↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真っ当に生きるしかない!  作者: 星宮 しずく
八年目・高等部三年生
58/62

秋・式典

「あー、マジでめんどくさかったー!!」

「まぁまぁ…サクリちゃん」

 フィラ達生徒は、いつもの制服の上に魔術師が着ているようなローブと似ているマントを着ている。留め具が貴族たちによって違う。多分家の紋様なのだろう。フィラはお店で売れなかった花を一凛留め具につけて誤魔化していた。

「これで終わりなのかな?」

「あー、多分?」

 サクリは頭の上に手を組んでいる。足元には秋を象徴する花、サフランが咲いている。

 先ほどまで卒業式をしていた。儀式は終わり生徒は中庭に出てきたのだが、多くの生徒は最後にと今まで話せなかった相手を狙っている。女子生徒は大方婚約者が決まっているだろう。婚約者が決まれば、社交界以外では基本的に男性と会わなくなるらしい。貴族社会とは難しい物だ。

「にしても、アイツらマジで人気だよな…どこがいいんだか」

 サクリの視線の先はレオとマリノに向かっている。二人とも女子生徒に囲まれている。最後だからと言うことであの二人は意外と真面目に対応している。

「…フィラさ、どうすんの明日から」

「うーん。とりあえず、今のお店辞めてバイト転々とする予定」

 フィラはマスターにすでにやめるとは言っている。八年近く同じ場所で働いていたのだ。やめるには勇気があったが、他のお店でも働いて経験を積んでおきたいのだ。しかも、フィラの考えている仕事はどれも貴族にならなければできないもの。少しの間はバイトで補うしかないのだ。

「サクリちゃんは?」

「婚約者すら決まらず卒業。まぁ、今はいい感じの侯爵、公爵からお見合いは来てる」

「すごいじゃん!!」

 フィラはわっと自分事のように喜んでいる。サクリが良い所のお嫁さんに成れるかもしれないのが嬉しいのだ。

「おいおい…お前ら俺らを助けろよ…」

 フィラとサクリがキャッキャしているとレオとマリノが疲れた様子でやってきた。

「お疲れー」

「フィラちゃんまで見捨てないでよ…」

 レオは堂々と中庭の芝生に膝をつく。レオもマリノも留め具には小さい花がついている。二人ともそろって妹につけられたらしい。花が意外と似合うのもびっくりだ。

「はぁ…まだ続きあるのダルイ…」

「は?まだあるの?何それ聞いてない」

 レオの言葉に反応したサクリはフィラの肩に手を置き、フィラをぶんぶん揺らす。フィラが目を回しかけていると気が付いたサクリは直ぐに肩から手を離す。

「次、なにすんの。帰りたいんだけど」

「魔術で花火を上げるらしいですよ」

 マリノの言葉にフィラが固くなった。魔術学園で魔術がまともに使えないのは結局フィラだけだった。この学園は魔力が五十を下回ったら退学と言うルールだ。魔力だけはあるので退学にはならなかったのが救いだ。

「花火上げんのだるぅぅ…ねぇ、フィラ。逃げ出そうよ」

「サクリちゃん!?」

「お、賛成。俺も行く」

「レオくん!?」

「では、私も」

「マリノくんまで!?」

 三人ともさぼる気満々だ。最後だというのにいつも通りのテンションでフィラの方が変なのかもと思ってしまう。

 三人はどこかに向かう様だ。フィラは後ろから追いかけることにした。

「ほ、ほんとに行くの…?怒られない?」

「別に?騎士団はほぼ確約だし」

「仕事もクビになりませんし」

「なにより、あーんな面倒なもん参加したくないし?」

 三人がどんどん悪い方に進んでいると思ったが、フィラもそうだ。三人と共にさぼろうとしている。

「ま、いっか。思い出ってことで」

 フィラも結局さぼることにした。四人で教室に侵入すると丁度魔術の花火が上がった。生徒たちの個性が分かりやすい花火だ。フィラが見ていると、サクリが後ろからやってきた。

「お、フィラも花火好き?」

「うん。素敵だと思う」

 女子二人で眺めていると、後ろから肩を叩かれた。

「どうしたの」

「受け取ってくれますか?」

 フィラは何も考えずに花をマリノから受け取った。スイートピーだ。今は秋。何故冬の花が咲いているのかフィラにはよくく分からない。きっと魔術なのだろう。

「ふへ、ありがと。花瓶に飾るね」

 フィラはとりあえず留め具に挿してた花の隣に挿しておく。隣を見ればレオもサクリに渡していた。同じスイートピーだ。あちらは白。フィラは桃色だ。

「サクリちゃんと色違いだ!」

「ほんとだ。粋な計らい過ぎて引くわ…」

 サクリは何も返せない、と焦っている。普段は色々ガバガバしているが、こういう時はちゃんと返そうとするのだ。鞄の中身をサクリがあさってる。何もなかったようだ。フィラも何か返そうとするが何も持ってない事に気が付いた。

「さ、サクリちゃん。どうする!?」

「…こ、これでいくわ…」

 サクリは、マントの下に着ている制服のリボンを解いた。フィラも便乗して解く。そして、二人揃って花を送ってくれた二人に渡す。

「…マジでこれしかないから嫌ならどうにかして…まあ、渡す」

「持ち合わせがこれしかないです…その、あの、お、お許しください」

 二人は何事もないように受け取った。レオに至ってはおぉ、女のリボンだと言っている。サクリはそれを腹が立ったのかバチンと小切れのよい音を出して肩を叩いた。

「いてぇ…まぁ、いいや。剣の柄とかに巻いておく」

「は!?何それ意味わかんなんだけど!!」

「私は…何に付ければ良いのでしょうか」

「つけなくていいからぁ…」

 サクリとフィラは必死に何かに巻こうとしている二人を止めている。初めて、サクリが慌てているのを見た。

 しばらくして、フィラとサクリが折れてしまいもう好きにしな、と言い逃げした。

「うぅ、つけられるのか…やっぱり別のを…」

「諦め…だな。はぁ、帰ろ」

「サクリちゃん、またね」

「お、またねー。手紙書くから受け取れよ?」

「返せないけどいいよー」

 秋の風が吹く頃。

 また、学園は卒業生を排出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。