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愛があれば大丈夫!

Sideコニー

いよいよその日がやってきた。

今日は王子様の婚約者である、隣国の姫が城へ到着する日である。王子様は朝から何度も気を失ってはばあやさんに叩き起こされていた。おかげで王子様はすでにぐったり気味で、婚約者に会う前からなにやら死にそうになっていた。

 そしてコニーはというと。お姫様という人を見るのは生まれて初めてである。なのでお姫様見物をしようと、朝から城門付近の茂みのあたりで待っていた。長期戦になることを考えて、お城の厨房にお弁当まで作ってもらう念の入れようである。兄も来たがったのだが、卒倒しそうな王子様の励まし要員に入れられてしまい、今は懸命に王子様を励ましている最中であろう。

「ポチ、お姫様ってやっぱり金髪に青い目かなぁ」

「うむ、きっと髪の毛がくるくるに巻いてあるのである」

「それでふわっふわのピンクのドレスを着ているんだよね」

コニーとポチは、果たして本物のお姫様は、絵本に描いてあるお姫様みたいなお姫様なのか、という検証をしようというのである。

 城内で聞き込みをしても、お姫様の容姿についての情報がいまいち要領を得ず、あいまいであったことも、コニーとポチの好奇心を煽る原因になっていた。

 そしてそんなことを延々と話していたコニーとポチの会話は、特に小声にすることもなかったため、城門に整列してお姫様ご一行の到着を今か今かと待っている兵士たちにも丸聞こえであった。ポチの声は聞こえずとも、思わず笑ってしまう会話であったが、兵士たちの間にもコニーとポチのお姫様イメージが伝染していき、くるくるパーマな金髪に青い目でピンクのふわふわドレスを着ているお姫様がつぎつぎと兵士たちの脳内に踊っていくのであった。



そしていよいよお姫様がやってきた。

 コニーとポチがお弁当を食べてウトウトしていると、突然ラッパが鳴り響いた。驚いて目を覚ますと、兵士のみんなも少々ざわざわとしている。コニーとポチが茂みから顔を出してキョロキョロしていると、城門の向こうに白馬にひかれた白い馬車が見えた。いかにもお姫様っぽい乗り物である。もっと近くで見たくなり、コニーとポチは整列している兵士の間にこっそり紛れ込んだ。こっそりといっても大人の兵士に子供と黒い犬っぽい生き物が混じればすごく目立つのであるが、みんな見て見ぬフリをしてくれた。

 そうしてゴトゴトと白馬に引かれた馬車は城門の中へとやってきた。そうしてコニーとポチの目の前で止まった。兵士のおじさんの背後に隠れつつも、そうっと顔を覗かせるコニーとポチ。

 すると。

「ようやく到着したのかの?」

「さようでございます姫様」

馬車から若い男女が降りてきた。

 ・・・もう少々詳しく言うならば、従者らしき男性と、コニーよりも小さな少女がそこにはいた。くるくるに巻いた金髪に青い目で、ピンクのふわふわのドレスを着た少女が。

「お姫様、ってあの子かなぁ?」

コニーが疑問系になるのは仕方が無い。もっと大人だと思っていたのだ。

「うむ、くるくるな金髪に青い目の、ピンクのふわふわドレスである」

まさに絵本の中のお姫様、お姫様の見本のような姿。しかし、小さい。たぶんコニーよりも年下である。

「王子様の結婚相手だよね?」

「うむ、これが噂に聞く歳の差かっぷるというやつである」

コニーとポチがそんなことを話していると、当のお姫様と目が合った。

「おお!黒い犬がおるぞ!」


Sideポチ

衝撃の事実、王子様の結婚相手は幼い少女であった。しかも、ポチのことを犬だと思っていた。しかしすぐに、従者の青年に訂正されていた。

「姫様あれは長毛種竜の子供ですから犬ではありませんよ。そのような頭が悪いと思われそうなことを発言しないでください」

「おお竜か!竜の子供は初めて見るのじゃ!」

少々口が悪い従者の発言をさらっと無視するお姫様。いつものことで慣れているのかも知れない。

 それからポチに乗ってみたいと言われ、従者の青年からも丁寧にお願いされてしまったポチは、お姫様を背中に乗せて城を歩くことになった。子供を乗せるのは村でよくやることであるのでかまわないのだが、できれば背中の羽の毛をむしるのは止めて欲しい。ハゲたらどうしてくれるのだ。

 そうして、王子様が待っている部屋へと向かった。部屋の前にはコニーの兄がいた。

「にーちゃーん!」

コニーはピートの元へと走って行ったが、お姫様を乗せているポチは着いていくわけにはいかない。コニーとピートが言葉を交わすと、ピートが腹を抱えて笑い出した。ひーひーと苦しげな声が聞こえてくるほどの大笑いである。

「あの者はなにゆえ笑っておるのじゃ?」

「何か彼にとって面白い出来事があったからだと思われます」

ポチの背中でそのようなやり取りが成されていた。

「ひー、ぐはっ、えー、ようこそ。王子様は中にいらっしゃいます」

ピートは出迎え役だったらしい。無理やり笑いを飲み込んで、なんとか挨拶らしきものをした。

「おお、そうか」

お姫様はそこでようやくポチの背中から降りた。

「竜の子よ、感謝する。この羽根は宝物にするとしよう!」

にっこり笑顔のお姫様。なんと、お姫様に背中の羽根を五枚もむしられていた。あとでコニーにハゲていないか確かめてもらおう。

「あのひとロリコンか!あー笑えるー、ひー」

ピートはまだ笑っていた。


Sideコニー

いよいよ王子様とお姫様の対面である。

 とっても広い部屋の、端と端に王子様とお姫様は立っていた。王子様の会話適正距離の五メートルである。

「殿下!」

お姫様が王子様に声をかけるも、王子様がもじもじしている。とてもではないが会話にならない。

 そこで!コニーが考案した道具の出番である。

「お姫様、このコップを持ってー」

「これは何なのじゃ?」

コニーがお姫様に渡したのは、紐がついたコップであった。そして紐の長さは五メートル。

「あのねー、離れていても会話が出来る道具なの。俺とポチで魔力を込めるからねー」

お姫様が持っているものと、同じものを王子様が持っている。

 そう、これがコニーが出した答えであった。近くで会話ができないのならば、遠くでも会話ができればいいじゃないか作戦である。今まで誰も気付かなかった発想の転換である。以前ポチとの会話で使った道具を改良したものである。魔力で会話を伝達させるので、魔力のない王子様とお姫様の代わりに、コニーとポチで魔力を込めるのだ。王子様の持つコップには、ポチが魔力を込めている。

「おお、声が聞こえる!これが殿下の声なのか?」

こうして王子様とお姫様は、初めて直接会話をしたのである。

 これでミッションクリアーだ。



この後王子様とお姫様がどうなったかというと?

「愛さえあれば大丈夫なんだよ!かーちゃんが言ってた!」

「羽にハゲができたのである・・・」

「もう少し大人になればいいんだよね、今はロリコンだって」

幸せに暮らした・・・のかな?

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