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黒幕と姫の過去


 次の朝、ヴィオルはメイソンを閉じ込めた牢の所へ訪ねました。

 医師の話によると、今日の未明に意識を取り戻し、回復しているとのことで駆け付けたのです。


「遅かったなヴィオル」

「遅かったのはお前だ。本来なら昨日連れて行こうと思っていたのだからな」


 そうメイソンは、エラの義姉ロゼリアの聖力のお陰で怪我自体は完全に治っていたのですが、意識は不明であったため、医師から暫くはメイソンを安静にさせるよう指示されていました。

 そのため昨日は仕方なく、領地の修復をしていたというわけです。

 

「俺をどうやって連れ出すつもりだ? 箒や絨毯だと簡単に逃げ出せるぜ。勿論馬車なんて以ての外だ」

「魔法陣を使って瞬間移動させる。その牢一面中に魔法陣を覆っているだろう」

「瞬間移動? ああ、ヴィオルなら余裕か。俺には出来ないから失念していた」


 

 メイソンは魔法使いであるものの、そこまで多くの魔力を持っていないため、一気に魔力を必要とする瞬間移動は彼には出来ません。

 まして、現在メイソンの魔力を封じる魔法をかけながら、その状態を維持してその空間ごと瞬間移動させようとしているため、その量は莫大になるため、メイソンはその発想がなかったのでした。


「それにしても大掛かりだね。瞬間移動なんて元々魔力を多く食うのに、これだけの空間を瞬間移動させたら膨大な魔力が必要だろ。ただでさえ体力も残っていないだろうにね」

「メイソンが変なことしなければこんな面倒なことするわけないだろ。こっちは丸3日倒れるの覚悟なんだからな。まあでも、これは土の魔力だから目一杯使える」

「なるほど、だから水の魔法を使ったのか。土の魔力を使わなかった理由はそれか」


 メイソンが禁忌を犯して火の魔力を膨大にさせた時、別に水の魔力を使わずに、ヴィオルがより得意である土の魔力を使うことも出来ました。

 しかし、ヴィオルはメイソンを捕らえた後、土の魔力を膨大使う瞬間移動で彼を王宮まで送る予定だったので、今まで使っていなかった水の魔力を使うことにしたのでした。


「ヴィオルは、月影の魔法使いなのに、禁忌を侵さず水や土の魔力をそこまで多く使えるなんて羨ましい限りだ」 


 メイソンはこれまではヴィオルをからかっておりましたが、ここからは一気に真剣な顔に変えて話を持ち込みました。


「ヴィオル、今はまだ朝で眠っている者も多い。だから王宮に連れていく前に俺の話を聞いてくれないか」

「俺は基本政治にはあまり関与はしてないから、同じ話を王宮でするだけだぞ」

「分かっているさ。でもお前なら全て話せる気がするんだ。元々仲間だったからな。向こうではきっと全て上手く話せない」

「分かった。話だけは聞こうか」


 実はヴィオルとメイソンは、昔に一時期とはいえ共に旅をしていた仲間でした。

 そのため、元々お互いに気が置けない仲だったのです。

 メイソンはヴィオルに話を聞いてもらえると思って安心したのか、少し気が緩んだ様子で戦争をした経緯を話し始めました。




 メイソンは、魔法使いのハーフと普通の女性の間に生まれた魔法使いのクォーター。

 そんな彼は魔力はそこまで多くないものの、幼い時から簡単な魔法を使うことができ、その力で周りの子を楽しませておりました。

 その中でも1番楽しんでくれたのは、隣に住んでいた年下の女の子シャーロット。

 隣人でもあることから彼女とはどんどん仲良くなり、いつも一緒に遊ぶようになりました。

 そして、2人はそれぞれ大切な存在になっていきました。

 

 しかし、2人の運命が変わったのは、メイソンが15歳

の時。

 なんと王の使いの者が、彼女を無理矢理連れて行き、メイソンと彼女を引き離して、彼女はこの国の姫と仕立て上げられてしまったのです。

 実は3年前に王子が亡くなり、王は新たに子どもを作ろうとしましたが、どうしても王妃との間に子ども作ることが出来ずに、昔付き合っていた庶民の女性との間に出来た彼女を姫として連れてきたのでした。


 王は昔、第2王子として生まれてきたため、元々婚約者もおらず、またある程度自由に育てられておりました。

 そのため元々王位を継承するとは思わず、兄である第1王子が王位を継承するはずだったのですが、もう少しで彼が成人するという時に、彼は臣下すらせず、他国の女性と駆け落ちをしたのです。

 そのため、彼は付き合っていた女性とは強制的に別れさせられることになり、王太子になってしまいました。

 そして、本来第1王子と結婚するはずだった公爵令嬢と結婚し、王となったという少し複雑な経緯があったのです。


 彼女は姫として登城したものの、周りからは良い顔で迎えられませんでした。

 彼女は庶民であるため、そもそも基本のマナーもなっておりませんし、また王妃を含めて貴族純血主義者はこんな庶民との混血な彼女を今後の王位継承者にするなんてと許すことは出来ませんでした。

 そのため多くの人に虐められてしまい、 彼女はどんどん塞ぎ込んでしまうようになったのです。

 また、彼女が来て2年後に王と王妃の間に男の子が生まれてしまい、彼女の立場はより狭まってしまいました。

 

 その噂は庶民にまで届いてしまい、その時ヴィオルと共に旅をしていたメイソンにも届きました。

 メイソンは彼女を追いかけようと王宮で勤めようとしましたが、成人もしていなかっため勤めることも出来ずに諦めざるを得ませんでした。

 そのため気を紛らわそうと、その時旅をしていたヴィオルと一緒にあらゆる所へ旅をしていたというわけです。

 そんな中、噂を聞いたメイソンは成人になったこともあり、王宮試験を受けて勤めることになりました。

 メイソンは姫の護衛をしたいと言ったところ、驚かれたのですが、誰も姫の護衛をしたがる者が、いなかったためすぐに採用されることになりました。


 しかし、メイソンが王宮に勤める頃には、彼女は取り付く島もないほど荒れておりました。

 メイソンがどんなに彼女を慰めようとしても、あまり効果は無かったのです。

 そんな中、彼女が唯一興味を示したのが、メイソンが飼っていた猫。

 どうやら猫と関わっている間は、彼女の心が少し安らいだようで、メイソンは彼女に逢う度に猫を連れていくようにしました。

 まさかこのことがきっかけで、この後戦争に繋がるとは、その頃のメイソンは夢にも思わなかったのでした。 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほどなあ( ˘ω˘ )
[気になる点] 魔法陣って、貼るものでしたっけ。 [一言] うぅむ。 なんという複雑な。 そりゃそれだけ振り回されれば荒れるわ(;゜Д゜) 哀しき悪役ですね。 でもまだ改心の余地がありそうな気がし…
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