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灯台のひと夏  作者: 塔上月扉
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8/14

8 花

 灯台の海側は潮風に晒されているせいか植物は少ないが、陸側には背の低い植物が生えている。といっても地面に貼り付くようにして生えている植物ばかりだが。

 そのうちのいくつかは、わたしが子供の頃、灯台に遊びに来た時に種を蒔いて育てようとした植物たちの子孫だ。

 黄色の小さな花が、ぽつん、ぽつん、と点在している。

 いろんな花をいっぱい咲かせてあげる!

 祖父にそう言ったっけ。

 楽しみだな、と祖父はにこやかに答えてくれた。灯台の端に雨水を貯める貯水槽を作り、二人で花に水をやったものだ。その貯水槽がまだ残っていて、人は飲めないが掃除や植物への水やりには十分使える。

 大きな石とコンクリで作られた貯水槽。一人で作るには力がいる。今から思うと、当時の祖父は自分が考えていたほど年老いてはいなかったと思う。

 朝顔と向日葵は消えてしまったらしい。その他にも子供だったわたしは時期も考えずに、自分が好きな花の種を持ってきて蒔いていたから、芽を出さずに終えたものも多かったはずだ。コスモスやラナンキュラス、百合など。

 潮風に強いものだけが生き残ったのだろう。

 あるいは運が良い種は鳥の餌になり、どこかへ運ばれていって、その地で花を咲かせたかもしれない。

 この無人島に残されたのは、雑草と黄色の小さな花だけだと思っていたが、じっくりと見てみると、虫が近寄らなくなる草も残っている。虫が匂いを嫌うハーブ類も意外に丈夫なようだ。主に灯台の側に生えている。

 それで虫がほとんど灯台の中へ入り込んでいなかったのかもしれない。

 ひそかに灯台を守ってくれていた植物たちに、小さな感謝として雨水をかけた。

 命ある限り、美しい姿を見せてくれるようにと祈りながら。


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