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elf:1000 ─千年戦記─  作者: 世葉
第三章 聖地防衛作戦
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幕間【世界観解説】 勢力図

魔族

 千年前。巨人の住処、その地下深くに存在した異界の門――『魔界門』より現れた異形の軍勢こそ、後に人類が“魔族”と呼ぶ存在である。

 魔族は、人間やエルフのような単一種族ではない。異なる生態と力を獲得した多種多様な種の総称である。

 彼らは人類が持っていなかった魔力を有し、根本的に異なる価値観を持つ。その混沌とした社会を束ねているのは、『力の支配』という、ただ一つの絶対の掟のみである。


 魔王

  魔族を統べる絶対の王。

  『魔界門』より出現した最強の魔族にして、『力の支配』の頂点に立つ者。

  その力は、他の魔族を遥かに凌駕する。魔王の前では、強大な魔将ですら膝を屈し、逆らうことは許されない。

  魔王は、配下として四魔将を従え、大陸全土への侵攻を続けている。


 四魔将

  魔王直属の四人の将軍。

  それぞれが異なる魔族を率い、広大な領地と軍勢を支配する。

  四魔将は単なる軍団長ではなく、魔族という巨大勢力を構成する四つの支配種そのものでもある。

  互いに協力関係にある一方、種としての価値観の違いから、しばしば対立を引き起こす。


  獣魔将軍

   獣の姿を持つ魔族たちを束ねる将軍。

   狼、獅子、虎、熊。その姿は様々だが、いずれも魔力を宿した強靭な肉体と高い生命力を有する。

   彼らは本能と闘争を重んじる種族であり、戦場では圧倒的な膂力と俊敏性を発揮する。特に白兵戦においては、魔族最強と恐れられている。


  翼魔将軍

   巨大な翼を持つ飛行魔族の支配者。

   彼らは大空そのものを領土とし、断崖、険しい山岳、浮遊島など、人類が容易に近づけぬ場所を根城としている。

   翼魔最大の脅威は、その制空能力にある。上空からの一方的な急襲や魔法攻撃、さらには高高度からの偵察。これらすべてに対抗するのは極めて困難である。

   翼魔たちは誇り高く、地を這う者を見下す傾向が強い。


  妖魔将軍

   大陸にもともと存在した種族と、魔族の血が混ざることで生まれた混血の魔を率いる将軍。

   彼らは純粋な魔族の強靭な肉体を持たない代わりに、高い知性と強力な魔力を持つ。

   また、元となった種族の文化や習性を色濃く残す者も多い。そのため妖魔たちは、魔族でありながら人類社会への理解も深く、諜報・外交・魔法研究などを担うことが多い。

   一方で、魔族として不完全、と蔑視されることもある。


  超魔将軍

   人外、あるいは既存の生物体系に当てはまらぬ異形の魔族を統べる将軍。

   巨大蜘蛛、無数の眼を持つ肉塊、霧や炎そのものと化した存在。その姿はあまりにも多様なため、彼らを総称して“超魔”と呼ぶ。

   超魔たちは、生態も思考も他の魔族とかけ離れている。中には言語による意思疎通すら成立しない者も存在する。

   その力は極めて危険であり、一体の超魔が都市一つを滅ぼした記録も存在する。


人類

 『魔界門』の出現以降、人類は千年にわたって魔族との戦いを続けている。

 多くの国家は滅び、数え切れぬ都市が焼かれた。それでも人類は滅亡せず、戦いの中で力と技術を発展させ、生き延びてきた。

 現在の人類圏は、王国、神殿騎士団、魔法評議会、大陸商人ギルドという四つの大勢力によって支えられている。

 だが彼らも決して一枚岩ではない。魔族との戦いが長引くほどに、人類側にもまた、思想と利害の亀裂が広がりつつある。


 王国

  大陸各地に存在する諸国を束ねる、人類最大の国家。

  千年前、魔族の侵攻によって滅亡寸前にまで追いやられたが、しぶとく生き残った。

  現在王国は、神殿騎士団と共に、大陸各地に城塞都市を築き、魔族との戦争を続けている。何世代にもわたる戦いの中で、多くの犠牲を払いつつも、技術の進歩によって魔族に対抗してきた。

  しかし千年戦争は、王国そのものを疲弊させてもいる。王国は今なお強大だが、その内部には少しずつ綻びが生まれ始めている。


 神殿騎士団

  千年前、突如現れた魔族によって人類が滅亡寸前に追い込まれた時、人類を救ったのが、彼ら神殿騎士団である。

  騎士団は各地の戦士たちを導き、魔族に対抗する軍を結成。騎士たちは魔族と勇猛に戦い、ついに初代魔王を討ち果たす。その騎士団の英雄は、『勇者』として讃えられた。

  現在も神殿騎士団は、人類圏最大の武装宗教組織として絶大な影響力を持つ。

  彼らは“人は魔に屈してはならない”という教義を掲げ、純粋なる人の力による勝利を理想としている。

  そのため、魔族の力を取り込んだ魔法評議会を強く警戒しており、両者の関係は決して良好ではない。


 魔法評議会

  魔法を統べる者たちの連盟。

  人間は魔法を扱うことはできなかった。その彼らの始まりは、魔族の血を移植する禁忌の研究だった。

  当初、その力は極めて不安定で、微弱な力しか持たなかった。だが、千年の研鑽の果てに、今や魔族にも匹敵する魔力を有する者すら存在している。

  魔法を扱える者たちの増加とともに、魔法評議会は、戦場における魔法の運用だけでなく、人類文明に不可欠な魔法技術を数多く担っている。

  しかし、その力の起源ゆえに、”人間を魔へ近づける”、と危険視する者も少なくない。


 大陸商人ギルド

  国家、種族、宗教を越えて存在する巨大交易組織。

  千年戦争によって国家同士の往来が困難になる中、各地の商人たちは独自の交易網を発展させていった。それらを統合し、大陸規模の経済圏を築いたのが大陸商人ギルドである。

  食糧、武器、魔法石、情報、傭兵――戦争が続く限り、彼らの物流は止まらない。

  商人ギルド最大の特徴は、“利益になるなら相手を選ばない”ことである。

  彼らは人類国家のみならず、魔族領とも秘密裏に交易を行っている。千年続く戦いの中にも、停戦を望む声は少なからず存在するのだ。


 勇者

  聖剣グラムを手に、初代魔王を討ち果たした英雄に与えられた称号。

  それ以降、『勇者』とは単なる英雄の名ではなく、聖剣グラムに選ばれた者へ継承される特別な呼び名となった。

  勇者候補は幼少より神殿騎士団によって鍛え上げられ、剣術、戦術、精神力、対魔族戦闘技術を徹底的に叩き込まれる。

  成長した彼らは、騎士としてすでに一流。その中から選ばれた勇者が聖剣の力を解き放つ時、天を裂き、山を断つほどの神威を発すると伝えられている。

  その存在は、人類の希望そのものでもある。


 東国連合国

  王国の東方の果てに位置する、複数国家による連合体。

  険しい山脈によって西方諸国と隔てられており、独自の文化体系を築いている。

  山脈によって魔族の侵攻からも守られている彼らは、独立不干渉を貫いてきた。


 ドワーフ山師連

  各地の山脈や鉱山地帯を渡り歩く、ドワーフたちの採掘集団。

  彼らは特定国家に属さず、鉱脈の気配を求めて各地を移動し続ける。頑固で気難しいことで知られるが、その一方で鍛冶師としての技術は極めて高い。

  彼らが鍛えた武具は、人類圏でも最高峰とされ、神殿騎士団や魔法評議会ですら一目置く。

  本来、彼らのような振る舞いを、その地の領主が許すことなどあり得ない。しかし、ドワーフたちが許されるのは、偏に、彼らがもたらす希少金属、魔法石、そして武具の価値が絶大であるためである。


 小人族(ハルグリム)

  成人しても身長が人間の半分程度の小人族。

  丸みを帯びた体つきで、身長に対して少し短めの手足を持つ。運動能力は高くないが、その小さな手の精密作業は卓越している。知性に優れ、独自の芸術的感覚を持ち、特に細かい彫金細工や木工品の制作などを得意としている。

  農耕地帯の丘陵を住処とする彼らの家には、装飾が施された建物や繊細なデザインの家具が当たり前のように並び、その美意識の高さをうかがい知ることができる。

  そんな彼らの生活は、魔族の侵攻によって大きく引き裂かれた。

  戦闘が得意でないため、戦線に赴くことは滅多にないが、魔法評議会に所属し、人間側の技術支援を担っている者も多い。


エルフ

 大陸各地の深き森に暮らす長命種。

 彼らは人間より遥かに長い寿命を持ち、自然と共に生きることを何より重んじてきた。

 かつてのエルフたちは、人間の国家や戦争にほとんど関心を示さなかった。王が変わろうと、国が滅ぼうと、森は変わらずそこに在り続けるものだった。

 だが千年前──『魔界門』の開放によって、その静寂は終わりを告げた。

 長い年月をかけて育まれた森々は戦火に呑まれ、数多の精霊たちもまた、滅びていった。これを止めるため、エルフは人間の側に立ち、魔族と戦った。

 しかし、魔王は討たれても、戦争は終わらなかった。

 戦いが長期化するにつれ、人類は膨大な資源を必要とし、生存のためとして森を伐採し、土地を奪い、開拓を押し進めた。

 エルフたちは悟る。人間にとって森とは、守るべき命ではないのだと。

 さらに続く魔族と人間の終わらない戦争は、エルフを衰退させていった。長命であるがゆえに、彼らは人間のように急速に数を増やせない。

 やがてエルフたちは、多くの森を放棄することを決断する。そして、外界との交流を断絶し、生き残った者たちは大森林の最奥へ姿を消した。

 主を失った森は荒廃した。魔族の汚染、人間の開拓、終わらぬ戦争。かつて精霊に満ちていた森々は死に絶え、呪われた土地へ変わり果てていった。

 だが、それでもエルフは滅びてはいなかった。森の奥底で、静かに時を待っていた。エルフたちは密かに、反攻の準備を進めていた。

 人間でもない。魔族でもない。この大陸を、本来あるべき姿へ戻すために。


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