シンデレラはさらなる訓練を重ねる
今までは固定した物を撃つことを練習していましたが、前公爵夫人はエラに、今度は移動する物を撃つ訓練をさせることにしました。
今のエラは、浮遊魔法を使わない時よりは距離を遠く伸ばせませんが、それでも魔力の威力と、元々持ち合わせている撃つ際の正確さのセンスを持ってすれば、ある程度のことは出来るでしょう。
それでも、遠くから且つ弓の方向も操作することが出来たらこれ以上文句の言いようはありません。
正直そこまでちゃんと出来るかどうかは、前公爵夫人は予想出来ませんでしたが、時間もまだありますし、それが出来なかったとしても練習にはなるので取り敢えずやらせてみようと思い、エラに指示を出しました。
「エラちゃん、今度はその場所からあまり動かずにこの的のど真ん中を撃ってみて」
前公爵夫人は、エラから約500メートル離れたところに的を設置して、少しずつ動かしていきました。
エラはこれぐらいの速度なら大丈夫だろうと、来る位置を予想して撃ってみたものの、撃った瞬間に的が大きく上に動いて、弓はかすりもしませんでした。
エラは一体何事が起こったのかと動揺してしまいます。
「ただ予想して撃つだけじゃ駄目よ。標的に合わせて弓を操れるようになるための訓練なのだから頑張ってね」
「そんな魔法の使い方知りませんよ!?」
「大丈夫。今からそれ教えるから私について来なさい」
前公爵夫人は、右手を胸に当てて任せなさいと自信満々に言い切りました。
正直に言うと前公爵夫人は、短期間でエラにそこまで教えられるかと言う自信はありませんでしたが、これぐらい強気の方がエラも本気でやってくれるだろうと思ったのです。
その態度は正解で、実際にエラは期待に応えなければと意気込みことになりました。
そもそも今まで前公爵夫人の指導の仕方が分かりやすかったお陰で、短期間でここまで成長出来ましたし、エラは前公爵夫人のことをすっかり信頼していたのでした。
勿論不安の気持ちもありますが、エラはそれ以上に前公爵夫人の頼もしい姿についていきたいと言う気持ちの方が強かったのでした。
エラは意気込んでいざやってみたものの、やはりなかなか上手くはいきません。
それもそのはず。
なんせ、浮遊魔法を使った上で、応用した攻撃魔法を同時に使わなければならないので、先程よりも難易度はかなり上がっていました。
これはやはり少なくとも3日はかかりそうと、エラは少し気落ちしてしまいました。
「エラちゃん、さっきヴィオルから連絡があったわ。戦いが始まるのは明後日らしいわ。どうやら隣国の建国記念日の次の日に攻撃を仕掛けてくると言うらしいの。それも早朝にね」
「明後日って、2日後ってことですか?」
「ええ、そうよ。理由は詳しく聞いてないけれど間違いないみたいなの」
「2日間でこれをマスターしろと言うのですか?」
「そうね。でもエラちゃんなら大丈夫よ」
「何を根拠にそう言えるのですか?」
「女の勘ね!」
「勘って……根拠ないじゃないですか!」
エラは3日は少なくともかかるの予想したので、前公爵夫人に2日でこなせと言われても戸惑うばかりです。
おまけにその保障は一切ありませんので、さらなる不安が募っていく一方でした。
前公爵夫人は不安になっているエラを励まそうと、笑顔でこれは根性で頑張るしかないわとエラの左肩に右手を乗せて力を入れます。
エラは不安を完全に払拭することは出来ませんでしたが、今までは根気強くやって来ましたし、ここまできたらするしかないかと腹をくくり、大きな声でハイと返事をして気合を入れ直しました。
それからエラは必死に訓練をして、なんとたった1日で習得することが出来ました。
3日かけて習得した魔法の併用の仕方がしっかりと身についていたため、応用は思った以上に簡単に身につけることが出来たのでした。
残り1日は、今までの復習を行い、その場で即座に対応出来るように訓練をしました。
そして、早めに訓練を終わらせ、明日に備えてそのまま床につきました。
思った以上に疲れていたせいか、エラは熟睡することが出来たのでした。




