☆第十章のあらすじ☆
今日この手記に書くのは、王都オルレアンに着いたころの話しだ。
王都に着き、城下町を歩いていた俺たちは、町の住民たちが俺たちを見てひそひそと話しているのが見えた。
そんなに変な服装だっただろうか?
当初の俺は服を確認しつつ、匂いまで嗅いだ。
うん、どこもおかしくはない。
だけど少し体臭がするのは事実だった。
まさか、俺の匂いってあそこまで漂うほど臭いのか!
確かに自分の体臭は、毎日自然に嗅いでいるせいで鼻が麻痺している。
人間自分の匂いには鈍感なのだ。
だけど信じてくれ!
俺はそんなに臭くないからな!
この事実を確認するためにカレンに匂いを嗅いでもらいたい。
だけどそのようなことをすれば、きっとカレンから変態と罵られそうだ。
聞くに聞けない状況の中、俺たちは城に向けて歩く。
そのとき、突然城の兵士たちが俺たちの前に現れると、俺を城に連行すると言い出した。
待て、それはいくらなんでも酷すぎないか!
匂いがきついからって、豚小屋送りとかあんまりだ!
カレンが俺の名前を言うと、兵士たちは驚き、なおさら連れていかなければならないと言い出す。
ちょっと待ってくれ、どうして俺の名前が出たら余計にそうなる!
まさか俺の姿と名前を騙った人物が、城下町で悪さでもしたのか!
それで俺はこんな目に遭うことになったって言うのかよ!
俺じゃない!俺は無実だ!
みんなは理由もなしに俺を城に連れて行くことに対して、納得がいなかったようで、兵士たちに抗議をする。
しかし、兵士たちは業務執行妨害として皆まで捕まえると脅しにかかってきた。
こうなれば仕方がない。
俺は両手を上げて降参の意識を示し、大人しく城に着いて行くことにした。
俺はこれから出所するまで、牢獄での暮らしをすることなるのだろうか?
不安に駆られながら案内されたのは謁見の間だった。
兵士長のゾムによると、俺はこれから王様に会うことになっているらしい。
その事実を知り、当時の俺は安心した。
俺の体臭が臭い罪で捕まったのではないことに。
なんだよ、びっくりさせるなよ!
そうだよな!俺がそんなに臭いわけがないよな。
俺は頭を垂れてこの国の王が来るのを待つ。
しばらくすると王様が訪れ、頭を上げる許可をくれた。
よかった。「くるしゅうない、おもてを下げよ」と言われなくて。
逆だったらずっと頭を下げないといけなかった。
俺は思いきって頭を上げる。
なんと!王様は俺にそっくりだった。
詳しく言うのであれば、俺がそのまま歳をとった姿と言える。
俺と同じ顔の王様に俺は驚かされた。
しかし、これは単なる序章にすぎなかった。
これから先、俺は驚きの連続で、まるで夢を見ているのではないかと錯覚しそうになる。
俺が驚いていると扉が開いてお妃様がやって来た。
王様とお妃様が俺を尋問という名の質問をしてくる。
王様からは、名前、年齢を聞かれ、お妃様は俺が多重契約者であることを見破られる。
俺はお妃様に見破られ、動揺せずにはいられなかった。
ど、ど、どうして俺が多重契約者であることを知っている!
しかも、俺の契約している精霊を一体ずつ名前を言い、全て当ててきたのだ。
失礼ながらも、俺はどうして知っているのかをお妃様に尋ねる。
すると、お妃様は俺の契約している精霊が見えていると言う。
その証拠に、ウンディーネとノームの容姿をピタリと当ててきた。
な、何でだよ!どうしてお妃様には見えるんだよ!
人間の身体のつくりからして、精霊の姿を見ることができないのは確かだ。
考えろ!考えるのだ!これには何かのトリックがあるはず。
俺はひたすら考えた。
するとある答えに行き当たる。
信じられないが、これなら納得するしかない。
俺はお妃様に「あなたは精霊ですね」と尋ねる。
読みはあたり、お妃様は自分が精霊だと答えた。
これらの質問で国王夫妻は俺の何かを知り、納得した様子だったが、最後にとある質問をされる。
それが更に、俺を動揺させる引き金になるとは思わなかった。
お妃様は、俺のぷりぷりの尻にホクロが六つあり、それを線で繋げばハート型になると、断定したかたちで聞いてきた。
ビンゴ―!正解だー!
っておい!どうしてお妃様がそんなことを知っている!
これは家族にしか知らない秘密なのだぞ!
って、思わず勢いで書いたから、これを読んでいるあなたにも知られてしまった!
もう消すことができないっていうのに!
いい?このことは秘密だからな!
絶対に他の人には言うなよ!
絶対だからな!けしてフリではないからな!
とまぁ、この辺にしておいて。
どうして知っているのだろうか?
もしかして俺のストーカー!
知らない間に俺の裸を見られていたっていうのかよ!
……そんなわけないか。
どうしてそんなことを知っているのかを尋ねると、王様は俺が彼の息子であり、十六年前に生き別れることになったと告げる。
何だって!
おそらく、今回の一番の驚きポイントだっただろう。
まさか、俺が王都オルレアンの王子だとは到底思えない。
これはきっと俺を驚せようとしている。
きっと扉の先に『ドッキリ大成功!』という看板を持ったゾム兵士長が待ち構えているに違いない。
俺は騙されないからな。
そう思っていたが、王様はどうして俺が国王の子どもだと言い切れるのかを説明する。
俺が王族の血を引いているという決定打になったのは、俺が一度だけ精神世界で精霊と会話をしたことがあるということだった。
普通の人間では、どう逆立ちしても、声も姿も見ることができない。
例え、精霊のほうから呼びかけたとしても。
しかし俺はそれができた。
俺は人間と精霊の間に生まれた半人半霊であるからこそ、可能となったのだ。
実感はないが、どうやら本当に俺はこの国の王子らしい。
え!羨ましいって?
羨ましがるな。
城で暮らして思ったが、庶民が自由で居心地がいいということに気づいた。
機会があれば書こうと思うが、どうやら父さんである王様とは馬が合わないようだ。
何度も言い合いをするし、俺がセプテム大陸の魔王を倒さなければならないと言い出すと、城から出させてくれない。
まぁ、最終的には父さんと決闘をして、父さんの息子(隠語)を攻撃して強引にも約束を守らせたから、今は城の外に出ることができるのだけどね。
話を戻すが、俺がどうしてドンブラコ、ドンブラコと川に流されていたのか、その経緯を尋ねる。
話が長くなるので手短に書くと。
父さんの弟が盗賊を使って反乱を起こした。
父さんは叔父と戦い、母さんは俺を抱えて逃げていたが、後ろから刺されて俺は崖の下に落ちた。
だけど運が良いことに俺が落ちたのは川の上で、命が助かったけどそのまま流されて行方不明となったわけだ。
俺がこの国の王子だと証明されると、城下町には俺の噂が広まったらしい。
父さんに部屋を案内してもらい、部屋の扉を開ける。
そこに広がる光景に、俺は目を疑った。
何せ部屋の中にはベビーベッドに可愛らしい人形、揺り籠などが置かれていたのだ。
おい!こんな部屋でこれから寝泊まりをしろと言うのか!
これは何かの罰ゲームですか!
親を心配させた罰なのですか!
謝ります。だから普通の部屋にしてください。
こんな部屋にいたら幼児化しそうだ。
ぼくデーヴィッド三才。
考えただけで気分が悪くなる。
どうやら罰ゲームではなく、ただ単に昔の部屋をそのままにしていただけらしい。
俺は安堵した。
すぐに年相応のものに変えてもらえるらしく、しばらくして侍従たちが部屋の模様替えを始めてくれた。
俺はゾム兵士長に頼み、皆を呼んでもらう。
皆が来てもらうまでの間、俺は不安だった。
カレンたちが来る前に、この部屋を普通の部屋にしてもらえるかを。
可愛らしい人形ならまだ許せる。
だけど、オマルや哺乳瓶、涎かけがそのままだったら俺は社会的に死ぬことになる。
結果はギリギリセームだった。
彼女たちが来るころには普通の男の部屋だったのだ。
あとで気づいたのだが、ベッドの下にはエッチな本がそっと置かれていた。
年相応ってそういう意味じゃないよね!
まぁ、せっかく用意してくれたんだし、夜にこっそりと見せてもらったけどね。
部屋にカレンたちが来ると一斉に声をかけてきた。
皆が思い思いに言うが、何ひとつ聞きとれない。
そんなとき、父さんが部屋に現れ、俺の生還を祝うパーティーを一週間後にすることを告げる。
あのパーティーも色々とあったけど楽しかったなぁ。
エミと喧嘩したけど仲直りができたし。
まぁ、この話も機会があったときにでも、この手記に書いておこう。
カレンたちは客人としてもてなされることになり、一緒に食事をした。
王族の料理はとても美味しく、肉は柔らかくて口の中に入れた瞬間に溶けるほどだった。
食事の最中にエミが夕食のメニューや使われている食材などの言い当て、父さんは彼女を気に入ってしまった。
そしてエミを貴族にさせ、俺と婚約をさせようと言い出す始末。
ちょっと待て!どうしてエミなんだよ。
そう叫びたかったが、もし声に出していたのなら俺はエミから半殺しにされていただろう。
しかも知られざる負の生命の精霊の力を使い、少しずつ苦しませるにちがいない。
これも機会があれば書こうと思うが、エミは本当に強くなりすぎた。
この世界には存在しない石化魔法を生み出したのだ。
魔法は契約している精霊に、なるべく具体的な指示を送らないといけない。
ただ漠然と相手を石にしろと言ってもむりだ。
だけどそれすらもエミは具体的に精霊に指示をだし、相手を動けなくさせたのだ。
俺は後方から殴られて、その瞬間を見逃してしまったけどな。
今の彼女に勝負を挑んでも勝てる気がしない。
口に出してはいないが、俺は心の中でエミのことをデバフの女王と呼んでいる。
やべー!また余計なことを書いてしまった!
これ、エミに読まれたら殺されるやつじゃん!
もし、この先に最後まで書ききることなく終わっていたときは、俺はエミに殺されたと思ってくれ。
エミが気に入られる中、レイラがこの件に関して話に割り込み、自分は王であると父さんに伝える。
しかし、すぐにカレンにネタ晴らしをさせられ、食事の場の雰囲気が一気に変わる。
父さんがこの大陸に魔物が近づいて来ていることを話すと、レイラは事情を話した。
彼女は責任を取って一人で戦うと言ったが、そんなことをさせるわけにはいかないと思った俺は、自分も戦うことを父さんに知らせる。
だけど堅物の父さんはこれに反対した。
親の立場からすれば反対するのは当然なのだろう。
だけど俺は父さんの言うことを聞くわけにはいかない。
どうにかして認めてもらえないかと考えていると、エミが貴族の話を持ち出す。
俺の出陣を認めてくれれば、貴族になる話を前向きに検討するとのことだ。
エミの提案に、父さんは悩む素振りを見せてくれるだろうか?
できることなら一日でもいいから時間をかけて悩んでほしい。
なぜなら、即答すれば俺の命よりもエミが貴族になることが大事ということになる。
それだけは、してほしくない。
しかし、俺の想いも空しく、父さんは即答で俺が戦うことを許可してくれたのだ。
おい!少しぐらいは悩む素振りを見せてくれよ!
その判断は嬉しいけど、息子の立場としては複雑だぞ!
俺に出陣の許可を出すと、親心からくるものなのだろう。
父さんは俺に「命が危ないと思ったら尻尾を巻いて逃げ帰ってくるのだ。本当の敗者は負けた者に対して使うのではなく、戦う意思すら見せないで逃げる人に使う言葉だ」と言った。
その言葉を聞いたアリスが、父さんに「つまり、王様はその敗者さんなのですね」と言ったのだ。
純粋無垢な少女の言葉がクリティカルヒットしたのだろう。
父さんはアリスの言葉に叩きのめされて食堂をあとにする。
その後食事会は終わり、俺は部屋に帰ると今後のことについて考えたのだった。
今日も最後まで呼んでいただき、ありがとうございます。
ブックマーク登録をしてくださった方ありがとうございます。
まさか、目指五十ポイントと言っていた日に、一人登録されて達成できるとは思っておらず、とても驚いています。
本当にありがとうございます。
次は八十ポイントぐらいを目標に頑張っていきます。
明日は第十一章を投稿するのですが、あらすじを読んでいただいたあなただけに、十一章の内容の一部を教えます。
セプテム大陸の魔物の進行を食い止める会議が終わったあと、デーヴィッドはエミを呼び出す。
貴族の件をどうするのかを聞いただけなのに、そこから喧嘩になってしまった!
二人の関係はどうなるのか!
そしてパーティーが始まる中、デーヴィッドは一人の女性に連れられ、部屋に入った瞬間に背中に何かを当てられる。
その物体とは?女性の正体とは!
そしてダンスパーティーが始まり、デーヴィッドは仲間たちとダンスを踊ることに!
デーヴィッドは上手くリードすることができるのか?
そして、パーティー終了時にゾム兵士長が魔物達が現れたことを報告する。
こんな感じの内容になっております。
何話構成になるのかはいつもどおり分かりませんが、楽しみにしていただけたら幸いです。




