練習
「播瀬。おっ、俺はお前が…………」
「はい、カット!都目先輩、『お前が』からの間が長すぎです」
現在告白練習中の都目。しかし、なかなか思うようにいかず、美月に何度も『カット!』されて
いた。
「分かってるっ!分かってるから、最後まで言わせてくれっ!」
「…じゃあ、もう一度最初からどうぞ」
というわけで、練習再開。
「播瀬。俺はお前が…………すっ、すっ………すっ……すっ………」
最後のセリフを言うまで待っているつもりだったが、時間切れで美月が「タイムオーバー!!」
と叫ぶ。それを聞いた都目は「なにっ!??」と驚いていた。
「さすがに長すぎます。好きの二文字を言うのに5分も使ってたら、相手待ちくたびれますよ」
美月は呆れ顔で呟く。それを見守っている小森と薬師丸も同様だった。
「じゃあどうしろっつーんだよ!??」
「ストレートに『好きだ』って言えば良いんです」
「それが出来ねぇから苦労してるんじゃないかっ!あぁ~いらいらする」
「裕次郎、いらいらしたところで何も解決しないわよ」
ここで薬師丸が都目に声を掛けた。
「んなことは分かってるっ!ほっといてくれ!」
「まったく、声に出さなきゃ気が済まないんだから…。二人共、ごめんなさいね」
「はい」
「気にしてないので大丈夫です」
「だいたいなんで俺がお前達の目の前でこんな練習をしなければならないんだ。もっと他に方法は
あるだろ?」
「「「たとえば?」」」
三人は声を揃えて都目に尋ねる。すると…。
「…きっ、機械を使って…俺の代わりに喋ってくれる…とか」
だが、その回答はあまりにもひどかった。そんな都目に美月達三人は声を揃えて「それじゃあ、
気持ち伝えたことにならないでしょ!!!」と叫んだ。
「なんでだっ!?俺の声で喋ってくれるんだぞ?」
「このおバカ…」
薬師丸は涙を流した。それを美月と小森が慰める。
「都目先輩。いくら自分の気持ちを上手く伝えられないからって、機械に頼るのはだめです」
「小森。お前…」
都目はそう言いかけると、あることを思いついた。そして、小森にこう言った。
「だったらお前が見本を見せろ。そしたら俺も真面目に練習してやる」
「真面目にって…さっきまでの練習は真面目じゃなかったのかな?裕次郎」
「えっ、いや…その」
『しまった』と言うような顔をする都目。しかし、この話に小森は「いいですよ」と返事を返す。
「見本を見せたら、ちゃんと練習してくれるんですよね?」
「なにっ!?」
予想外の返事に都目は驚く。一方で薬師丸は興味深そうに小森を見ていた。
「美月。手伝って」
「…分かった」
見本を見せるとなれば、相手役はもちろん美月しかいない。都目を真面目にさせるため、美月は
小森に協力することにしたのだった。
「美月。好きだよ」
都目よりもしっかりとした告白。久し振りに吸血鬼王子を見た美月は、この告白に…「うん。あり
がとう」と笑顔で返した。
「なっ…なんでそんなに…さらっと言えるんだ、馬鹿野郎ー!!!!!!!!!!!!」
「裕次郎。いくらこの部屋が防音だからって、大声で叫ばないでくれる?」
都目の大声に両耳を塞いだ状態で薬師丸は注意する。
「菊馬、お前もお前だっ。なんでそんな笑顔で答えられるんだよっ!?」
「なんでって言われても…」
「先輩。これで真面目に練習してくれますよね?」
「っ!?」
小森の言葉で思い出す都目。その後は約束通り、都目は真面目に練習するのであった。




