれかねん」
信長は京への上洛を狙いつつも背後の勢力が気にかかっていた。
「あの武田上杉が同盟を結んだ今決して無視できない存在になりましたな
あやつらは協力して上洛を目論んでおるそう
まずぶつかるのは我ら織田になりますゆえ、各個撃破を狙うのはいかがでしょう」
織田家随一の猛将、柴田勝家が進言する
「しかし奥州の伊達政宗も無視できません
生まれる時代が違えば天下を狙えると言われた逸材
苦肉にも同じ時代に生きている今北条を打ち破るのは時間の問題
北条を呑み込めば手が出せないほど強大な力を手にするはずです
その前に我ら織田が北条を臣下に加え伊達を抑えるべきです」
勝家に反して木下藤吉郎が割って入ってきた。
「貴様、猿!
まずはあの甲斐の虎と越後の龍をどうにかするのが先決であろう!」
「勝家殿!お言葉ですが信玄も謙信も病にかかり持って数年の命、
世代が変わり弱体化するのを待てば簡単に潰せます!」
「もうよい黙れ」
勝家と藤吉郎の言い合いを諫めるように信長が割って入った。
「家康、貴様はどう考える」
ふいに問いかけられた家康はまさか末席である自分に話が振られるとは
思っていなかったのかあわてふためいた。
全員の視線が家康に集まる。
「え、あ、俺ですか・・・
えー、柴田殿、木下殿が仰ることはごもっともだと思います
だけどどちらも間違いだと思います」
「何だと?」
家康の言葉に苛ついた勝家が凄まじい殺気を家康に向ける。
「武田上杉、伊達北条どちらかに集中すればどちらかが必ず勢力を拡大し
こちらに手を出してきます」
「ではどうするのです
そう言うには何か策があるのでしょう」
知将、丹羽長秀が更に問いただす。
「各個撃破は愚策
では両方同時に対処するしかないと思います」
家康の答えに張り詰めていた家臣たちは笑いに変わった。
「両方同時だと?ばかばかしいな」
「各個撃破でも戦力は五分五分であろうに
それを更に半分にしては戦にもならずこちらが負けるぞ」
勝家、長秀を始めほぼ全員が笑う中
信長と一矢だけは真顔でいた。
「家康よ
儂も同じことを考えていた」
「戦力の増強は課題ですが、織田が生き残る道はそれしかありません」
信長と一矢がそう言うと場の笑いは一瞬で収まった。
「織田、浅井、徳川を二つに分け武田上杉、伊達北条を喰らう
上洛の前に後顧の憂いを断ち、まずは東日本統一じゃ!
よいな」
信長の言葉にその場にいた全員が頭を垂れた。




