表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

13 エピローグ:封印の石 誠一郎視点

 封印の石*誠一郎視点





 今日もまた珊瑚(さんご)がここに来て私の事を睨んでいる。


 封印の儀式の最後の(つがい)を選ぶ際になって、玲司が私を選んだ瞬間のあの子の唖然とした顔は見ものだった。あの子は物心ついた時からずっと私を無能な父として馬鹿にしていたのだから。いや……生まれた瞬間からかもしれない。

 この地を何百年も治める最高の能力者として、人々に神として崇められる為に選ばれたのは珊瑚だったのに、その役目を私が珊瑚から横取りしたのだ。


 玲司は自分が居た世界とはまるで違う異なる場所に呼び寄せられてとても不安がっていた。何かする事があれば気もまぎれるだろうに、封印するための生贄に何かあったら困るので家から出さないように軟禁していた。

 私は玲司が嫌になって逃げ出したりしないように気を使っていたけれど、元々病弱で寝たきりで居た生活に慣れていて、ここに閉じ込められている事に不満や家から出せなどと文句を言ったりはしなかった。


 全ては封印の儀式の為の行動であったけれど、今から思えば一目惚れだったのかもしれない……抜けるような白い肌、赤い唇、そして赤みがかった瞳……人間離れした美しさなのだ。



 いや……人では無かった……これは『魔物』だ。



 もうずっといつからかはわからないけれど、この土地を人を襲う魔物を儀式で呼び出し、捕まえて他の魔物の見せしめに吊るして大きな石に封印して脅しに使っていたのだ……『近くに寄れば同じ目にあわせるぞ』と。実際はそれ程効果は無かったのだけれど、やらないよりましだと長年続けられて居た。


 しかし……ある日、儀式の時に現れたのは人に似た姿をした『オニ』と呼ばれるもので、小さな二本の角と赤い瞳が特徴の人では無いものだった。儀式を行なったからには、人の姿に似ていようとそのまま殺して吊るそうとしたのだけれど、出現した魔物をよくわからない能力を使って倒したのを見て他の使い道を見出したのだ。そして力が弱くなり使い道がなくなった所で封印して見せしめ用に使おうとしたのだけれど、『オニ』を封印すると結界が強くなり、魔物が現れなくなると気がついてからは結界の為に呼び寄せて長持ちさせる為に殺さずに生かしたままここに封印して居るのだ。


 最初は生かしたまま封印するのが難しかったのだが、人柱を立てることによって上手く、長く利用できるようになったので人柱は神と讃え崇められるようになっている。

 そうやって何百年もやっていた事なのだけど、近年呼び出されてくる魔物達は『オニ』としての特徴も徐々に薄れて、玲司もツノは小さなコブ程度の大きさで、瞳も良く見ると赤みががっていると分かるくらいの特徴だった。力も弱くて珊瑚の封印の儀式の為の力が溜まるのに二年もかかってしまった事で、私が長く玲司と関わってしまったのは計算外だった。玲司は最初から力が弱くて珊瑚に力を譲渡する以外に使い道がなく早々と封印することになっていたのに。


 召喚して呼び出して来た時も特には気にかけて居なかったのだけれど、私を信じておとなしく修行を受けていたり、志岐に一生懸命に話しかけてたりするのを可愛いと思ってしまったのだ。


 封印の儀式に珊瑚が選ばれて、玲司が封印される為ここに呼ばれたのは当たり前の事として受け止めていたのだけれど、実際に儀式が行われる日取りが決まると嘘をついて最後の(つがい)の相手として、玲司に嘘の儀式の情報を告げて私の名前を呼ばせてしまった。


 珊瑚がじっと玲司を見ている。私を睨みながら。


 どうやっても手を出せない相手を思っている娘を思うと少しだけ可哀想だなとも思う。この先もずっと神と崇められている私には手を出せない。珊瑚はこの先、私が以前受けていたのと同じ立場になり、次の当主としての仕事は後継者になる子供を作る事くらいしか出来ないのだ。


 あの時……封印される直前に玲司が言った事は本当なのだろうか。騙され、嘘を付かれて今ここに、私と一緒に封印されてしまっている事に絶望や悲しみがないと良いなと思う。すぐ側で向き合うような体制にはなっているけれど、体のどこも触れていないので玲司の考えも私の気持ちもお互いに伝え合えないのが少しもどかしい。こんなに近くにいるというのに。


 こうやって一緒にいる事が出来たのだけど、力のある珊瑚と違って私は少し年数が経てば力を消耗して朽ち果て体は残らず消えてしまう。以前に封印されていたオニ石も朽ちてヒビが入り消えてしまいそうになっていた。

 私もすでに意識もあやふやになって来てしまった。このままずっと玲司と一緒にはいられないのが口惜しい。


 それでも……わずかな時をこうして、この場所に玲司と一緒に居られることに喜びを感じて自然に口元が微笑んでしまうのはしょうがない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ