表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/29

第17話 選ばれる側、選ぶ側

─午前十時。

凪人は、再び《銀鷹連》本部の前に立っていた。


前に来たときよりも、心なしか建物が重く見える。

それが“責任”という名の圧力なのか、自分でもよく分からなかった。


(……まあ、銀鷹の結城瞬さんに推薦してもらえなかったら、俺は今、ここにいない。なるべく早く、お礼もかねて顔出しておきたかったしな)


端末をかざして、受付カウンターDを通過。

案内ドローンが現れ、凪人は静かにそのあとを追う。


──そして、応接室の扉が開いた。


「ようこそ、《銀鷹連》へ」


そう言って出迎えたのは、結城 瞬その人だった。

相変わらず、威圧感のない柔らかな笑顔を浮かべながらも、その視線には確かな力が宿っている。


「あの試験、見させてもらったよ。──合格、おめでとう」


「ありがとうございます。……ギルドからの推薦、感謝しています」


凪人はまっすぐに頭を下げる。

その言葉に、結城はわずかに目を細めた。


「さて。さっそくだけど──凪人くん」


結城は立ち上がり、机越しに向き直った。


「正式に、我々《銀鷹連》に入団してくれないか?」


凪人の表情が、一瞬固まる。


「……え?」


「もちろん、すぐに返事を求めたりはしない。君はまだ若い。選択肢を持つ自由があるべきだと思っている」


結城の声は優しかったが、そこに一切の冗談はなかった。


「だが、我々としては、君のような逸材がチームに加わってくれることを強く望んでいる。……どうだろう?」


凪人は少しだけ目を伏せて考える。そして、静かに答える。


「……すみません。少し、考える時間をいただけますか」


「もちろん。焦る必要はない。君のような人材に“選ばれるギルド”でありたいと、私は思っているからね」


その言葉に、凪人はわずかに驚きながらも、深く頭を下げた。


(──この人が、ギルドの頂点に立っている理由……少し、分かった気がする)


数分後──

凪人はギルド本部を後にし、再び都市の光の中を歩き出す。


(……とはいえ)


(俺が、ギルドに入るって……本当にそれでいいのか?)


──悩みは、心の奥で静かに形を成していった。




──翌朝、Fクラス教室。


「おはよ」


扉を開けて中に入ると、すでに揃っていたカズキ、ゆうま、玲那の3人が顔を上げた。


「おう、凪人! おはよう」


「……なんか、顔がちょっと真剣?」


「どしたの? 何かあった?」


凪人は少しだけ言葉を選ぶようにして、机に鞄を置く。


「──ちょっと、相談があるんだけど」


その言葉に、3人の目がわずかに見開かれる。


「え、凪人が相談って……珍しくない?」


「ていうか、相談とかしてくれるんだな……」


「な、なんかあったの?」


凪人は軽く息を吐いて、正面を向いたまま言葉を続けた。


「昨日、銀鷹連のギルドマスター──結城瞬に正式に入団しないかって言われたんだ」


「……っ! マジかよ、それ……」


「さ、正式に……?」


「うん。でも、即答はしなかった。『考えさせてください』って答えた」


教室の空気が、一瞬だけ張り詰める。


「……どうして?」


玲那が、静かに尋ねた。


「たぶん、俺がここで生き残って、試験にも受かったから……“使える”って判断されたんだと思う。でも──それだけで動いていいのか、まだ自分でも分からないんだ」


凪人は、ゆっくりと言葉を選びながら続けた。


「俺は、強くなりたい。……誰も、死なせたくないから。でも、それが“ギルドに入る”ってことと、同じ意味になるのかは……まだ、答えが出てない」


しばらくの沈黙。


だが、3人はその静けさを、優しく打ち破った。


「凪人。どんな選択しても、お前はお前だよ。信じてっから」


ゆうまが、真っ直ぐな目で言う。


「……背負いすぎんなよ? ギルドでも、学校でも」


カズキの言葉は、どこか兄貴分っぽくもあって。


「わ、わたしも……応援してる、から……」


玲那は、小さな声で、でも確かに伝えてくれた。


「……ありがとう、みんな」


凪人の胸の奥で、なにかがすっとほどけた気がした。



──夜。

帰宅した凪人は、シャワーを浴びてベッドに倒れ込んだ。


部屋の中には、どこか静けさが漂っている。

それでも、胸の奥は落ち着かなかった。


(……俺は、どうしたい?)


その問いに、すぐに答えは出なかった。

けれど、ふと耳の奥に、あの冷静な声が響いた。


『意識レベル安定。覚醒度:高位。思考処理──再起動可能です』


「Oris。……聞きたいことがある」


『応答中。内容をどうぞ』


「──銀鷹連に入るべきか。どう思う?」


短い沈黙。


やがてOrisは、いつもの調子で、しかしどこか“わずかに迷うような間”を含ませて答えた。


『選択は、あなた自身に委ねられています。

しかし──戦力増強、情報収集、戦闘訓練の観点から見て、

《銀鷹連》への入団は、現時点で最適と判断されます』


「……そうか」


凪人は天井を見つめたまま、目を閉じた。


(俺が強くなるための最善──それが、ギルドに入ることなら)


(あのとき、守れなかった仲間たちのためにも──)


そのとき、ふいに思い出したのは、3人の仲間の言葉だった。


──どんな選択しても、お前はお前だよ。

──背負いすぎんなよ。

──応援してる、から。


「……よし」


凪人は、手元のデバイスを手に取る。


表示されたメッセージ欄に、短く入力する。


【結城瞬さんへ】

明日、お伝えしたいことがあります。お時間いただけますか?


送信して十数秒後。

通知が返ってきた。


【結城瞬】

──いつでも構わないよ。待っている。



(……明日、ちゃんと伝えよう)


──誰よりも、強くなるために。

──誰よりも、遠くへ行くために。


凪人の決意が、静かに夜を貫いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代ファンタジー 異能力バトル 人工知能 最強 英雄になりたい 拒絶因子 ダークヒーロー 選ばれし存在 世界の真実 運命改変 成長要素あり 男主人公 SF要素あり
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ