1 灯台・無人島
灯台
祖父が残してくれた今は無人の灯台。
灯台としては使われておらず、祖父が別荘代わりに一人で暮らしていた。子供の頃、幾度か遊びに行ったことがある。内部は、わずかな家具が置かれただけの簡素な作りだ。
祖父が亡くなった後は行かなくなっていた。
ある年、すべてから逃げ出したくなったわたしは、その灯台でひと夏を過ごした。
◇ ◇ ◇
無人島
岸から少しだけ離れた海に浮かぶ小さな無人島。そこに小さな白い灯台は立っている。一番近くの小さな村までは車で一時間以上かかる。買い物をするなら、さらに車を走らせる必要がある。
その上、海岸から離れた小島の上に灯台は立っている。船がないとたどりつけない。
そんな不便な場所だから、田舎にありがちな「ご近所さん」が毎日暇つぶしに訪ねてくることもなかった。
本数冊と数枚の着替え、タオルや日用品を入れた小さな鞄に寝袋、日持ちのする食べ物や水を詰め込んだ箱をヨットに載せ、わたしは灯台へ向かった。
灯台の中は少々埃っぽかったが、扉も窓もすべて開け空気を入れ換えると、何とか暮らせそうなことに安心する。人や動物が侵入した形跡もない。
木製の机も椅子もベッドも何とか使えそうだ。もし住めなさそうならヨットで寝るつもりでいたが、何とか住めそうだと判断した。
室内に残されていた箒で家具の埃を払い、ベッドの上に寝袋を広げる。机の上に鞄と荷物を置き、灯台を出た。
小さな無人島をゆっくりと一周する。少し西の空が赤くなりかけていた。だがまだ十分に明るい。ゴツゴツとした黒っぽい岩だらけの足下に気をつけつつ歩いてゆく。
小さな島には誰もいなかった。動物もいない。岸壁に釣り人なども見当たらないことを確認すると、灯台に戻り、扉に鍵をかけて早々に横になった。
すべては明日にしよう。
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