目指す過去とは
食後のちょっとした打ち合わせで『過去に戻る』ことに決まった3人。
コンビニやスーパーに行く感覚で「今から行こう」というフォレスタ。
それぞれの思惑があるらしく、3人の戻りたい過去と戻りたくない過去があるらしかった。
「僕は、できるだけ昔の戻って早めにクルーガクとマティアスの病気を事前に予防できると思う。できれば、おじいちゃんともう一度会いたい・・・かな」
「それだと、わたくしとタケルさんが出会う前になってしまいます・・・」
クレアが肩を落とした。
「そ、その後で考えます」
「ほんとですか?」
クレアが喜びの笑顔を見せた。
タケルはクレアの喜んだ顔を壊すことは出来なくて、悲しい顔をしたら忖度して、何も言われなくても喜ぶように動いてしまうのだ。
「あのー、フォレスタ、過去に戻るのに失敗したら何かしらのペナルティ的な物は・・・」
「ないぞ?」
「過去には戻れるけど、未来には行けないとか・・・」
「わらわは、そんなポンコツに見えるのか?タケル様よ」
「戻り放題ってこと?」
「『戻り放題』?わらわもそんな言葉は聞いたことがないぞ。まあ、戻り放題じゃ」
「私も、タケルとの婚約が決まる前は嫌よ!条件が変わったら嫌だし」
「更に過去に戻りにくくなった・・・」
「あと、『先生』はある程度目星をつけておかないと、過去に戻っても探していたら時間切れになる可能性もありますわ」
「人柄も良くて、信用できて、能力が高い・・・そんな優良物件が・・・」
「シャル?やりますか?」
「クレアお嬢様、私を買っていただくのは大変光栄ですが、私はポンコツな嬢様を特等席で見ていたいので、ずっとお傍に置いてください」
「忠誠心は嬉しいのだけれど、ちょっと再教育が必要なのかもと思うわたくしがいますわ」
「あとで、お部屋で謹んでお受けいたします」
シャルが深々とお辞儀をした。
「では、ローレットは?」
「何をするのか、詳しくは把握できていませんが、クレア様が期待してくださるのならば全力で取り組みます」
「たしかに、ローレットさんなら安心だなぁ」
「それでは、ローレットを・・・ただ、過去になると今、本人の許可を得ても意味があるのですか?」
「まあ、気分というか・・・未来とはいえ、本人の意向も聞いておかないと・・・」
「じゃあ、ユウナギと僕が婚約した直後くらい?」
「そうね。それなら文句ないわ」
「わたくしも異存ありません」
「じゃあ、決まりで」
「ところで、今までの経験や知識は持っていけるのかな?過去に戻ったら、全部忘れていた・・・なんてことは?」
「そんなことをしたら、過去に戻る意味がないではないか」
「そうなんだけど・・・」
「そんな落とし穴はないから、タケル様よ安心してよいぞ」
「じゃあ、何度もやり直しがきくなら、何度も修行して剣術とかで今より強くなって過去に戻るっていうのはアリかな?」
「気に入らなかったら、やり直せばいいだけじゃ。経験不足は次回で取り合えせばいいじゃろう」
「じゃあ、僕は剣士になって冒険の日々を・・・」
「え?タケル料理人とか、商人になりたいんじゃなかったの?」
「冒険者として森に入ったら1日で死んだし・・・もう少し強くなりたいよ」
「へー、意外。私はまあ、先生になれたら最高よね」
「わたくしは、タケルさんのお傍にいられれば・・・」
「まあ、過去を変えることで、未来は好きなように変えられるってことでしょ!?希望しかない。すぐにでも行こう!」
「3人なら心配もないでしょ」
「わたくしもそう思います」
「じゃあ、フォレスタ。頼むよ。僕とユウナギが婚約した直後くらいの過去に戻りたい」
「タケル様の記憶は既に楽しんだ・・・読み込み済みじゃ。では行くかの」
フォレスタが何やら呪文のような物を唱えると、3人の身体が光り始めた。
「お、お嬢様!?」
シャルが急に慌て始めた。
「タケル!うまくいくよね!?」
「もちろんだよ!」
「もっといい未来に!」
「タケルの未来が楽しみよ。一番近くで見てやるんだから!クレアちゃんと一緒にね♪」
「僕の未来はね・・・ひょんなことから異世界への扉を発見して色々得たスキルで無双する話の予定・・・かな」
3人とフォレスタの身体がその場から消えた。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。
次回エピローグを準備しています。
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