98: EP6-IM 遠く望む影
──いいか、レイナ。
──俺は...二度とこんなものは使わない。
──...えぇ、そうね、セラフ。
──これは...危険すぎる。
オペレーションシージアース
1日目
西暦3020年12月5日[STC]
協定宇宙時14:10
地球の衛星、月、ルナ・ゲートウェイ・ステーション上空、艦隊交戦宙域から3000キロ
──Side: 三人称視点
「セラフよりレイナへ。 セラフィエル4の展開完了。 それと...セラフィエル7との同期、完了だ。」
『了解。 ランチャーの装填も全て完了よ。 後は...ジャッジメントからの攻撃要請を待機するだけ。』
「レイナ、実戦でこれをデイモス艦に撃ったことはないが...」
『シミュレートでは問題なく撃沈できるよ、セラフ。 ...まぁ、シミュレートはあくまでシミュレート、と言われればそこまでなのだけど。』
「...まぁ問題ないさ。」
閃光を遠くに望む宇宙、そこに一人佇むはオレンジの髪、緑の瞳をした少女の姿をした何かだった
『...スノーから通信ね。 ええと...』
『やほ、元気そうだね、2人とも。』
何の前触れもなく、奇妙なノースリーブの迷彩服をいつも通りに着込んだ人物、スノーから通信が入る
「まぁな、誰かさんの頼みってのもあるし...」
『なんだかんだ君達もアビサルハートとは仲良くしてるよね。』
『特に忌諱する理由もないわ、そうでしょ、スノー?』
ある種の共通の話題を三者三様といった様子でそれぞれが挨拶代わりに放り込む
『まぁ、それもそうだけどさ。 神とは結局上手く付き合うに限るさ。 私は確かに彼女を利用しようとしているが、それは彼女も同じこと。』
『人も神も、まさしく、結局は使いようね。』
「だからって人使いが荒いのはそれはそれで... やめとくかこの話。」
セラフが半ば投げやりに通信越しの2人に投げかける
『...それもそうだね、セラフ。 レイナ、そういえば聞きたかったことがあるんだ。』
『何かしら。』
レイナは一見変わらず、いつも通りの余裕そうなスノーの表情、その瞳の奥に暗い光が宿るのを見逃さず、それでいてあえて平然と聞き返す
『セラフィエル1は今でも稼働状態を維持してるのかい?』
『...』
その問いに、レイナは押し黙る
それを見たスノーが再び口を開く
『セラフィエル1。 状況の制御に失敗した場合の最終手段。 結局、大抵の場合、人々は星々に頼っている。 それを根底から打ち砕く究極の一手。』
「スノー、単刀直入に聞いておく。 まさかセラフィエル1を投入しろって話じゃないだろうな。」
怪訝そうな表情をし、目を細めたセラフがそう問う
『まさか! いくらなんでもそこの惑星を...叩き割ったら何も意味がないさ。 言っただろう、人々は星々に頼っている、と。』
『叩き割らずとも惑星全体を放射線で焼いたら大抵の生物は壊滅的被害を受けるわ、スノー。』
『今更言われずとも知ってるさ。 そもそも、私の...いや、私達のルーツはそこから来ているんだから。』
やけに座った眼をしたスノーがそう返す
『2099年、ね。 いえ、2100年だったかしら? もうずっと前の事すぎて曖昧になってきたね。』
「そもそも2060年が懐かしい。 あの後40年そこらで...」
セラフが過去を懐かしむように、目線をどこでもない宙へと泳がせる
『というかスノー、ここの歴史は読んだけれども...』
『あ、バレた?』
『バレたも何も... 途中まで完全に同じじゃないか。』
『否定はしない。 大東亜戦争は我が国の戦略的勝利で終わったし、欧州は癒えぬ戦火の傷跡に喘いだ。 世界は太平洋を境に東西に分かれ...』
『そして、長きの対立の果てに人々は星々の海へと泳ぎ出した。』
『だが、最後には... 結局人は、争いからは逃げられないんだ。 雨夜の玲奈、それはよく知っているだろう?』
あえて大仰に首を傾げ、スノーが問う
『そうだね、綴る者、雪。 』
ゆっくりと、レイナが告げた
一瞬の静寂
それを破るように、オレンジの髪を揺らし、セラフが口を開く
「なぁ、歓談中のところ悪いんだが... 仕事に戻っていいか? セラフィエルシステムの最終調整をしたいんだが。」
若干の呆れを含んだその抗議に、スノーがいつも通りの飄々とした表情に戻り、口を開く
『あぁ、悪い悪い。 これから大詰めってところを邪魔して悪かった... それじゃ、手筈通り頼むよ、2人とも...』
「全く、いつもそうだな、スノー...」
『仕方ないわ、セラフ。 それじゃあね、スノー。』
『あぁ。』
スノーが短く言い残し、通信が切れる
少しの間の後、セラフが徐に口を開く
「なぁ、レイナ。 いや、玲奈博士。」
『...なんだい?』
「昔のことを思い出したのなんて、いつ以来だろうな?」
小さく首を傾げるセラフに、レイナは短く言葉を紡ぐ
『さぁ、覚えてないや。』
ただ、それだけを




