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灯台のひと夏  作者: 塔上月扉
2/14

2 休暇

 とくにやることもない日々。

 窓辺に移動させた木の椅子に座る。祖父が残していった古びた椅子だ。少しばかりギシギシ音を立てているが、まだ壊れはしないはず。

 小さな窓から海を眺め、飽きたら持ってきた本に目を落とす。けれど目は文字を追うだけで、意味を読み取ろうとはしない。

 再び目を海へ向け、遠くを横切る船が見えなくなるまで眺めていると、いつのまにかうたた寝してしまっている。

 これでは一日中ほとんど寝て過ごしてしまうと、灯台の外へ出ても特にやることはない。小島を支える岩に打ち寄せる貝殻や小石を拾って時間を潰す。それでも時間はたっぷりと余っている。

 気分転換に、灯台に来る時に使った白い帆を張った濃紺のヨットで、島の周りを回ってみたり、海に浮かべたヨットの上で波に揺られてすごしたり。

 風と波がゆりかごのようにヨットを揺らしてくれるから、ここでもついついまどろんでしまう。

 お腹が空いてきたら、缶詰を開けて食べる。その他に固いチーズ。干した肉。カリカリになった固いパン。塩味のクラッカー。果物の缶詰とハチミツが唯一の甘いおやつだ。

 食べたくなったら、食べたい物を食べたい量だけ口にする。

 クラッカーにチーズひとかけらの時もあれば、果物の缶詰一切れだけの時もある。固いパンにハチミツを塗って終わらせたり。缶詰のスープを温めるだけだったり。

 まさに休日の昼食といった感じの食べ方だ。

 食糧は、金属製の大きな四角い缶に毎回しまっている。狭い無人島に鼠がいるとは思えないが、鳥にでも食べられたら、買い出しに行かないとならなくなる。それは面倒だから。

 時折、魚も釣ってみたりもするけれど、それほど真剣じゃない。気が向いたらだ。

 休暇なのだから、どう過ごしたって良い。

 気が向いたことだけをするだけ。

 もう少しだけ規則正しい生活をした方が良いのかも、と、あまりに自堕落な生活をためらう気持ちも出てくる。寝る時間と起きる時間、食べる時間だけは決めた方が健康に良いとわかっているのだけれど。

 どうしよう……。

 うん、だけどせっかくの休暇なのだから、嫌になるまでは気ままに過ごしてみようと思う。


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