新たな思わぬ遭遇
前公爵夫人がエラの母のことを話し終えると、1人の女性が彼女の元にやって来て、話しがあるからと連れて行きました。
前公爵夫人は優雅に御免遊ばせと言いながら、2人のもとから離れていきました。
すると、次は1人の男性がやって来て、ヴィオルに話しがあるからと連れて行かれます。
ヴィオルは指差してエラにあそこで待っといて、すぐ戻るからと言い残してエラのもとを去りました。
取り残されたエラは仕方が無くヴィオルに指定されたソファーに腰をかけたのでした。
思った以上に柔らかく座り心地は悪くはありませんでした。
どうせヴィオルはすぐには帰って来ないだろうし、何より長時間箒に乗り続けていたので疲れが溜まっているからとソファーの上で仮眠をしようとしました。
しかし、仮眠をする間も無く、複数の男性がやって来て一斉に多くの質問を投げかけられてしまいました。
「貴女は一体何方ですか?」
「前公爵夫人とはどう言う関係なのです?」
「ヴィオル様との関係はどうなのですか?」
「恋人とか婚約者とかいます?」
「好きなタイプどんな人ですか?」exc. ……
エラは彼らの勢いに圧倒され、先ほど強く感じていた眠気が一気に吹っ飛びました。
それにしても多くの質問がいっぺんに降り掛かってきたので、頭の中はパンパンでパンクしそうでした。
何と答えたら良いのかと考えていたところ、後ろから叫び声が聞こえました。
「彼女はどうやらお疲れの様子なので私がお連れします」
聞き覚えのある女性の声でエラは驚いていてしまい、呆然としてしまいます。
その間、彼女のエラに近づいてくる足音はだんだん大きくなります。
そして、彼女はエラの腕を掴み、男性達には失礼しますと一例だけして、そのままエラを引き連れて行きました。
男性達がいなくなり、2人きりになったところでようやく彼女はエラの腕を離しました。
「どうしてエラちゃんがここにいるの?」
彼女は少し怒っているような口調で尋ねてきます。
エラも彼女と聞きたいことは同じであったあめ、彼女と同じように尋ねました。
「どうしてロゼリアお義姉様がここにいるの?」
質問に質問で返すのは基本会話の中ではタブー。
そのため、義姉は少し呆れながらもエラの質問に答えることにしました。
「私は薬師としてここに来たのよ」
「薬師なのにマントは被ってないの?」
「ツッコむところはそこなの!?」
まさかそんなことを尋ねるとは思わなかった義姉は呆れを通り越して呆然としてしまいます。
「あと、いつの間に薬師になっていたの?」
「尋ねる順番完全に間違えてない? 普通そっちが先に来るわよね」
「まあまあ細かいことは気にせずに良いから教えてよ」
エラは気になって仕方が無いので義姉の返答を急かしたのでした。
こう言ったら言うまでは絶対に引かないことは、義姉はよく分かっていたので、 呆れながらも答えることにしました。
「侍女だから侯爵家の伝で試験を受けさせてもらって薬師になれたのよ」
実は薬師になるためには薬師試験と言うものがあり、とても難しく、また受けるためには多くのお金が掛かります。
義姉は薬師になるための知識や技術は商家の時に身に着けており、薬師になれる可能性は十分にありましたが、受けるためには、16歳以上の年齢と高い受験料が必要だったため、16歳の時にはすでに貧乏でとても受けられなかったのです。
侯爵家から実力は認められていたため受験料を払ってもらい、そして資格を取得することが出来たのでした。
薬師になると、薬を使って商売が出来たり、危険な薬も使うことも出来るため大変便利です。
また、薬師は中々なれないため、資格を取れたことは名誉なことであり、エラは大変嬉しく思いました。
「まあ、薬師になってしまったせいでここに駆り出されたのだけどね……」
義姉は少し取ったことに対して後悔しているようで、両手を上に向けてため息をつきました。
「来たくて来たわけじゃないのね?」
「当たり前でしょう。来たくて来る変人なんていないわよ」
「そう……だよね……」
義姉に来たくて来る人は変人だと断言され、エラは内心ヒヤヒヤしてしまいます。
「まさか、来たくて来たとかじゃないわね? でも、さっき前公爵令息様と一緒にいたし、まさか彼に付いて来るためにここに来たの?」
義姉にここに来た理由を見事に見破られてしまい、エラは大変焦りました。
もし、このままヴィオルが心配で一緒にここに来たと肯定したら、間違い無く自分の方が心配だと怒られるのは分かりきっています。
それにまた、ヴィオルと婚約の約束をしているなんてバレてしまったら、彼との約束を破ることになり、それはそれで困ります。
そのためどうやって答えようかと少し考えましたが、取り敢えず理由の半分はボカして、もう一つの理由を答えるこにしました。
「違うわよ。私が来たのはお義姉様が薬師としてここに来たように私も仕事でここに来たの。魔女としてね」
これなら本当のことですし、先ほどの話を完全に逸らすことが出来ると踏みました。
「魔女ですって!? 魔女ってどう言うことよ!」
エラは思惑通り、先ほどの話を逸らすことができ、そのまま今までの経緯を話し始めました。
ヴィオルはここに向かう途中で自分に会い、そこで自分が魔女だと判明してそのままヴィオルに付いてここまで来たと。
ほぼほぼ事実であるため、何の躊躇いもなく義姉に説明することが出来ました。
義姉は最初は疑っていたものの、箒を取り出して乗るところを見せるとようやく信じて渋々納得をしたのでした。
「エラちゃん、事情は分かったわ。でも、あんな男達が群がっている中で、曖昧な態度を取ったり、ましてや寝ようだなんて言語道断! あり得ないわ!」
ちゃんと説得出来て良かったと安堵していたエラは、まさか突如違う理由で義姉が怒り始めるとは夢にも思いませんでした。
「あんな質問された時は『お答え出来ません』と背筋を伸ばして堂々と答えるのよ。まともに相手なんてしちゃ絶対駄目。それに寝ている最中に襲われたどうするよ。男相手に勝てるわけないでしょう!」
「私、そんな盗られるようなものは身に着けてないから襲われようがないと思うんだけど……」
「そう言う意味じゃないわよ。女として襲われるってことに決まってるじゃない」
「女として襲われるってどう言うこと?」
「あぁ……そう言うことをエラちゃんは知らないのね……」
エラはつい最近外の世界に出たばかり。
そう言うことを知らないのも無理は無いかと義姉は納得してしまいます。
それと同時にエラの危機感があまりにもないため、色々な意味でも心配で堪らなくなります。
エラには今度様々なことを教えてあげないといけないなと思ったのでした。




