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灯台のひと夏  作者: 塔上月扉
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12/14

12 夕立

 雨が降っているのに音で気づいた。

 物憂い気分のまま立ち上がり数歩窓に近づくと、すぐに窓から雨の匂いが入ってくるのを感じた。

 島へ傘は持ってきていない。

 読んでいた本を机の上に伏せ、窓を閉める。錆の出ている蝶番が少し固い。油はあっただろうか。次に来る時は新しいのと取り替えた方が良さそうだ。

 雨の降る灯台の外へ出た。

 全身で降り注ぐ雨を受け止める。少しばかり痛い。だが体の熱を冷ましてゆく。気持ちの良い雨だ。

 空を見渡す。すでに右側の空は明るい。

 夕立か。

 ならばじきに雨は止むだろう。そろそろ夏も終わる合図。


 鳥の姿もあまり見かけなくなったな。


 そういえば……鳥たちはどこで死んでいるのだろう。

 たくさん見かけた鳥たち。

 夏が終われば、どこかへ飛んでいってしまう。

 けれど一年中、見かける鳥もいる。鳥たちだって死んでいるはずなのに、その亡骸を見かけることはない。土を掘って埋める者もいないのに。

 どこかで人知れず土に帰っているのだろうか。

 猫や狐や野犬などが食べてしまっているのだろうか。あるいは蟻や虫たちが解体しているのだろうか。

 もし……わたしがこの灯台で人知れず死を迎えてしまったら……腐敗してちゃんと土に土に還れるだろうか。

 それも……悪くない気がしてきた。

 そう、たとえば船が流されてしまったとしたら……。

 一応、島から岸までは泳げない距離ではないけれど、岸から村までは何時間も歩かなければならない。

 わたしは、そこまでして生き延びたいだろうか?

 もうどうでもいいと、横たわっているだろうか。でも飢えたり苦しむのは嫌だ。

 願わくば、海を眺めながら、いつのまにかうたた寝しているうちに死ぬことができたら、どんなにか良いだろう。

 けれどまだその時ではなく、目は覚めてしまうのだ。

 そして胸の奥の淀みは死んでも消滅しても消え去ってもいない……。



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