舞踏会の裏側
「何故婚約の話になるんだ? 婚約どころかまだ思いすら伝えてないんだぞ」
「もう期間が無いんだ」
その理由を王子は語り始めました。
舞踏会を開く経緯になったのが、隣国のリンネ国のシャーロット王女との婚約を持ち込まれたのがそもそもの発端だったのです。
昔から、この国オルガ国にだけ存在する狐がおりました。
その狐は国の中では神聖な動物として大事に保護されてきました。
しかし、近年大幅に減少し、このままでは狐が絶滅するのでないかと国としても大変困っておりました。
そのためその原因を調べると、隣国が最近その狐を密猟をしており、とても高く取引がされていたのです。
更にもっと調べると、自分の国だけでなく他の国でも密猟をして珍しい生物の取引が行われていたのでした。
王は隣国の王女と結婚してこの騒動を止めさせるよう命じましたが、王子はそんな残酷なことを見過ごしている国の人とは結婚出来ないと王の命令を突っぱねてしまいました。
王子もそろそろ21歳と良い歳なのでさっさと結婚させたい王は舞踏会を開いて自分で妃を見つけるよう命じたのでした。
新聞では王子は運命の相手を見つけたいがために王の命令に逆らい舞踏会を開いたと言うガゼネタが広まり、王子はそんな相手見つかるわけないだろうと呆れながら仕方なく舞踏会に参加することとなりました。
嫌々参加した舞踏会でしたが、なんと妃にしたいと思う人が現れ、彼女を正妃にしようと思いました。
しかし、舞踏会の終わった次の日、王子には予想だにしなかったことが会議されていました。
なんと、正妃だけでなく側妃の話題まで出たからです。
王は側妃など1人も持たず母の王妃だけですし、伯父であるヴィオルの父、前ハワード公爵も側妻はおらず魔女である正妻1人でした。
しかし、多くの貴族達は自分達の娘を妃にして王族と強く繋がりが欲しいと側妃でも良いから何とかして王子と結婚させたいと考えていました。
そのため、少なくとも踊った相手なら見込みはあるだろうと踊った相手全員を妃候補として王宮に住まわすことを王や王子の許可無しに勝手に可決してしまったのでした。
貴族が可決したものには王や王子でも簡単にひっくり返すことは出来ません。
こうなれば、多くの令嬢達と相手をしなくてはならないので面倒なことになったと頭を抱えている中、他にもっと大変なことに気づいてしまったのです。
それはエラ嬢が妃候補に入ってしまうと言うこと。
実は王子は舞踏会の会場に入った時、自身もヴィオルほどではありませんが、魔力は持っているため、すぐにヴィオルの魔法に気づきヴィオルが女装していることに気づきました。
その時はあまりにもヴィオルの女装が完璧だったので笑いを堪えるのに必死でしたが、隣にヴィオルと仲良さそうに笑っている可愛らしい令嬢を見かけました。
王子はヴィオルが今まで女を連れて一緒にいるところなんて見たことは1度もなかったのでこれは彼女と特別な間柄なのだろうと確信しました。
そのため2人の楽しい時間を邪魔するつもりはありませんでした。
王子は舞踏会が始まるとすぐさま本命を見つけたものの、本命以外も相手をしないわけにもいかないので適当に相手を誘いながら踊っていたのでした。
そろそろ令嬢達と相手するのが退屈になった時、ヴィオルが連れて来た令嬢が1人で佇んでいるのを見かけました。
ヴィオルを探すとどうやら他の令嬢達に囲まれて大変そうです。
でも今ならヴィオルとどう言う関係なのか聞き出せるだろうと彼女に近づいたのでした。
彼女は王子目的で舞踏会に来たわけでない少し変わった女性でしたが、素直で可愛い人だと感じました。
本当はもっとヴィオルに関しての情報を聞き出そうとしたのですが、思わぬ方向へ会話が進んだため、取り敢えず話題を変えて、踊っている際中に話を聞き出そうと思いました。
そうやって彼女を踊りに誘ったのですが、彼女はとてもダンスに集中しておりとても話を聞き出せる状況ではなく、もう一度踊って情報を聞き出そうとしました。
しかし、彼女はダンスの誘いを断り、ヴィオルを連れ、慌てて帰ってしまいました。
王子は驚いたものの、ヴィオルとの間を邪魔するなと言うことだろうと解釈し、舞踏会を嫌々再開したのでした。
「俺はヴィオルが好きな子を奪い取りたいとは微塵も考えていないさ。俺達親友みたいなもんだろ? 親友の恋は応援したいものよ」
ヴィオルは王子とは何処まで言っても下の立場なので、親友のように思ってくれたことを嬉しく思いました。
「あぁ、忘れてた。これエラ嬢の忘れ物。それにしてもよくこんな綺麗なガラスの靴を作ったな。デザインは前持って考えていたのか?」
王子はヴィオルにガラスの靴を渡して質問します。
「いや、その場で思いついたデザインでその靴を作った」
ヴィオルは王子からガラスの靴を丁寧に受け取り、魔法を使ってしまいました。
「凄いな! やっぱヴィオルはセンスあるよ。エラ嬢のドレスも良かったし」
ヴィオルは王子に褒められ、大変嬉しくなりました。
「ところでヴィオル、今のままだとエラ嬢は間違いなく少なくとも2年ほどはここに拘束されるだろうな。勿論、その間にヴィオルと付き合うことも結婚することも出来やしない。どうしたら良いかは明らかだろう?」
「エラと婚約することで、彼女を妃候補から外すってことか?」
王子は思いっ切り首を縦に振ります。
「取り敢えず、妃候補は全員1ヶ月後にこの王宮の生活を始めるんだ。だからそれより前になんとかしてくれ」
王子は心の底から懇願しているようでした。




