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神話由来のお掃除系名家ではございますが、令和でも悪鬼滅殺して参ります! 〜最強こじらせ執事の『お嬢様尊い』的限界オタク化が止まらない~  作者: 御堂
第一章

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三筆目

 おや、またお会いしましたね。

 左様でございます。北白川でございます。

 紳士淑女(モブ)の皆さま方、ご機嫌いかがでしょうか。

 北白川は、前世の功徳を至高の領域まで積み上げましたことへの褒美を、今この瞬間も享受している次第でございます。左様でございます。【お嬢様の専属執事】である己を褒めそやし、他の追随を許さぬ勢いで生の歓びを謳歌してございます。

 はい?冒頭からキツい?有象無象(モブ)がよろしかったでしょうか?大変お似合いでこざいますよ。

 しかし皆さま方のご希望も察することができないとは。それは北白川の不徳の致すところ、誠に申し訳ございません。反省の意を込めて、ブラウザバックを推奨致します。ではごきげんよう。

 え?著者が泣いている?やめてあげて?

 まぁ……なんと申しましょうか……お嬢様が泣いているのでした、例え宇宙神が相手だろうと北白川は一切の手を抜くつもりはありませんが。著者はお嬢様ではありませんので、北白川としましては虚無一択でございます。

 ああ、今でございますか。お分かりのように、お嬢様は現在、静かに読書中でございます。

 北白川、お嬢様の網膜に映る活字になりたくて仕方がないのを、理性の鎖で己の魂を雁字搦めで縛り付けております。あの華奢な指で支えられ捲られる本とページに取って代わりたい!無機質の癖に羨ましくて仕方がない!!!!北白川も捲りあげられたい!!

 とまぁこんな風な状態でございますので、お傍で静かにガン見などさせていただき、己の幸福と幸運を噛み締めている最中でございます。

 もちろん表情筋などは微動だにせず、お仕えする歓びと感謝を込めたロイヤルスマイル。細めた目の幅は3.2mmを死守してございます。抜かりはありません。神に選ばれし男、北白川の360度どの角度をとっても、お嬢様を不快にさせない完璧な姿勢を、とくとご覧下さいませ。

 本日も北白川の幸福度は限界突破してございます。誠にお日柄もよろしくて何より。邪魔などしないで頂きたい。

「お嬢様、お茶のおかわりはいかがですか?」

「……あら、もうなくなってたのね」

 ふふ。夢中で読書に没頭されるなど可愛いらしいじゃありませんか。北白川の爆裂愛を込めたお茶を無意識で飲み干されて……ふぐっ……ぐ……ぅ、感無量でございますッ!!!!

 ん?なんです?お茶飲みたい?そこら辺の湿気でも舐めててくださいませ。音を立ててはなりませんよ。喉を潤したら、離れたところで体育座りでもなさってくださいませ。奴隷座り?体育座りをそう言うのですか?なるほど。皆さま方にうってつけの座り方ではありませんか。お励みくださいませ。

 ああ、呼吸も一分間に二回くらいに落として、お静かにご覧下さい。

「お嬢様、どうかなさいましたか?」

 そんなにチラチラと北白川を見るなんて!もっと堂々とご覧下さいませ!北白川、お嬢様のためならいつでも一肌脱いでご覧に入れますのに。

「ねぇ、聞いてもいい?さっきから怜に話しかけてるキラキラしたモノは何かしら」

 ひゃああああああああああーーーーーーーっ!!!!

 名前呼びだわぁぁぁああーーーーーー!!!

 $♡&”@/=¥&[¥*]!!!!

 ああいけません。北白川としたことが、お嬢様の問いにすぐ答えられずに昇天しかけるなど!

 言語道断!!!専属執事失格でございます。

「キラキラ……でございますか?なんでございしょうか」

 首傾げて悩んでるうううあ!なんてあざとく可愛らしい仕草かっ!!!テスト出ちゃう!出ていい!絶対合格するッ!

「んー、声は聞こえないけど、あなたに一生懸命話しかけて、近づいたり離れたりしてるのよね。……妖精なのかしら」

 妖精はお嬢様でございますうううう!

 沈魚落雁、閉月羞花とはお嬢様のことでございますから。

「あら、もしかして……北白川、覚醒したの?」

 な、な、な、な。覚醒?北白川が?覚醒などとうにしておりますが!

 え?なんですかモブの皆さま。はい?お嬢様と目が合う?さっきからずっと?

 はああああ!?モブの癖になぁに認知されてるんですか??プロモブ失格でございますよ?もっとモブとしての自覚をお持ちください。目立たぬことこそモブの仕事でしょう!?……ん?てことは。

「覚醒?……覚醒でございますか」

「この前の現場でも、あなた何かを使役してた風だったでしょう?……もしかして式神?」

 ああ!なんと尊い解釈なのでしょうか。塵芥のようなモブ風情をそんな天上の存在に昇格させるなど……!さすがは転生された女神でございます。

 あんなににこやかに微笑まれて……。北白川、ここでお嬢様を否定する訳には参りません。力いっぱい全肯定です。

「ええ。式神(モブ)ですね、ええ」

「まぁすごい。わたしも式神欲しいわ」

 な!式神欲しい?!うそ!そればかりは北白川、断固反対でございますよ!!!!そんなの絶対ダメ!断固!拒否致します!

「お嬢様には私がお供してございますので、いつでも式神としてお使いくださいませ。時空や次元など曲げてご覧に入れますよ」

 そう!それが北白川クオリティ!この世の境界線だって書き換える所存。次元を跨ぐ男、それ即ち北白川でございます。

「あなたが式神?面白いわねぇ」

 んふぅうううっ!北白川、道化も喜んで演じてご覧に入れますとも!

 しかし、お嬢様が悩ましげなお顔で思案されておいでです。何やら思うところがあるようでございますね。

「どうかされましたか?」

「覚醒で思ったのだけど、この神筆をそろそろレベルアップさせなければいけないわ」

 おや。これはただならぬ御発言。

「威力は変わらぬようにお見受けいたしましたが。何か不具合でもございましたか」

「不具合はないのだけど。……そう、あなたにはそう見えるのね」

 ポケットから取り出した神筆は、室町の昔に祓い屋として暗躍していた頃に使用していた、とある神宮の霊木を使用した(ホウキ)。その核を仕込んである神筆は、祓い道具として生まれ変わった一文字家の大切なお道具でございます。もちろん、専属の職人による一級品でございます。

 工芸品の分野では値段もつけられないような価値を持つ代物ではございますが、お嬢様はいつも神筆を無造作に扱われます。お嬢様曰く「筆はどれも同じよ」との事でございますので、それが答えでありますがね。

 そんな神筆を取り出して眺めるお嬢様の眼差し!

 あああ、北白川もそんな風に検分されたく存じます。上から下からクルクルと弄ばれたく!!!

「近頃のお仕事は、有象無象が多いじゃない?人の念が一気に集約しやすくて、重さが前と格段に違うような気がするの」

 なんと。お嬢様ったらいつもクールに悪鬼滅殺されておいでですのに、そんな手応えを感じておられたなんて。北白川、そこに意識が向かず恥ずかしい限り。反省致しましょう。

有象無象(モブ)でございますか?」

「もぶ?」

 あぁん!言い方!!!ちょーっとアヒル口になってるううう!!!!

「そうね、例えるなら……ガスレンジのしつこい油汚れかしら」

 は?何やら聞き捨てならぬお言葉が……??

「……お嬢様?なぜガスレンジの油汚れなどご存知なのですか?」

「前にキッチンに行った時に、トミエさんがお掃除しながら教えてくれたのよ」

 トミエさん(カリスマハウスキーパー勤続38年)!!!!なんで北白川にそのこと黙ってたの!!!?

「ねぇ北白川。祟り神が復活し始めているんじゃないかしら」

「!」

 祟り神。それは一文字家が代々、祓い封印して弱体化させてきたこの国の悪意(バグ)でございます。

 人身を惑わす悪鬼の大元締め。

 それを根絶させんがために、日々一文字家は、そしてお嬢様は戦っておられます。

「祟り神でございますか。それはご家族の皆さまにもご報告せねばなりませんね」

「そう、なんだけど」

 神筆を見つめるお嬢様は、まだ何か思案されておいでです。

「まだ確信を得たわけじゃないの。予想でしかないから、お父様たちのお仕事を増やすのも気が引けるわ」

 優しい!!!!なんと慈悲深い!!!!でも北白川なら、お嬢様のためなら残業でも喜んでやり遂げます。単独出張は断固拒否致しますけどおおお!!!

「だから、しばらくはそのつもりで現場に行きましょう?」

「承知しました。心してかかります」

「ふふ……二人だけの秘密ね」

 ピャアーーーーッッッ!!!!

【¥{*&/『¥$?.&}

「北白川?胸を押さえてどうしたの?」

 はぁ……、はぁ……、いけない……。不意打ち過ぎます。なんて破壊力なのでしょうか。意識が爆散昇天しかけました。言葉ひとつで北白川を消し炭にもできるお嬢様……さすがでございます……!

「お嬢様……準備がございますので、一度失礼させていただきますね」

 あぁあぁああ!!!!いけない!今日ばかりは本当に心臓が持ちません!!!よくあの場で爆散しなかったな!よく耐えた、北白川!過剰供給に窒息するかと思った!!!これ、もうプロポーズだよね?北白川、求婚されたも同然だよね?!

 二人だけの秘密……っなんて美味しい響き。

 どんな愛の言葉も掠れてしまいます。シェイクスピアの戯曲、紫式部の恋の和歌などカッスカスでございます。二人だけの秘密。ずっと脳内にリフレインしておりまするううう!

 んもうずっとそうしていたい!因縁の祟り神は、ずっとずーっとチラチラしてればよろしい!

 お嬢様と二人だけの秘密をずっとずーっと抱えて死にたいッッッ!!!!

 あ、有象無象(モブ)の皆さま方、こちらです。ついてきてください。ここに並んで。速やかに!

 まずは式神に昇格おめでとうございます。お嬢様が皆さま方をお認めになった以上、この北白川、意識を入れ替えまして、気持ちも新たに皆さま方と接しようと決意した次第でございます。

 さて皆さま方。北白川、ただいまご覧の通り大変に感情が昂ぶっておりますので、共に北白川特製トレーニングメニューを消化しに参りましょう!

 シックスパックも先ずは一歩からです。

 まずは指立て伏せから参りましょう。この自家発電エネルギーを有効活用するときでございます。

 今ここから!

 始め!!!!


 皆さま方……まだ終わらないのでございますか?

 北白川、いい加減に皆さま方のつむじを見ているのも飽きて参りました。

 式神(モブ)になったのですから、せめて現場でもお嬢様のお役に立てるようにならなければ。まぁあなた方を使い倒すのは北白川ですから、せいぜいお励みくださいませ。

 さて、スマホに通知が来ておりました。ICHアプリですね。早速、お仕事の依頼でございます。

 皆さま方のやったかどうか分からないような指立て伏せの成果を発揮する時が参りましたよ。

 北白川はお嬢様と共にRolls-Royce Phantomで向かいますから、流れる車窓の景色となって着いてきてくださいませ。

 場所を先にお知らせ致します。

 一文字クリーンホールディングスが全国170箇所に展開する、繊維クリーニングの最高峰『白玉クリーニング』木六本本店でございます。

 ドームツアーを終えた人気アイドルグループの、ステージ衣装に異変有り、とのこと……。

 お嬢様の懸念される祟り神の件もございますので、気を引き締めて取り掛かると致しましょう。

 では皆さま方、また後ほど。






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