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第十一章 第五話 想定外の進行

 踊り終えるとパーティー終了の時間が近づく。


「此度は忙しい中、我が息子デーヴィッドの帰還祭に集まり下さり、誠にありがとうございます。主催者として喜び申し上げます。楽しいひと時でしたが、時間が来ました。お客様方は気をつけてお帰りください」


 父さんが締めの挨拶をする。


 招待客は自分の荷物を持って城から出ようとしたが、その瞬間勢いよく扉が開かれた。


 扉の前にはゾム兵士長が立っている。


「どうした騒々しい」


「申し上げます。セプテム大陸の魔物がこの大陸に到着いたしました。今お客様方を帰されるのは危険です」


「何だと!」


 ゾム兵士長の言葉に父さんは驚く。


 それは俺も同じだった。


 彼の予想よりも二日も早い。


 招待客の貴族たちはゾム兵士長の言葉に動揺して不安を口にする。


「貴族の皆さん、ご安心ください。我が息子デーヴィッドはこの城に帰還する前に三千の魔物と戦い、全滅させることに成功しております。ですので、皆さんは安心してくださって構いません」


 父さんの言葉に俺は耳を疑う。


 確かにカムラン平原やキャメロット城で多くの魔物と戦った。


 だが、話を盛りすぎている。


 さすがに三千もの魔物を討伐した経験はない。


 おそらくだが、父さんは貴族たちを安心させるために嘘を吐いているのだろう。


「やってくれるよな。デーヴィッド」


「もちろんだ。最初からそのつもりでいた」


 予定よりも早くて動揺したが、計算はあくまで目安に過ぎない。


 早く訪れることも考慮しなければならなかった。


 だが、早くてもやることは同じであることには変わらない。


 俺は貴族の皆さんを安心させるためにも堂々とした佇まいで父さんに答える。


「皆さん安心してください。魔物は俺と仲間で倒してみせます」


「デーヴィッド王子、こちらです」


 扉の前に行くとゾム兵士長が案内役を務めてくれる。


「待たぬかデーヴィッドよ!余たちも忘れては困るぞ」


 敵が現れたことを聞き、レイラたちが集まる。


「だけどその格好では動き辛いだろう。一度着替えてのからのほうが」


「確かに慣れない服装で動きにくいかもしれないが、あたいはこれでもやれる。どうせ戦闘中にドレスは破けてしまうんだ。どうせ動きやすくなるのなら、時間を節約したほうがいいだろう」


 彼女らしい考えだ。


 俺はカレンとエミに視線を向ける。


 二人は無言で頷いた。


「アリスは母さんの傍にいてくれ」


「でも!」


「安心しろ、軽く追い払って帰ってくるから」


 俺は言葉を慎重に選びアリスに母を頼む。


 エミの話だと、この世には死亡フラグというものが存在するらしい。


 何気ない一言でも、それが引き金になって死んでしまうという恐ろしいものだ。


 その言葉を口にすると、高確率で死んでしまうという。


 フラグをへし折るのは奇跡に近いらしく。


 死亡フラグを口にしたら命はないものだと思っておかなければならない。


 実際、死亡フラグではないが、エミが西の洞窟で注意を促した際に、彼女自身がクシャミをしてフラグを回収してしまった不名誉な実績がある。


 迷信だと言って簡単には切り捨てることはできない。


 信じる者は救われるという言葉があるように、信憑性に欠けても時には信じなければならないことだってこの世にはある。


「分かりました。デーヴィッドお兄ちゃんたちを信じます」


「ありがとう。行ってくる」


 アリスに背を向けるとすぐに魔物の到着位置に向かう。


 敵が現れたのは、予想どおり海岸地帯だった。


「敵の数は何体か把握はしているのか?」


「具体的な数は分かりませんが、およそ千から三千程だと思われます」


 ゾム兵士長の言葉に俺は顔を引きつかせる。


 数が多すぎる。


 本当に魔物が軍団として押し寄せてきた。


「敵の種類は?」


「それが、見張っていた兵士によりますと、正体不明らしいのです」


「正体不明?」


「はい、顔はオーガに近いのですが、体格はゴブリンと同じぐらいの小ぶりです。ですが、このような魔物は今まで見たことも聞いたこともありません」


「おそらく小鬼と呼ばれるものであろうな」


 レイラが魔物の正体と思われる言葉を言うと俺は彼女に注目する。


「小鬼?」


「そうだ。前に一度セプテム大陸の魔王と会見した際に見たことがある。やつは特殊でな。余が知らぬ魔物を平然と生み出すことができる。西の洞窟で戦ったヘラクレス、やつも余はまったく知らぬ魔物であった」


 レイラの説明を聞き、俺は唾を飲み込む。


 彼女の言葉どおりであるとするならば、海岸にいる魔物の殆どが未知の生物である可能性が高い。


 敵がどんな種類であろうとも、ここで食い止めなければこの大陸に甚大な被害をもたらすことには変わらない。


 一体でも多くの魔物を排除して、王都を守らなければ。


 夜の遅い時間だからか、周囲が暗い。


(まじな)いを用いて我が契約せしジャック・オー・ランタンに命じる。その力の一部を我に貸し、言霊により我の発するものを実現せよファイヤーボール」


 少し大きめのファイヤーボールを生み出し、周囲を明るく照らす。


 これで足元にあるものに気づかないで転んでしまうリスクを減らせるだろう。


 全力で走り、海岸に辿り着く。


 ゾム兵士長の言ったとおりに、海岸は見たことのない魔物が陣取っていた。


 見張りの兵士が事前に用意してくれていたのか、海岸のあらゆる場所に火が灯っているお陰で周囲の状況を把握することができる。


「あのゴブリンとオーガを足して二で割った感じの魔物が小鬼なのか」


 確認のために俺はレイラに聞く。


「そうだ。間違いない小鬼だ。その奥にいるオーガぐらいの大きさの魔物たちは知らないが、小鬼だけは見間違いようがない」


 数多くいる魔物が小鬼であることをレイラから知らされると、俺はやつらの奥にいる魔物を見る。


 オーガのように体格は良いが、大きい角や棍棒を持っている。口からは牙が生え、目つきは鋭い。


 俺たちに気づいたのか、小鬼たちは俺たちに一斉に襲いかかってきた。


 今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。


 誤字脱字や文章的に可笑しな箇所などがありましたら、教えていただけると助かります。


 今回の話で第十一章は終わりです。


 明日は第十一章のあらすじを投稿予定なので、楽しみにしていただけたら幸いです。


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