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ドアの向こうはドアだった

■ドアの向こうはドアだった

祖父の部屋のドアを開けたら、そこにはあったものはドアだった。


「ドア?」


彼の名は「タケル」。

高校1年生の16歳。


3日前、たった一人の肉親の祖父を亡くし、今日埋葬が終わったところだった。

何気なく祖父の部屋に来て何気なく遺品を探そうとしていた。


祖父が亡くなって、何となく祖父の部屋に行った時、タケルは何気なく襖の扉を開けた。

祖父の部屋は和室だったが、襖のドアは引き戸ではなく、開き戸だった。


タケルの祖父は部屋をいつもきれいにしていた。

祖父は必要な物を押し入れに収納しているのだと思っていた。

何か遺品になるものを見つけたいと思ったのだった。


タケルは普段開けることがない襖の扉を開けた。

そして、そこにあったものはドア。

洋風なデザインの繊細な彫刻が施された高級なドアだった。


ドアの中にドアがあることもおかしいが、和室にこの洋風なドアのミスマッチぶりもおかしかった。

ただ、タケルはたった一人の肉親を失って何かを考えていたわけではなかった。


だからこそ、ドアの中にドア、和室の中に洋風のドアと言うミスマッチにもそれほど驚かなかった。


「なんでドアが・・・」


彼は誰もいない部屋で誰に向けられたものでもない言葉を発していた。

吸い込まれるようにドアノブに手が伸び、何の疑問も持たずにドアを開けた。


次の瞬間、彼の中に声が聞こえた。


「鑑定スキルの継承をお知らせします」


「うわ!びっくりした!」


タケルは驚いて飛び上がった。

誰もいない一軒家で、たった一人の肉親、祖父もいなくなった家の中で突然人の声がしたのだ。

それも、耳のすぐそば・・・と言うよりは、頭の中から聞こえたように思えたからだ。


タケルは周囲を見渡したが、誰もいない。

そして、そこには倉庫のような薄暗い部屋があった。


「こんな部屋が・・・」


タケルが生まれ育ったこの家は一戸建てと言っても2DK。

古い作りのいわゆるぼろ屋だ。


今回開けた扉は外の方向に取り付けられた扉だったので、タケルは奥行き30㎝くらいの奥行きの浅い収納があるものとばかり思っていたのだ。


ところが、開けてみると、すぐそこにもう一つの扉。

その扉を開けてみると、明らかに物理的にあり得ないほどの奥行きが広がっていたのだ。


普通の考えならば、「危険」を感じてすぐに扉を離れるだろう。

ところが、かすかに祖父のにおいがする部屋だったからか、タケルはするすると中に進んでしまった。


扉の中は薄暗い空間。

広さは、10畳くらいあるだろうか。

この家で一番広い空間と言うことになる。


タケルの家は四畳半が2間の2DKだ。

ダイニングも食事用の小さなテーブルを置いたら座るところも無いようなそんな狭さなのだ。


薄暗い部屋には、木箱が雑然といくつも置かれていて、そこには剣や槍が詰め込まれるように立てておかれていた。

イメージ的には物語にでてくる城の中の宝物庫と言う感じ。

壁はレンガ造りとなっている。


タケルの家は木造の和風づくり。

このレンガ造りの部屋は不釣り合いだった。


埃っぽくないことから、タケルの祖父が掃除していたのかもしれない。

タケルはそんなことを考えながら部屋の奥に進んだ。


宝物庫(?)の次はちょっとしたリビング、そしてその向こうには小さいながらキッチンが見えた。


「家?」


家の中はきれいに片付けられていて、整理整頓されている。

しかし、生活している跡もみられることから空き家ではないことはすぐにわかった。

そして、ここの家主は祖父ではないかとタケルは無意識に考えていた。


「家の中の家」は基本、木で作られている。

木と言っても日本家屋ではなく、柱も梁も丸太で出来ていた。

壁は板できれいに貼られていて、古いけれどよく手入れがされている印象だった。


タケルは気になって外に出てみた。

履物は祖父のサンダルがあったので、それを履いた。

やっぱり、ここの住人はおじいちゃんなんだとタケルは思っていた。


庭は細めの丸太で柵が作られていて、割と広めの畑が作られていた。

ニンジン、大根、白菜、ピーマン、なす、いちご、みかん、色々な季節の野菜と果物が実を成していた。


「すごい・・・」


見慣れた野菜のほかに、スーパーなどで見たこともない野菜もあり、タケルには料理法が思い浮かばなかった。


「この野菜たち・・・もらってもいいのかな・・・」


祖父が残した遺産は全部で280万円。

そこそこ大金ではあるが、高校1年生のタケルが今後大学に進学するまでの食費、学費などを考えたら全然足りない額だった。


祖父の葬儀費用もここから引き落とされる予定なので、タケルは一言で言って貧乏だった。

野菜があり、家庭菜園ができるのならば今後も野菜を育てて食費を節約したい、そんなことを考えつつ畑の野菜を見て回っていた。


次にタケルは柵の外を見渡した。

そこは、森の中だった。

空は青いというよりも少し緑がかっている。


タケルの家は住宅地にあったことから、ここが日本でないことは明らかだった。


「どういうこと!?異世界!?」


タケルは自分が死んだのではないかと思い、不安になり宝物庫(?)を通って祖父の部屋に戻ってみた。


そこには、これまでの日常通りの祖父の部屋の風景が広がっていて、誰もいない家と言うことも変わりはなかった。


こうも非日常的なことが起こると、頭の中で理解が追い付かない。

タケルはなぜか祖父の部屋の外側から壁を見てみたが、いつもの見慣れた建物の壁だった。

反対側から見たら、そこには家があり、さらに森がつながっている・・・そんなことはありえないと思えた。


自分の靴とスーパーでもらったがさがさ袋を準備して、再び「もう一つの家」に行った。

早速野菜をいただこうと思ったのか、掘り起こすために手ごろな長さの剣を1本宝物庫(?)から引き抜いて、右手に剣、左手にがさがさ袋とスニーカーと言うファンタジー要素ぶち壊しの状態で、庭の畑に進んだ。


タケルが最初に狙ったのは大根だった。

丸々と太っていて、スーパーで買えば198円はすると考えたいたのだ。


大根の葉を握ると地面に思いっきり踏ん張り一気に引き抜いた。

タケルの腕の太さの2倍はあろうかと言う太さの大根が引き抜けた。



「すごい、これ買ったらいくらになるんだよ」



正常値バイアスだったのかもしれない。

目の前に突然異常なことが起きても、心が平常を装うという心理状態のことだ。


「火事だ!」と聞いたとしても、自分のいる場所は大丈夫と勝手に思ってしまうのが「正常値バイアス」だ。


タケルは土がついたままの大根を持ってきたがさがさ袋に入れた。

目は既に次の獲物(野菜)を狙っていた。


大ぶりの白菜・・・タケルの見立てではスーパーでも1個398円はするだろうという逸品だった。

無意識に「あの白菜はいくらだ?」と思った瞬間、視界に小さなクスエアが表れた。


「白菜 魔の森で育てられた特別な白菜。効果:美肌効果、整腸作用。日本市場価格:販売不可。マティアス販売価格:600G~800G。」


タケルは見えてはいけないものが見えた気がした。


「これって・・・」


物の試しに先ほど掘り起こした大根を見ながら一言声に出した。


「鑑定」


程なく白菜の時のようにスクエアが表示された。


「大根 魔の森で育てられた特別な大根。効果:美肌効果、むくみ解消、便秘改善。日本市場価格:販売不可。マティアス販売価格:600G~800G。」


「な、なんだこれ・・・」


タケルが疑問を口にするのとほぼ同時に柵のあたりから爆音がした。


「バターン!」


見たこともない生き物が柵のすぐ外にいるのだ。

タケルは反射的に逃げようとしたが、その生き物は見えない壁に張り付いているようになっていて、それ以上家の敷地内に入ってこない。


その生き物は、体長2mは超えている。

頭には角が生えていて、全身の筋肉が異常に発達している。

ファンタジーで言うところの「オーガ」だとタケルは思った。


「ここ・・・異世界・・・か」


そうつぶやくと、地面に置いていた剣を両腕で持ち、そろそろとオーガに違づいた。

時折雄叫びを上げるオーガに身がすくんだが、オーガは柵からこちらには入ってこないようだ。


それならばと、タケルは柵から出ないように、そして、剣だけ出るようにしてオーガを串刺しにした。

オーガを刺すときは、胸の中央に赤く透けて見える赤いゴルフボールほどの大きさの何かを突き刺すようにした。


『ザクッ!』


剣が赤い球状のものを貫いた瞬間、オーガは1激で倒れてしまったのだ。

しばらくは暴れていたが、すぐに動かなくなった。


タケルは少し離れた位置からその様を見ていた。


「経験値:12万6000獲得。レベルアップ1→5。」


スクエア表示とともに音が聞こえた。


「まるでゲームだ」


そう、聞こえたのはレベルアップ音だった。

タケルが気になっていたのが、オーガの死骸だ。

これを何とかしたら肉として食べられるのではないかと思ったのだ。


しかし、魚すらさばいたことがないタケルにとって、つい今まで生きて暴れていたオーガを解体するのはすごくハードルの高いことに思われた。


「オーガの死骸を収納しますか?(YES/NO)」


スクエアに選択肢が表示された。

これは当然「YESだろう!」と考えた瞬間、オーガの死骸がタケルの目の前から消えた。


そして、別のスクエアが表示された。


「オーガの死骸(解体可)」


「なんだこの解体」って、と思った次の瞬間、タケルの頭の中に答えが浮かんでいた。

「YES」と思い浮かべると、タケルの思った通りに、表示は次のように変わっていた。


「オーガの肉、オーガの骨、オーガの内蔵、オーガの血、オーガの爪、オーガの皮、オーガの脂肪、オーガの内蔵」


見事に解体されていた。

恐る恐る肉を200g程取り出してみた。


豚肉や牛肉と同じような肉が目の前に現れ、手に持っていた。

きちんと処理されていて、すぐにでも料理に使える状態だった。


感覚的に「いける!」と思ったタケルは森の家のキッチンでオーガ肉をスライスして料理を始めた。

まな板や包丁など必要なものは全てそろっていた。


タケルの家と並びなども似ていたので、やはり祖父が使っていたのだろうとまた思った。

オーガ肉は、フライパンに油をひいて焼いてみた。

少し塩コショウを振っただけのものを食べてみたら、癖があるけれど食べられない肉ではなかった。


元々タケルは食に対して寛容で「おいしい」のストライクゾーンが広かった。

おかげで、この日は元手がゼロで一人バーベキュー大会となった。


「ふー、おいしかったー」


食べ終わって満足したタケルはリビングの椅子に腰かけた。


「最高じゃね?」


タケルは思った。

今後生きていく上で重要なのは「衣・食・住」。


着るものはこだわりがないタケルだったので、ほとんどお金を使わなかったが、食と住は重要だ。

ぼろ屋とは言え祖父の家を引き継いだので、住むには困らないだろう。


食については、息をしているだけでも必要になる。

何らかの収入源を確保しないと食べていけなくなってしまうのは明らかだった。


そこに来てこの「森の家」、「畑」、「肉」!

タケルはスローライフに目覚めた。


高校生と言っても夏休み中のタケルは夏休み中、畑仕事とずるい狩りに興じて約1か月を過ごした。


今のところ3万文字くらいは書きました。

今回は5000文字くらい。

物語はさらに広がっていきます。

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