01出会い
無事にシェルド達がムーンキングダムの港に入港した翌日の朝早く、ひっそりと資材搬入港に入る偽装された輸送艦があった。
入港してドック内に酸素が充満すると偽装戦から降りるザーヴァの姿があった。
ザーヴァへと駆け寄る屈強な魔族の男は
「大尉!自らお越しにならなくとも。」
男が差し出した手を握りザーヴァは
「なに、部下を労いに来たとでもすれば良い。」
「ありがとうございます。してその本質は?」
「フッかなわんなアデル。」
「大尉とはスラムより兄貴と共に助けてもらって以来10年近くになりますからね。」
アデルが笑うとザーヴァも笑い、不意に真面目な顔となり
「連邦はそうでもないが、GAがかなり厄介だ。」
「と言いますと?」
「ここに来る前に仕掛けたんだが・・・仕掛ける前に気づかれた。」
アデルは目を見開き
「なんと!それほどとは・・・実はこちらも厄介なことに。」
「ん?何かな?」
「白の守護者がGA側の護衛に回るようでして・・・」
「そうか・・・彼がここに居るのか・・・それは不味いな。」
「と言いますと面識がおありで?」
「面識と言うか昨年のドラゴン退治に私も参加していたのだよ。魔力を覚えられていたら厄介だと思ってな。」
「それなら問題ないかと。白の守護者は魔力感知がそれほどと得意では無いようです。」
「確かな情報か?」
「例のネルビル博士が軍の資料にアクセスして確認しましたから、かなり信用できるかと。」
「そうか、で予定なんだが・・・」
「はい、こちらに。」
1枚の紙をザーヴァに手渡す
「ほう、紙とは徹底しているな・・・何々、昨日ロールアウト、本日システムを組み込む・・・テストが明日か・・・」
「本当に大尉がテスト操者を務めるので?」
「私では不服か?」
「いえ、大尉は心配していません。そちらの少女の方が・・・」
アデルが資材にもたれているシーダを見てそう口にする。
「アデル、あれはMBだ。」
アデルの耳元でザーヴァはそう呟いた。
「なるほど・・・しかし目立つのでは?」
「彼女をオトリとして扱い警備の目をごまかせってのが上の命令だ・・・」
「それを大尉は了承したので?」
ザーヴァは左右に首を振り
「MBは命令されればそれが絶対となる。そむけば死につながるからな・・・」
「仕方が無くですか・・・」
「ああ、だから今日1日は自由にさせろ。」
「よろしいので?」
「構わんさ、それが陽動になればそれで良いし、そうでなくても彼女はここに置いていく。」
「お得意の感ってやつですね。」
「そうだ。」
「分かりました。変な行動をしても怪しまれない様に士官学科の制服を用意させましょう。」
「頼む。」
・・・・・・・・・・・・・・・
ムーンキングダムのホテルの一室で1人起きたシェルドのもとに1つのメッセージが届いていた。
『シェル君!お母さんはお仕事ですクスン。1人で町を楽しんでね。そして3日後にお母さんを案内してね♡ 母より愛をこめて』
はぁとため息をつきシェルドは
「それではお言葉に甘えて町へと行きますか。」
するとす~とシリウスが現れ
「護衛はお任せを。」
「任せた。」
「承りました。」
とシリウスはお辞儀をしてまた現れた時と同じく消えていった。
・・・・・・・・・・・・・・・
町へと繰り出したシェルドが通学する士官候補生の制服を見ながら
「どこの生徒かな?」
「ありゃ~士官学校の制服だよ兄ちゃん!ほれハンバーガーセットお待ち!」
シェルドの目の前には大きな肉のパテが挟まりその上に輪切りにされたトマトが乗り野菜も程よく挟まった美味しそうなハンバーガーとホクホクに上げられたスティック状のポテト、そしてアイスコーヒーの入ったストロー付きのカップが乗ったトレイが差し出された。
「支払いカードでお願いします。」
「あいよ!」
差し出されたカードを店主は受け取り
「おっ天魔領のカードか!」
「使えませんか?」
「いや使えるよ!使えないのは帝国のカードだけさ!ほいまいどあり~」
そう言ってカードを返して、目の前に表示された領収パネルのOKボタンを押した。
シェルドは空いている公園のベンチに腰掛けハンバーガーをかぶりつくと、中から肉汁がじゅわっと染み出てそして野菜たちはシャキシャキとして程よい食感を醸し出し、味わいながら美味しくいただくのであった。
「さてと・・・食事は終わったけどまだお店とかには早いよね~」
腕の端末を操作して電子書籍をパネルに表示させると、目の前にパネルに地図を表示させ、その地図を見ながらシェルドへ向けて突っ込んでくる少女がいた。
「キャッ!」
目の前に座るシェルドに驚き、躱そうとして足がもつれてそのままシェルドの胸へとダイブしてしまった少女は湯気でも出そうな勢いで顔を赤らめその場で座り込んでしまった。
そんな少女に手を差し出したシェルドは
「大丈夫ですか?・・・」
すると少女はシェルドの手を取ると
【助けて・・・痛いの嫌!誰か私を助けて!・・・プロトワンじゃない!私はシーダ!シーダ・ベルゼよ!】
という意識がシェルドへと流れ込んできた。