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Prologue

「オエッ……ゲホッ、うぅ……ぇっ!」


見目麗しい美少女が、俺の目の前で四つん這いになり、盛大にえづいている。


整った顔立ち。

透き通るような白い肌。

光を乱反射する滑らかな髪。

一切無駄のないプロポーション。


その姿だけを見れば、誰もが絶世の美女と呼ぶだろう。

そんな女の子が今は、涙目になって地面に突っ伏し、ひたすらにえづいている。


ただし、ここは仮想現実だ。

涙は出るようだが、さすがに「嘔吐」まではシステムに実装されていないらしい。


「……やっぱりこうなるよな。」


物理的に吐き出してスッキリすることができなければ、ただ「吐くほどの不快感」だけが延々と残る。

そのせいで、現実世界より長く、この苦しみが続いているのかもしれない。


「ゴメン。ちょっと配慮が足りなかった。」


俺は女の子の華奢な背中をさすりながら、少しだけ反省する。


まさか、ここまで劇的な効果が出るとは思わなかった。

興味本位で試してみたが……これは、もう使わないほうがいいかもしれない。


「大丈夫?……いや、大丈夫じゃないよなぁ。」


声をかけると、荒い息を吐いていた女の子の肩が、ピクリと揺れた。

そして、ゆっくりと顔を上げる。


「いえ……だいぶ、落ち着きました。」


まだ息は荒い。

それでも、女の子の目には急速に力が戻っていく。


いや。

ただ力が戻っただけじゃない。

何かに取り憑かれたような、ギラギラとした光が、その瞳に宿っていく。


「……もう一度……。」


「ん?」


女の子は、すがりつくように俺の袖を掴んだ。


「さっきの……。」


そして、熱っぽい吐息とともに、懇願してきた。


「あのスキルを、もう一度私にかけてください!」


……もしかして、とんでもないプレイヤーに関わってしまったんだろうか。

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