12 夕立
雨が降っているのに音で気づいた。
物憂い気分のまま立ち上がり数歩窓に近づくと、すぐに窓から雨の匂いが入ってくるのを感じた。
島へ傘は持ってきていない。
読んでいた本を机の上に伏せ、窓を閉める。錆の出ている蝶番が少し固い。油はあっただろうか。次に来る時は新しいのと取り替えた方が良さそうだ。
雨の降る灯台の外へ出た。
全身で降り注ぐ雨を受け止める。少しばかり痛い。だが体の熱を冷ましてゆく。気持ちの良い雨だ。
空を見渡す。すでに右側の空は明るい。
夕立か。
ならばじきに雨は止むだろう。そろそろ夏も終わる合図。
鳥の姿もあまり見かけなくなったな。
そういえば……鳥たちはどこで死んでいるのだろう。
たくさん見かけた鳥たち。
夏が終われば、どこかへ飛んでいってしまう。
けれど一年中、見かける鳥もいる。鳥たちだって死んでいるはずなのに、その亡骸を見かけることはない。土を掘って埋める者もいないのに。
どこかで人知れず土に帰っているのだろうか。
猫や狐や野犬などが食べてしまっているのだろうか。あるいは蟻や虫たちが解体しているのだろうか。
もし……わたしがこの灯台で人知れず死を迎えてしまったら……腐敗してちゃんと土に土に還れるだろうか。
それも……悪くない気がしてきた。
そう、たとえば船が流されてしまったとしたら……。
一応、島から岸までは泳げない距離ではないけれど、岸から村までは何時間も歩かなければならない。
わたしは、そこまでして生き延びたいだろうか?
もうどうでもいいと、横たわっているだろうか。でも飢えたり苦しむのは嫌だ。
願わくば、海を眺めながら、いつのまにかうたた寝しているうちに死ぬことができたら、どんなにか良いだろう。
けれどまだその時ではなく、目は覚めてしまうのだ。
そして胸の奥の淀みは死んでも消滅しても消え去ってもいない……。




