ファントムの正体 (カードと悪意と穢れた血)
お久しぶりです。改稿中ですが、我慢出来ずに投稿しちゃいました。
同じなのだ。造形、色。
前に、倒した狼のテイマーと全く同じ姿のファトムが、2人の目の前にいた。
だが2人は違和感も感じていた。形だけが同じ印象を受けていた。その中身は全く異質な物だと感じている。なぜなら、奴はこちらを見て微笑しているからだ。
サキは目の前の状況を理解出来ないでいた。
それに対しミコトは、全てを察していた。
サキはふとミコトの顔を横目で見た。
何故見たか? と言われると理由などなく、何となくだ。いや……ひょっとするとファントムとしての動物的な本能がそうさせたのかもしれない。
いまのミコトの顔。
それは……サキが以前戦いのさ中に興奮して、頬が左右に避けた時のように似ていた。
口が両耳に届く程に避け、目は血走っしている。
もはや人の顔とは言い難いが、彼が激怒している事がサキにはわかった。
ミコトが怒りで声を震えさせながら口を開く。
「おい? お前……誰の血を使ってその姿になった? 」
狼のファントムが陽気な態度で答える。表情は相変わらず。
「あ〜、女だったな。 髪の長い女のファントムだっだ、えっと、何だっけな。ギアか。ギアの女だったぞ?」
サキは少し冷静さを取り戻し始めた。視野が広がり、周りが見え始める。
狼のファントムの周りの建物、何故気づかなかったかと思う程に、真紅の色がぶちまけられていた。
「テイマーのファントムってのはすごいな」
そう言うと手のひらに青白い光の玉を作って見せた。
「細菌だよなこれ? 相手に触れずに殺せるなんてつまんねぇだろうなー……って思ってたけどよ。
これ楽しくてしょうがないわ。ナイフよりよっぽど楽しいぜ。 ほら……こんなふうによ! 」
狼のファントムが手をこちらにかざして青色の光の玉を撃ってきた。
サキが構える。ーーが、それをいとも容易くミコトの巨大な尾がそれを弾いた。
一体いつ変身していたのか、だがそんな疑問はサキの視界に入る衝撃的な情報の前に消え失せた。
ミコトの容姿がいつも以上に猛々しくも禍々しい姿になっていた。
いつもは控えめに出てきた背中のトゲは見る相手を威嚇するかのように威圧的に飛び出し、尾も人間3人程度なら潰してしまいそうな程に巨大になっていた。
「随分と威勢のいいルーキーじゃねぇか?
あぁ? 話を聞くのは後だ。 まずは生意気な新入りを揉んでやらねぇとなぁ。
さてと……、
ファントムがどういうものか教えるよ。ゴラ…… 」
いつもの愛想のいいミコトはそこにはいない。いるのは非情に、敵を肉片と変える、人に戻る事など許されない存在ファントム。
それは怪人と呼び、幻影とも呼ぶ。
お喋りを終えたミコトの口は耳まで裂け、噛み合わせの悪そうなキバがむき出しになっていた。
ミコトの容姿の変貌ブリに、狼のファントムは驚き、サキは初めて、彼に対して恐怖を感じた。その恐怖は狼のファントムも同じく感じることになる。
変貌を遂げた、ミコトが狼のファントムに獣の如く飛びかかった。 驚きで遅れた狼のファントムは受け身すら取れずに、自分の4分の1程度の大きさの彼に押し倒されてしまった。
反撃を試みる……が、既に両腕はもぎ取られていた。彼の腕の力だけで。
反撃など、させてもらえなかった。
悲鳴など、聞いてもらえず。
逃亡など、許されない。
手足は辺りに、散らばる。手足がない上半身だけになった彼の首をミコトががっしりと噛み付いた。
ミコトのキバが肉に突き刺さり、喉には自分の血が滴っている。
冷たくなる自分を感じながら狼のファントムは、ファントムになんてなるんじゃ無かったと後悔し、「もう殺してくれ」と懇願した。
その言葉を最期に、ミコトは彼の頭を180度捻り回し、ファントムとしての彼の命を断った。
サキはただ、その場で立ちすくみ、ミコトを見ていた……だけだった。
※※※※
人の命を奪ったファントムに、人間に戻る道は無い。死と共に、亡骸は黒いヘドラになって朽ちていくだけ。運が良ければ骨は残るだろう。
彼の亡骸は黒いヘドラと……、1枚のカードだった。
ミコトはそれを拾い、丁寧に黒いヘドロを吹いた。
「まだ、カードをこんな使い方する奴がいたんだな。クズ野郎が……」
そう吐き捨て、ミコトは真後ろのビルの屋上を睨みつけた。
「てめぇの事だよ……ゴミクズ。
次はてめぇだ。
殺してやるからこっち来いや……」
(え!? )
サキがミコトの見る方向を振り返った。
「ありゃ? バレちゃったか〜 」
後方にいるのは、彼がファントムになり、好奇心で人を殺した原因を作った元凶だ。
彼女の名前は華。
「やっほーイケメン君! いや、そうでも無いや。
久々だねサキ。ファントムを楽しんでる? 」
こちらに飛び降り、笑顔で手を振りながら、彼女は陽気にそう答えた。
「誰ですか……あなた? 」
「るっせぇ……死ねや 」
サキがファントムの姿に代わり、ミコトは歯牙を彼女に向けた。
またしばらく出せないかも……。




