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神話由来のお掃除系名家ではございますが、令和でも悪鬼滅殺して参ります! 〜最強こじらせ執事の『お嬢様尊い』的限界オタク化が止まらない~  作者: 御堂
第三章

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十筆目

 皆さま方、ごきげんよう。北白川でございます。

 日も跨いでの器集め、大変お疲れ様でございます。

 北白川でございますか?

 本日は遼くん等身大推しぬい作家様との熱き面談を終えて参りまして、現在はマリーンプッシュアップの最中でございます。

 お嬢様はどこ?……なぜお嬢様の所在を確認なさいます?

 ああ!御神器をどれにしたのか気になると!

 残念ながら、決めかねているところでございます。そして何故か市松人形様と猫のぬいぐるみのお二方が北白川の部屋に居着いておりまして、大変に鬱陶しく思ってございます。どうぞ持ち込まれた方は回収をお願い致します。

 お嬢様は旦那様と奥様を交えて、遅くまで祟り神のことについて話し合われておられました。そのおかげか今朝は少々寝坊などなさいましてそれはそれは花が開花する寸前の蕾のごとき眠たさを秘めたお顔が大変に可愛らしくございまして幼少期の頃のお嬢様の姿を垣間見た気がしまして北白川としましてはあの瞬間は非常に胸が高鳴りなんならノスタルジックな気持ちとエキセントリックな焦燥などを感じさせられましてなぜにお嬢様のご生誕からお傍に侍られなかったのかとその事を深く──いいえ、マリアナ海溝すら凌駕する程の深い後悔を禁じ得ない気持ちになりまして……なんです?

 後悔中ということか?左様でございます。北白川、己の生まれた時期を盛大に踏み誤った所存でございます。

 久しぶりの情緒のカロリー過多……ああ、そうでございますね。お嬢様が現在、静かにお部屋にお篭もりの時期……学期末試験期間中でございますので、北白川の心が些か暴走気味なのは自覚済みでございますのでご安心くださいませ。

 集めてきた器を拝見致しましょう。お嬢様は現在、お部屋で試験勉強中ですのでお静かにお願い申し上げますね。


 国内から飛び出して海外にまで手を伸ばした皆さま方のコレぞ!という逸品の数々。

 まずこちらは警棒でございますか。現代式の伸縮するタイプと……これは昔の警官が使用していたいわゆるポリスバトンでございますね。二種類ございますが……?なるほど。旧式の警棒はエルビス・プレスリーのポリスグッズコレクションであると。──国際問題になりますので速やかに返却してきてくださいませ。

 次は、フルート。こちらは……アンデスの笛、ケーナでございますか?この選択の基準は何か伺ってもよろしいでしょうか。──お嬢様に似合いそう。確かにそうではございますが、金管楽器は核を仕込むのは素人には難しくございます。そしてこちらのケーナに至っては仕込む最中に崩壊しかねません。

 よって却下でございます。

 こちらは指揮棒でございますか。──皆さま方、棒状であればなんでもいいと思ってございませんか。

 最後のこちらは?魔法の杖?

 ……北白川、皆さま方のポテンシャルを見誤っておりました。まさか次元を跨いで来られるとは夢にも思っておりませんでした。こちらはあの有名な魔法使いシリーズで、ラスボスが使用するニワトコの杖でございますね。──あの物語が永遠に終わらなくなりますので、速やかにご返却して差し上げてくださいませ。

 あのラスボスに北白川さんは勝てそう?そうでございましょうか……?まぁ、相手が杖を振り上げる前に杖を取り上げるくらいのことは致す所存でございます。杖がなければ素手でやり合えば良いだけでございます。ついでに杖をへし折り地に沈めるところまでが北白川のデフォルトでございます。

 しかし困りましたね。世界を跨ぎ、次元を跨いでも、お嬢様に相応しい御神器の器が見つからないとは……。

 ──少々お待ちくださいませ。

 ……この壁に立てかけてある杖は、北白川の見間違えでなければ、ローマ教皇が儀式の時に持つ牧杖(フェルラ)のようにお見受け致します。

 当ったりー!!でございますか。……左様でございますか……。

 速やかにご返却をお願いいたします!!今すぐ!Now!!北白川とてバチカンを敵に回したくはございませんので!!!


 頭痛が致します。皆さま方の悪ふざけに北白川、付き合ってられません。そして市松人形様と猫ぬいは、いい加減に退出いただけませんかね。

 北白川の一瞥に、卓上の呪物二体が抱き合って震えてございます。呪物も怖いという感情はあるのですね?これは興味深いことでございます。

 二体は何やら話し合うような素振りを見せると、やがて顔を見合せて「うん」と頷き合いました。

 何がうん、なのでございましょうか。式神(モブ)の皆さま方、この二体は何を話し合っておられるのです?

 思わず仁王立ちになる北白川を震えながら見上げる呪物二体。なんでございましょうか……まるで北白川が虐めているようではありませんか。呪物のくせに呪いの気概がまるでないあたり、呪物に向いてないと思われますね。北白川、ため息が尽きません。

「北白川、いる?」

 私室のドアがノックされました。扉を開けますとそこに立っておられたのは、一文字家のご長男、(じょう)様。清らお嬢様の兄君で、一文字ビルメンテナンスとハウスクリーニング事業を統括されております。

「ごきげんいかがでございますか、浄様」

 北白川はよろしくはありませんが。

 浄様は掃除家業一文字の名に相応しく、爽やかな容貌をされておられます。平成の時代ではスポーツドリンクのCMに起用されそうな雰囲気と申し上げれば伝わりますでしょうか。清ら様のお身内というだけはございます。老若男女に好かれるお顔立ちの方でございますが、北白川の脅威とはなり得ません。

 ご近所様方の【一文字家人気ランキング】において浄様は六位。北白川は不動の二位でございますので序列としては北白川が上でございます。浄様は顔が良いだけの格下でございます。

 一位は当然、清ら様でございますのでやはり皆々様見る目がお在りのようで北白川も鼻が高うございます。やはり美しきものは癒しであり、崇める対象となるのでございます。

「清らから聞いたよ。神筆が壊れたって?次の器は見つかった?」

 浄様は北白川の部屋にズカズカと入って参りますと、卓上に並んだ器の候補をご覧になっておられます。

 先程まであった国際問題になり得そうな物は既に返却済みでございます。抜かりはございません。

「この呪いの人形みたいなのは何?」

「呪物でございます。勝手に入り込まれましたので、教育的指導を施しましてございます」

 呪物二体をご覧になる浄様が苦笑されておりますね。そして視線を受ける呪物たちはソワソワと揺れております。心做しか呪物の顔が紅くなっておりますが、気の所為でございますね。北白川、視力は良いのですがスルースキルも日々磨いてございます。

 照れる呪物など有り得ません。

「浄様、北白川に何か御用でございますか」

「そうそう。次の神筆の候補なんだけど」

 そう言って取り出されたのは──

「リボン……でございますか」

 リボンでございますね!?新体操のリボンでございますねぇ?!!!

「新体操のやつなんだけど、北白川はこう言うの好きそうだなって思って。清らに持たせたいでしょ?」

浄様……あなたと言う方は!!

「北白川の趣味を考慮して頂きありがとう存じますが」

 とても良い!!!!さすが浄様でございます。北白川の趣味趣向を嫌という程に理解してございます。もはや気持ちが悪いくらいでございます。

 想像なさいませ皆さま方!!! そのしなやかなリボンが虚空を舞い、美しい新体操のステップを踏まれるお嬢様の流麗なるお姿を! 新たな御神器リボンに絡め取られ、緊縛されていく不浄なる悪意バグの視点に、今すぐ北白川が就任したい所存でございますれば!!!悪意(バグ)を緊縛致しますお嬢様を想像しただけで、北白川の脳髄から何かの汁がドバドバジャブジャブと、さながら掘り当てた原油のように溢れ出すようでございますれば!!!!

「このリボンに予め言祝ぎと祝詞を書き込んで置けば、効果が倍増しそうだよね」

「なるほど。浄様にしては名案でございます」

「にしては、って」

「しかしながら問題がございます。核をどのように入れるべきか。それが課題でございます」

「核、かぁ……」

 浄様はご自身で持ち込まれたリボンをクルクルと回しながら唸っておられます。しかし、回したところで何か解決策が出る訳もなく。浄様は苦笑しながら北白川にリボンをお渡しくださいました。

「核のことは北白川に任せるよ」

 そう仰られて、浄様は部屋を出ていかれました。

 さて、卓上に並んだ器の候補にリボンが追加されましてございますね。

 そろそろお嬢様のお勉強も終わる頃でございます。その頃を見計らって、共に精査と参りたく存じます。

 新しい御神器のお披露目は、明日以降と致しましょう。それまでに皆さま方──。

 この二体の呪物の撤去をお願いいたしますね。北白川、心からのお願いでございます。




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