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シンデレラの母の正体

 

 前公爵夫人に案内される形で付いて行くことになったエラとヴィオル。

 案内されたそこには、多くの騎士達が屯っていました。

 彼らは自身の武器を手入れしていたり、仲間とおしゃべりしたり、ソファーの上で頭を上に向けながら寝ていたりと行動は様々でした。

 少し奥に進むといるのは騎士達だけではありませんでした。

 白衣を着た医者やナース服を着た看護師、マントを被った薬師などもいました。

 彼らも彼らで、道具を確認したり、休息を取ったりと行動は多種多様でした。


「ねぇヴィオル、魔法使いや魔女は他にいないのかしら?」

「この国で魔法使いや魔女は王族ぐらいしかいないよ。でも実際に魔法使いや魔女は俺と母さんと父さんとアレクシスぐらいじゃないか? あ、それとお祖父……先代王かな」

「王様や公爵は魔法使いじゃないの?」

「魔力保持者ではあるけれど、魔法使いではないね。魔力が開花されなかったらしい」


 この場所には他にもてっきり魔法使いや魔女がいると思っていたので、王族しかいないと聞き、エラは驚いてしまいます。

 その上、魔力保持者だとしても魔法使いや魔女になれるとは限らないと知り、尚更驚きました。


「もしかして、私はかなり貴重な存在だったりする?」

「間違いなく貴重だね。おまけに王族じゃないから尚更さ」


 今までそんなことは言われたことは無かったため、自分が特別な存在なのだと言われて、エラは少し浮かれてしまいます。


「エラちゃんの周りには魔力保持者はいなかったの? お母さんがそうだったとか?」


 2人の会話に突如、前公爵夫人が割り込んできました。

 彼女はエラのことが気になって聞かずにはいられないのでした。

 

「周りに魔力を持った人がいたのかは知りません。そもそも私の周りには身内がいないですし、お父さんもお母さんも小さい時に死んだので覚えてないです」


 エラはもう1度そのようなことを聞いたことがないか思い出そうとしましたが、結局思い出せず、ヴィオルが聞いた時と似たような返答になってしまいました。

 

「エラちゃんのお母さんの名前は何と言うのかしら?」

「リコ・ヴァーンズですけど……?」


 エラは何故母の名前を聞きたいのかは分かりませんでしたが、反射的に答えていたのでした。


「あぁやっぱり。リコちゃんの娘さんなのね!」


 前公爵夫人はエラの母の名前を聞き、興奮し嬉しそうな笑みを浮かべました。

 エラは前公爵夫人の態度が全く理解出来ず、呆気を取られてしまいます。


「えっと……その……お母さんとは知り合いなのですか?」

「えぇ。リコちゃんは私の後輩よ。魔法学校でのね」


 エラは自分の母が前公爵夫人の後輩だとは、これまで以上にない驚きでした。

 しかし、それ以上もっと驚いたことがあります。


「お母さんって魔女だったの!?」


 まさか前公爵夫人から、自分が魔力保持者である理由が自分の母にあるとは信じられませんでした。

 確かに母は30代とはとても思えないほどの美女でしたし、どこか違う雰囲気はもあり、魔女らしき要素は持ち合わせているなと思いながらも、やはりエラは前公爵夫人の発言を疑ってしまいます。


「でも、リコなんて何処でもある名前だし、誰かと勘違いされているではないですか?」

「間違いないわ! だって貴女とリコちゃんは瓜二つですもの。本当に可愛い顔しているわ」


 エラの質問を全否定し断言した前公爵夫人は、自身の顔をエラの顔に近づけてマジマジと見てきました。

 かなり前公爵夫人の顔が近づけてきたので、エラは威圧感を感じ思わず後退りをしてしまいます。


「あら、ごめんなさいね。本当にソックリなものだから」


 前公爵夫人は自身の行動がエラを驚かせたことを申し訳なく思い、謝罪しました。

 

「あと、名前のことに関してだけど、エラちゃんのお母さんの名前はミドルネームはないわよね?」

「え……確かにないですね……」


 エラはミドルネームのことを聞かれて困惑しました。

 普通はミドルネームは誰もが持っているものであり、長ければ10個以上入っている人もいるぐらいです。

 今までは意識をしたことはありませんでしたが、今となってミドルネームが自分達とは違ってないことには疑問を感じました。


「勿論この国の人ならミドルネームは誰でも持っているものだし、世界でもほとんどの人が持っているわ。でも、極たまにミドルネームもファミリーネームもないところがあるのよね。その1つが私達が住んでいたモーファー国。この国では基本魔女や魔法使いしか住んでいなくて、みんなファーストネームだけなの。まあ私達からしたらファーストネームと言う概念はないけどね。私達はそれぞれマリエッタ、リコとそれ以外の名前は無かったわけよ」


 エラを説得させるようにとても饒舌に前公爵夫人は話し始めます。

 エラは確かにそれなら母は魔女だったのだろうと納得せざるを得ませんでした。

 しかし、それでもなかなか実感は湧かないものでした。


「お母さんはどんな人だったんですか? 良ければ教えて欲しいです」


 母は自分が9歳と2桁に満たない時に亡くなってしまったため、エラはあまり覚えていません。

 そのため気になって仕方が無く、前のめりで前公爵夫人に話すよう促しました。

 前公爵夫人は勢いある態度に圧倒されながらも嬉しく思い、質問に答えることにしました。


「リコちゃんは私より6歳歳下の子だったからそこまで接点があったわけではないから詳しく語れないけれど……」


 エラは前公爵夫人がリコちゃんととても親しみを持って言っていたので、もっと親密な関係だと思いましたが、そうではないと聞き少しだけがっかりしました。


「彼女はいつも学年で首席を取っていて優秀だったわ。本当に凄いわよね。私なんていつもトップ10に入れるか入れないかぐらいの瀬戸際だったのに」


 エラは少し聞いただけで前公爵夫人も優秀なのは分かりましたが、まさか母が前公爵夫人よりも優秀なのだと分かり驚いていしまいます。


「そんな彼女の才能を羨んだり、たまには妬んだりする人もいたけど、彼女の優秀さは才能だけで出来たものではないのよ。彼女はとても真面目で努力家だったわ。彼女が首席を取り続けていたのは、分からないことがあった時は先生や先輩、友人に質問したり、何回も繰り返し練習や勉強したりと、コツコツ努力していたからね。私にもたまに質問しに来ていたわ。私はあんなに努力なんて出来なかったもの。本当に尊敬するわね」


 エラの記憶での母は、確かにキビキビと働いていた時もありましたが、いつも朗らかでゆったりとした方が強く印象に残っていたので少し意外に思いました。

 そんな素敵な一面を聞けて嬉しくなります。

 教えてくれたことを前公爵夫人にありがとうございますと深く頭を下げて感謝を述べました。

 前公爵は喜んでくれたようで良かったわと嬉しそうに笑みを浮かべたのでした。


「それにしてもエラちゃんは今何歳なのかしら?」

「16歳です」


 突然新たな質問をされて戸惑いましたが、すぐに返答しました。


「あら、なら貴女を27歳の時に生んだのね。私がヴィオルを生んだ時と同じ歳ね。エラちゃんには姉妹や兄弟はいるのかしら?」

「義理のお姉さんは2人いますけど、血の繋がった姉妹や兄弟はいません」

「あら、なら初産? まあ魔女だから大丈夫だっただろうけど、それでもやはり大変だったでしょうね。」


 この国の女性は基本10代のうちに結婚し、そしてそのまま出産します。

 そのため、20代後半になると高齢出産だと言われているのです。

 前公爵夫人が大丈夫と言いますし、両親も出産が大変だったとは一言も言われた記憶はないので、多分大丈夫だったのでしょうが、この国だとこの歳での出産は珍しいものなのだと実感しました。


「それにしても、誰にも靡かなかったリコちゃんが結婚して子どもを生んでいるとは意外だわ」

「母はそんなにモテていたのですか?」


 そのストレート過ぎる質問に前公爵夫人は思わず笑ってしまいます。

 その質問に前公爵もストレートに返答しました。


「ええ、そりゃモテていたわよ。あの才能と美貌にみんな虜になっていたもの。とても羨ましいわ」

「前公爵夫人だって、凄くモテていたでしょう?」


 エラは才能も美貌も申し分ない前公爵夫人がモテないわけないと思い、思わず尋ねてしまいます。

 前公爵夫人は再びストレート過ぎる質問に再度笑ってしまいましたが、この質問にもストレートに返答することにしました。


「私もまあ5回告白はされたことはあったけど……彼女はその何倍も告白されていたわよね。少なくとも私は彼女が告られているところを10回以上は目撃したわよ」


 母がそこまでモテていたとは思わず驚いていてしまいました。

 そんなにモテていたのにも関わらず、率直に言って顔やスタイルは平凡で突出してものがない父と何故結婚したのかすら疑問に思うほど不思議に思い始めました。


「本当に取り敢えず誰でも付き合えば良いのに、勿体無いと思うほどよ。私は全員付き合ったのに」

「え、全員付き合ったのですか?」

「そりゃ告白されたら嬉しいし、付き合わなかったら勿体無いじゃない? まあ、主人以外はみんな半年以内に別れちゃたけどね」


 前公爵夫人はとても愉快そうに笑いました。

 エラは先ほど、前公爵と前公爵夫人の仲の良さが印象的だったので、前公爵夫人が過去に何度も付き合ったことがあるのは大変意外に思い、驚いていてしまいます。

 それにしても同じ魔女でも、母と前公爵夫人では全く性格が違うのだなと痛感したのでした。


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 前公爵夫人しゅごい( ˘ω˘ )
[一言] まさかのルーツだと(;゜Д゜) そして告られた回数がすげぇ(;゜Д゜) 男を惑わすなんて二重の意味で魔女よ(;゜Д゜)
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