冬・新たな学び舎
高等部になるとまず生徒数が変わる。百人から百五十人へだ。それに伴い、クラスの数も増えた。フィラは二組になったのだ。
一人で椅子に座っていでも誰も話しかけてはくれない。理由は簡単。フィラが平民だからだ。男子は既に魔力の噂が回ったのかジロジロ見てくる人はいる。一方女子生徒は恨めしい視線と嫉妬心の混ざった視線が浴びせられる。
(…帰りたい…)
フィラは小さくなり顔を教本で隠す。どうせ、簡単にフィラは授業についていけないのだ。予習しておいて損は無いはずだ。
「お、やっほーいフィラ」
「あれ?サクリちゃん」
「同じクラスかぁ。よろしくってことじゃん」
サクリは堂々とフィラの前の席につく。そこには先程まで知らない男子生徒が座っていた場所だ。横取りして良いのか、とフィラが考えているがサクリはどうでも良いようだ。何かを取り出しフィラの方に向けた。
「わっ…自分の顔?」
「そ!水面に顔が映る原理を使って作った最新のガラス!」
「へぇ…女の子には良さそう」
サクリが持っているのは既に異国では鏡と呼ばれている品物だ。サクリは本来の名前を知らないためガラスと言っている。
「ね、可愛い可愛いフィラちゃんの顔はどうかな?例の人は惚れるか?」
「うっ。惚れるも腫れるもないよ…別にそんな意味じゃないし」
「照れてる!可愛いわ!!」
サクリはフィラをわしゃわしゃする。うわぁとフィラが言っていると一人の生徒がやってきた。
「あ、あの…ここ僕の席なんだけど…」
「あ?アンタだれ」
「こ、この席のチャーリング…」
「ちっ、あっそ。どーぞ?」
サクリは高圧的な態度で席を立ちフィラの席の机に乗っかる。チャーリングという男はおずおずと自身の席に座った。
「はぁ、てかフィラ。この制服ダサいんだけど。最悪」
「そう?紺色でシンプルじゃん!」
「リボンが空色でまだいいけどさ。マジでダサい」
もう一つ変わったことといえば制服だ。中等部のものとよく似ているが、所々変化がある。高等部の方が少し派手になったとも言える。
「サクリちゃん。自分の席に座らなくていいの…?」
「えー、一番前でやなんだけど。ここがいい。フィラ変わって」
「やだよ…」
フィラのいる席はちょうど中央。講義がまともに受けられそうな席だ。その代わり、前後左右どこを見ても貴族という弊害はある。
中等部の時に貴族が周りの席にいると紙を投げられたりした事が初期はあった。だが、興味を失せたのか最近はからっきし無くなっていたのだ。
「…そういえばレオくんとマリノくん、どこのクラス?」
「え、あーアイツらは同じクラスで…一組?」
「お隣さんか」
フィラは鞄からペンとノートを取り出し、机の上に置く。サクリはふぁぁと欠伸をしている。フィラは制服を一切伸ばしたり短くしていないが、サクリは既に短い。太ももの半分くらいまでスカートを切っていた。
「はい、今から始めるぞー」
新たな担任が入ってきた。ガタイも良い男の教師だ。これでフィラの歴代担任は九年連続男なのが決まった瞬間でもあった。
「うわ、きた…だっる」
サクリは悪態をつきながら自身の席に向かう。フィラはその様子を送る。そして、教師の方を見ようとすると目の前に座っているチャーリングと目が合った。
「ねぇ、君。あの子と仲いいわけ?」
「え…えっと、うん。そうだよ」
「ふーん。君も性格悪いね」
「…へ?」
それだけを告げるとチャーリングは前を向いた。フィラはポカンとしたままだ。教師が高等部のルールや行事を説明しているが、フィラは頭をはいらない。
(…何今の…失礼!!)
フィラは言い返したくて仕方が無くなったが教師が何か話しているのでフンッとした様子で教師の話を聞く。教師の話は休憩も含めて三時間ほどで終わった。
「じゃ、これで解散。今日は帰れ」
教師の一言で数名の令嬢は立ち上がりそそくさと何処かに行ってしまった。フィラはそれを見送ると立ち上がり、チャーリングの前に向かった。
「さっきの取り消して」
「なにかな」
「性格悪いっていうの。自分だけなにか言われるのはいいけど、サクリちゃんのこと言われるのはヤダ」
「自意識過剰だね。性格悪いのは君だけもしれないのに」
「君もって言ったじゃん。もってなに」
「面倒くさいな。僕は帰るから」
鞄をもってチャーリングは扉を出ていった。フィラがビービー何かを言っていたがチャーリングは一瞬見てからすぐに出て行った。
「フィラー。今日どうすんの……なに、怒ってる?」
「あの人腹立つ……性格悪いって言われた」
「あー、誰だっけアイツ」
サクリは既に覚えていないようだ。鞄を肩に掛けて既に帰る気満々だ。一方フィラは少し隣のクラスを見てみる。
「…いるかな」
「アイツらならいるでしょ。勉強?」
「何となく……遊びに行けたらなぁって」
「お!いいねぇ!!じゃあ行くしかない!」
サクリはフィラの手を引き隣の教室に向かう。扉を開けると女子生徒たちの量が凄かった。
「「わぁ……いっぱいだぁ」」
二人の声が重なったがその声すら消えるくらいの女子生徒の歓声だ。
どの生徒も目的の人は一緒のようだ。侯爵の息子レオに老舗商家の息子マリノだ。二人は表面上は微笑みながら返しているが、どこか面倒くさそうだ。
「…どうする?帰る…?」
「いやー?借りを作ろう」
サクリはフィラをその場にいるように留めてサクリは女子生徒たちの海に入っていく。そして、フィラにも聞こえてしまう大声を出した。
「ヘイヘイヘーイ。モテモテボーイズ。今かお茶しなぁぁい?」
「いや、ナンパ…」
二人の返事は聞こえなかったが、フィラは思わず突っ込んでしまう。そして、しばらくするとサクリに手を引かれたレオが、レオに手を引かれたマリノが出てきた。
「任務完了!!よし、お茶行くぞ!!お前らの奢りで」
「俺らかよ!?」
レオのツッコミを知らないふりをしたサクリはフィラの手を取り廊下を思いっきり走り出した。




