シンデレラと魔法使いは共に歩む
後日、2人が結婚したことが報告され、国民からは盛大のお祝いをされました。
また、2人のラブストーリーが脚色はされながらも、貴族のみならず国民にも知れ渡り、2人は憧れの的になります。
実はその後には、王子アレクシスとアナスタシア、騎士団長レオとロゼリアが結婚することになり、更に継母のエノレアは実力が認められて女性初の爵位持ちの子爵となるのです。
そして、その話も国民には伝わり、ヴァーンズ家に憧れを持つようになるのですが、それはまだ先のことなので、まだ誰も知らないことです。
「ヴィオル、とても緊張しちゃってまだ胸がバクバクしているの」
「俺もそうだよ。まさかあそこまで人が来るとはね。どうやら父さん達の結婚式の1.5倍近くの人が来ていたらしい」
「ええーーー、嘘でしょう!?」
前公爵は当初は第1王子であったため、その時の前公爵と比べると地位は低い気がするため、前公爵よりも多く来賓が来たことにエラは大変驚きました。
しかしその後すぐに、臣下して王位継承権を手放したのか、まだ王位継承権を手放していないと言うか、後継者候補が現在の時点ではヴィオル以外いないため、臣下させてくれなかったことの違いが来賓の数に影響していたりするのかなと考えが過ぎりましたが、考えても仕方がないので気にしないことにしました。
「ねえ、エラは新婚旅行は何処か行きたいところはある? ある程度なら何処でも連れて行けるよ」
王族は本来ならすぐに公務となり、事が収まってから新婚旅行になるのですが、2人の場合は今度国外での公務がメインとなるため、まだ日程もハッキリと決まっておらず、2周間ほどすぐに休むことが出来るのです。
エラは咄嗟に何処でも良いよと言おうとしましたが、すぐに止め言い直します。
「私……妖精の国に行きたいわ。ヴィオルが魔法使いを志したきっかけになった国に」
「え……覚えていたの?」
「当たり前よ」
エラはふと当初の会話を思い出し、その当時から気になっていた国に行きたいと思いました。
それもヴィオルの思い出の場所でもあるため、その気持ちは更に高まったのです。
「難しい?」
「ううん、大丈夫。じゃあ妖精の国を訪ねようか」
「うん、楽しみね」
勿論妖精の国には連絡を入れますが、ヴィオル達がかつて国を救ってくれたことに彼らは深く感謝しており、何時でも遊びに来てくださいと言われているので、ヴィオルはエラが望むところに行けることを確信し、安堵しました。
またヴィオルは最近彼らと会っていなかったため、久しぶりに顔を出すことが出来ることにも嬉しく思います。
そして、エラが自分との会話をしっかりと覚えてくれていたことに、ヴィオルは何より喜びを覚えたのでした。
「それにしても、その姿とも見納めか……」
「そうね……」
そろそろ2人はウエディング姿からお別れをしなければなりません。
そう思うと2人は一気に寂しさに駆られてしまいます。
「ねぇ……もしこの姿をもう1度見たくなったら、魔法で復元してくれる?」
「いや……出来ないよ……」
「え? どうして?」
エラはきっとこの姿をもう1度見たくなる時が来ると思い、今のうちにと頼んだのですが、返事はまさかのノー。
ヴィオルは変身の魔法が何よりも1番得意なことから、エラは快諾してくれると思っていたので大目玉を食らい、キョトンとしてしまいます。
ヴィオルはそのエラの様子を見て、すぐに弁解を述べました。
「確かに姿だけなら変身魔法で簡単に復元出来る。だけど、そこに込められていた思いまでは復元出来ないだろ」
その言葉を聞き、エラは大事なことに気付かされました。
そもそもこのウエディングドレスは一流の裁縫師が作ってくれたものですし、デザインを考えたのはリリアーヌと自分。
また、義姉達とも一緒に考えたマーガレットをメインにブルースターを含むブーケや母が残してくれた少し形の古いダイヤモンドのネックレス、継母が貸してくれた結婚式の時に使用したハンカチとサムシングフォーも意識して作り上げた多くの人から様々な思いを込められたこの姿は、魔法では復元することは不可能だと理解したのです。
エラはそのことに気づかずに頼んだことを恥じて、ヴィオルに謝るものの、花嫁がそんなことをしては行けないだろと優しく注意されてしまいました。
「この姿は無理でも、舞踏会に連れて行ってもらった時に変えてもらった姿なら可能でしょう。今度あの姿に復元して」
「確かにあれは自分が全て作り出したものだから大丈夫だけど……俺は絶対にドレス姿にはならないから」
「ええ〜、私より綺麗だからドレス姿になって欲しかったのに残念……」
「いや、エラの方が綺麗だし…………そういう問題じゃない」
エラは少しだけヴィオルのドレス姿に期待をしていたのですが、頼む前に断られてガッカリしてしまいました。
その一方ヴィオルは、絶対に嫌と即座に頑固拒否をしました。
しかし、エラは少し凹んだだけで、すぐに笑みを浮かべて次のように提案したのです。
「まあ別にドレス姿じゃなくてヴィオルが納得する服で良いから、あの時のようにもう1度踊りたいの。あの時が1番楽しかったから、もう1度その気持ちを体験したくて……」
ヴィオルはてっきり舞踏会に行った時が1番楽しかったのだと思っていたため、あのぎこちないダンスが1番楽しかったと言われて少し驚きました。
しかし、あんなに楽しいと思ったのは久しぶりであり、ヴィオルにとっても大変楽しかった思い出なので、エラも同じように思ってくれて嬉しく思いました。
「ヴィオル、私はもう難しいダンスも踊れるから任せて。何ならリードしてあげる」
「頼もしいな。本来ならこっちがリードすると言いたいところだけど、足を引っ張らないよう気を付けるので精一杯かな」
ヴィオルは自分ではダンスは得意ではないと弱気ですが、王子と比べると劣るというだけで、実は人並みにはダンスは出来るのです。
そのためエラはヴィオルに断られないようにと、自分がリードすると言っておきながらも、きっと自分より経験が多いヴィオルにリードされるのだろうなと心の中では思っておりました。
「明日は満月だし、夜にガラスの靴を履いて待っているからよろしくね」
「ガラスの靴、まだ持っているの?」
「勿論よ。今すぐ取り出せるわ」
「当初は魔法で仕舞うの嫌がっていたのに」
「あれだけ素敵なガラスの靴を忘れるわけないでしょ。ならここが1番安全だわ」
「大切にしてくれてありがとう。ダンスは喜んでお受けするよ。折角だから楽しもう」
そして次の日の夜、明るい満月に照らされながら、あの時とは少し格好もダンスの出来具合も異なるものの、同じように2人は目一杯楽しんだのでした。
このようにして結ばれた2人は、この後困難はあるものの、協力して助け合い、また幸せな家庭を気づいて幸せに暮すことになるのです。
おしまい
約1年半お付き合いいただきありがとうございます。
これにて「シンデレラと魔法使い」完結です。
最後までご覧いただき本当にありがとうございました。
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