公爵令嬢のレッスン
公爵令嬢の勢いに飲まれ、レッスンすることになったエラ。
まずは歩き方やカーテシーの取り方などは、ヴィオルと一緒にレッスンをしたお陰で、公爵令嬢に爪が甘いところはあるけれどと言われつつも、特に何も言われることもなくそこのレッスンは免除されました。
次は公爵令嬢が自分に初めて挨拶するような形で、挨拶してみてとエラに命じました。
エラは一呼吸置いて当初のように丁寧に挨拶をします。
「初めまして、リリアーヌ・キャサリン・ランカスターお嬢様。私はエラ・アン・ヴァーズです。今回はメイドとしてここに働くことになりました。どうぞよろしくお願いします」
エラは何とかミスらずに言えたと安堵していますが、公爵令嬢からかなりのダメ出しを食らうことになりました。
「確かに及第点ではあるわね。でも、それだと人によっては失礼な印象を受けるわ。初めましてじゃなくてお初にお目にかかります、ですじゃなくて申しますの方が敬意を表しているように感じるわね」
エラはしっかりと丁寧に話しているようにみえて、実は不十分なところもあります。
挨拶や会話は他の何よりも大切であるため、今回は完璧に出来るようになるまで徹底的に教え込まれました。
エラは中々普段の言い方から抜けずに苦労しましたが、それでも周りの人達の言葉使いが全員洗礼されていたためか、エラの言葉も1週間も立たないうちにあっという間に洗礼されていき、言葉使いのレッスンは終了しました。
その次に行ったのは食事のマナー。
エラは普段そんな豪華な食事をするわけでもなく、食べる料理は限られていたため、ほとんどのマナーにダメ出しをされてしまい、1つ1つ丁寧に教え込まれます。
基本的なマナーはすぐ覚えたものの、やはりあまり出されない料理に対してのマナーに少しずつ違いがあり、そこに苦労しました。
また、エラはこの練習をしていると、公爵家の美味しい料理が思い出し、お腹は空いていないのに食べたくなってしまいます。
そして食事の時間になると、大変美味しそうな料理が並べられて、その料理の見た目からすでにもう手を付けたくなり、エラは早速料理を食べようとするとストップがかかりました。
「先ほどのレッスンでどれぐらい上達したか見せてほしいわ」
まさか食事中もマナーのチェックが入ってしまい、折角美味しい食事を楽しめないとエラは嘆きたくなるのものの、それを受け止めてマナーに集中します。
様々な料理を毎回少しずつ出されて、その料理ごとに合わせてマナーのチェックが1度に多く出来るような料理が提供されるようになりました。
そのおかげあってか、暫くするとほとんどの料理に対応出来るようになりました。
また、エラの食生活にも少しの変化が表れるようになりました。
それは朝ご飯や昼ご飯が完全ではないものの、ある程度の量を食べられるようになったことです。
これも良い前兆なのかなと思うとエラはその面でも嬉しくなりました。
食事のマナーのレッスンが終わると、ヴィオルとレッスンした時にも1番苦労したダンスでした。
早速最もメジャーなダンスをやってみますが、よくこれで舞踏会いけたなと思うほど目を瞠るものでした。
エラがちゃんと踊れたのは、王子のリードが大変上手かったからに他ならず、実際にヴィオルと練習をしていた時、ヴィオルが上手に避けることが出来なかったのは仕方がなかったと言えます。
当初は10種類ぐらいのダンスを教えようと思っていましたが、ヴィオルが社交界にはあまり顔を出さないことも加味して、その半分の5種類のダンスだけを教えることにしました。
半分に減らしても中々上手く踊ることは出来ませんでしたが、もともとバランス感覚は良いエラなのでコツを掴むとあっという間に上達し、普通に踊れるようにまでなりました。
あと残っていることと言えば、勉強。
勉強に関しては、知らないで損することはないため、期間が終わるまで出来るだけ詰め込ませるようにしました。
こうしてあっという間に3ヶ月が経ち、王宮の方でも戦争の決着がついたため、エラのレッスンはこれにて終了しました。
「リリアーヌ様、3ヶ月間ご指導していただきありがとうございました」
エラは公爵家を出る際に、今までに1番美しいカーテシーを取ってお礼を述べました。
その姿に公爵令嬢は満足し笑みを浮かべます。
「こちらこそ、無理矢理付き合っていただきごめんなさい。勿論エラお姉様のためでもあったのですが、楽しい時間も過ごせると思って……」
言葉は濁していますが、ようするに暇つぶしでもあったということでした。
エラは心の中で苦笑しながらも、公爵令嬢の言いたいことは身にしみてよく分かりました。
没落してからは常に忙しかったものの、エラが令嬢である際は基本周りの人が全て行ってくれていたので、逆に時間を持て余して暇なのです。
公爵令嬢であるため、子爵令嬢だった自分と比べると忙しく、実際に数時間は自身の勉強時間としてエラのレッスンに携わっていなかったものの、長い間関わっていたということはやはり暇だったことは伺えます。
「それにしてもここまで出来るようになっていただけて嬉しかったです。教え甲斐がありました」
「大変分かりやすかったので、すぐに付いて行くことが出来ました」
お互いに感謝を述べて、今度はお互いに笑みが溢れます。
そこにはもう立派なご令嬢が2人並んでいるようにしか見えません。
「エラお姉様、私のことを呼び捨てでお呼びください。様なんて付けられたら寂しいですわ」
「まだ正直リリアーヌ様でも慣れないのですが、今後善処しようと思います」
こうしてエラは挨拶を終えて、実家に帰ることになりました。




