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エピローグ

ブックマーク・評価ありがとうございます。

ルーファスが苦情を言いに廊下に出ると、そこには歓欣鼓舞しているティレリアがいた。その横で嬉しそうな執事が「今は何を言っても無駄です」と首を振っていた。



ティレリアへの苦情は後回しにし、ルーファスはティーディアを連れて、ブッファ家に向かった。

一刻も早く、伯爵の承諾が欲しかったからだ。

だが、ブッファ伯爵はまだ帰ってはおらず、応接室で待つことになった。


「前に来た時も思ったが、ブッファ邸は気持ちがいいな」

ルーファスは出されたお茶を一口飲んでから、部屋の中をグルっと見回し、しみじみと呟いた。

「そうですか?」

「うん。空気が・・・いや、空間かな・・・それが綺麗な感じがする。心地良いな」


ルーファスにそう言われて、ティーディアは自分のもはや趣味と化している掃除について、何も伝えていない事に気が付いた。


「あの、ルーファス様。私、ルーファス様に言わなくちゃいけない事が・・・」

「うん?何だろう?」


ルーファスは優しく笑っているが、ティーディアは急に怖くなって中々言えず、モジモジしてしまう。

「私の、趣味みたいな事なのですが。ちょっと、その、普通の令嬢はしないような事で・・・」

「うん?普通の令嬢はしないような事?何だろう?・・・・・狩りとか?・・・は、する令嬢もいるな。ああ、虫を食べるとか?・・・・・も、美容の為と食べる令嬢がいると聞いたな。まさか、あれか。両足を縛って、橋や塔の上から飛び降りる、今流行りの」

「ち、ち、ち、違います!!私・・・掃除が・・」

「掃除?掃除が趣味なのか?・・・・・・そう言えば、初めてティーディア嬢を見た時も、窓ガラスを拭いていたな」

「え?!いつ見たのですか?」


ティーディアが掃除を許されているのは、屋敷の中だけ。それに、人に見られるのも良くないからと、家にお客様などがいない時だけと決められていた。

ルーファスの前で掃除をしていた覚えのないティーディアは、狼狽えた。


「二年前位だろうか・・・ブッファ邸の前を通ったんだ」

ルーファスは、その時はキラキラ邸と呼ばれているブッファ邸の前を、たまたま通りかかった。

噂には聞いていたが、実物を見たのはその時が初めてで、綺麗というより、清々しい空気に思わず立ち止まった。


その時、窓ガラスを磨いている姿が目に入った。

それを見てルーファスは首を捻った。その人物は胸から上しか見えないが、侍女にしては可愛い服を着ている少女だった。ルーファスは少しの間、笑顔でガラスを磨くその様子を見ていた。


その後、そんな事は忘れてしまっていたルーファスだったが、舞踏会の日にカーバシア家で支度を終えたティーディアを見て「あの時、窓を磨いていた子」だと気が付いた。


「手慣れた様子でテキパキと動いていたし、楽しそうにしていたから印象に残っていたんだ」


「そうですか・・・知られていたのですね・・・」

通りに面した窓や、人に見られそうな窓は掃除しないようにしていたのに、見られていた。しかも、ルーファスに。

ティーディアは恥ずかしくなって顔を手で覆った。


「それを気にしていたのか?ティーディア嬢がやりたいなら、私は気にしないよ。カーバシア家に嫁いだ後もしたらいい。この清々しさを家でも味わえるのなら大歓迎だよ」

ルーファスはやんわりとティーディアの顔を覆っている手を剥がし、そのまま優しく握りしめ微笑む。

「私としては、ティーディア嬢が『変人』の妻になる事で迷惑がかかるのではないかと、そっちが気になるな」

「そんな・・・ルーファス様は『変人』をカッコイイと思ってらっしゃるのでしょう。なら、私も気になりません」



そのまま、二人が見つめ合っていると、ブッファ伯爵の帰宅を告げる声が、ドア越しにかかった。




ルーファスは応接室に現れたブッファ伯夫婦に、挨拶もそこそこに「ティーディア嬢との婚姻の許可を頂きたい」と迫った。

ブッファ伯爵は、ルーファスの勢いに驚いたものの、あっさりと頷いた。マリーから話を聞いていたし、ルーファスの釣書もしっかりと読んでいたからだ。




この後半年の婚約期間を経て、ティーディアとルーファスは結婚した。

二人共それほど焦ってはいなかったのだが、一刻も早くティーディアを嫁に欲しいティレリアが介入した為に、こうなった。


その後のブッファ家には慶事が続いた。

サーラとレリアが続けて婚約し、ブッファ家はサーラとその夫が継ぐ事になった。


この出来事のせいで、良縁を願う令嬢や子息、はたまたその親達が、ブッファ家参りをする姿が頻繁に見られるようになった。



― 完 ―

これにて、本編完結になります。


書き始めた時は、一人でもいいから読んでくれる人がいたらいいな、と思っていたのですが、多くの人に読んでいただけてとても嬉しかったです。



最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


天野天晴



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