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BLOOD HEAD〜不死になった彼とツン強めロリ吸血鬼は8人の最強魔術師たちと救世の旅をする〜  作者: 紙屋シキナ
第八章

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第八章「チェイス・ジェイル・ボックス」#6

 シルバートと別れ、砂夜の信徒は委細を報告すべく空間移動にてリツカの運転する後部座席へと座った。


「第二騎士団長シルバート・アッシュハーツが現れました」


「そっか。じゃあ黄金櫃(アーク)はもう壊されちゃったか、その前にアンシェルが何とか脱出したか。動きはあったようだね」


 そう言うと、砂夜はじっと目を瞑り、感応を用いてアンシェルの頭の中を覗き見る。


「アンシェル様の応答は?」


「うん。無事みたい。でもこのなにも変わらない景色にも飽きちゃった」


「このまま車を走らせても時間を浪費するだけ。聖堂騎士団にまんまとのせられてしまいました」


「だったら、出向くんじゃなくて向こうから来てもらおうよ。ブラウニックの転化能力ならどうとでもなるでしょ?」


「はい」


 信徒ことブラウニック・ハウゼンが作戦の実行に移る。


「ねぇ、日護(ひご)リツカ騎士団長さん。巻き込まれたくなければ、すぐに車を停めて」


 ブラウニックは一人車外へ。転化の口上を高らかに述べる。


「砂夜様からのご命令。砂夜様から頂いた力。最大出力でやり遂げてやるーー転化・暗夜行路(あんやこうろ)裂罅ノ復道(れっかのふくどう)


 右目のみを覆うベネチアンマスク。左目からは1mはあるだろう、硬質の触角が生え、黒いローブを纏った体表からは幾つもの触腕がうねりを見せながら所々突き破って顔を覗かせる。


「アンシェル様。そっちから出向け、ってな」


 最後に掌を擦り合わせる動作を取ると、晴れ渡った青空に数十キロメートルにも伸びる裂け目が出現し、大きく口を開いた。


「どうなってんのあれ……」


 急停車するリツカ。やがて前方に積乱雲のような巨大な黒い影が覆う。


 目を凝らすとそれらは全て何もない砂漠の地平に降り注ぐ戦闘機や、整備車両の数々であり、建築物の面影を残す真っ二つに折れた管制塔に瓦礫の山々であり、剥がされたアスファルトに至っては、まるでスライスされたトリュフのようだった。

 

「エリア51倉庫はこの時を以ってして、地図から消えてなくなった、と」


 器用にも自由落下状態にあるコンクリート片に飛び移る将子(しょうこ)とシルバートとアンシェルの三人。将子の腕には混乱の渦中にある真中(まなか)が抱き抱えられていた。そんな天地すら分からぬ環境下で尚も攻防は続く。


 アンシェルの背には金色の骨翼。左胸及び左肩から指先にかけては獣爪にも似た突起が生えて並んでいる。


「シルバート。お前の未来視も完全無欠というわけではない。師である私の胸の内すらも理解出来なかったわけだからな」


 腕中の突起物が自動追尾装置付のホーミングミサイルのように展開。一斉掃射された。


 四方八方から迫り来る弾頭。


「未来を視ることに注力し過ぎて、今を疎かにした。その報いだ。この手で貴様を(ほふ)らなければならなくなったわけだからな」


 光刃を装填し追撃。シルバートの弓撃がフレアのごとく爪弾の全てを相殺した。


 爆風で震える空気。すかさずアンシェルが黒煙の中、次の一手に打って出た。


 将子が時機を伺う中、シルバートが右手を掲げる。


「アンシェルのあれを打ち負かすには貴方の持つ奥の手しかない。今はまだ動かないで下さい」


 落ちてくる彼らを間近で観察するため、砂夜が車を降りる。


「役者が揃った」


 すかさず聖剣を手にしたリツカとペリーナが取り囲んだ。


「わたしは一向に構わないよ。殺し合いでもなんでも。ねぇ? ルビアさん」


 遅れて車のドアが開く。ルビアの手には斬血が力強く握られていた。


「このまま真中のところまで行かせるわけないでしょ?」


「状況は違うけど100年前のロンドンぶり。でもね、知ってるんだよ。立ってるのもやっとなくらいにお姉様……とてもとても眠い(・・)んじゃない?」




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