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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP6 『オペレーションシージアース』

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96/129

96: EP6-3 オペレーションシージアース: 始動

ブラック君、上級執行役員会へ通達。

クラスB-αの発動を許可する。

目標、デイモス艦隊。


私達が始めた事は、この手で終わらせる。


...頼んだよ、パーシヴァル・ジャッジメント。

CAU海軍統合艦隊/シルバースピア艦隊

オペレーションシージアース

1日目

西暦3020年12月5日[STC]

協定宇宙時(STC)13:55

地球の衛星、月から2000万km



最後の戦いは始動する

この争いに、終止符を打たねばならない



──Side: 三人称視点



『了解、セラフィエル4、Dトルピードプラットフォームを展開するわ。』

「頼む、レイナ。 この戦いには...デイモス艦隊の出撃が予測される。 サイラスが言うには、ジャッジメント本部がクラスB-αの戦力投射を許可したそうだ。」

『...クラスB-α?』

「ん? あぁ、そうか。 まだレイナは知らなかったな...」


自身の愛機、マリエルの中でシオンハートは腰まである長い黒髪の女性──CAU本国のバーラウンジ、熾天使の絆の店主、セラフと何らかの関係のあるらしいレイナと通信越しに会話していた

それは何? といった口調のレイナに、シオンハートが一瞬不思議に思った後、合点がいったように頷く


「クラスB-α(ビータックアルファ)、今までの本部護衛艦隊の一部投入を意味するクラスB戦力投射の派生形だ。 ついこの前、本部護衛艦隊のうちの一部を新型術式空母(マナテックキャリア)ホーライを中心とした機動艦隊として再編したんだ。」

『なるほど、把握したよ。 ...じゃ、セラフに連絡しておくわ、アビサルハート。』

「...私はシオンハートだ、レイナ。」


シオンハートが一瞬の間の後に返答する


『...そうだったわね、いつもの癖で。』

「今は忙しい... また後でな。」

『分かったよ、シオンハート。 それじゃ。』

「あぁ。」


通信を映していたモニタが暗転する

ほんの一瞬の間を置いて、再びモニタに通信が映る

今度はアマテラスのブリッヂからの全体通信のようだ


『アマテラスより全ユニット、本艦隊はジャンプ準備が完了した。 STC14:00に本艦がコンジットフィールドを展開する。 全ジャンプドライブ艦はリンク済みのアマテラスのナビゲーションシステムにアクセス、フォーメーションを維持したままジャンプせよ。 全艦のジャンプ後、アマテラスも続けてジャンプする。』


それを見たシオンハートが呟く


「...いよいよか。 クロノスは... どうせ出てくるんだろうな。」


いつか見た銀髪の天使の顔を思い出し、少しだけ憂鬱な気分に浸るシオンハートだった






STC13:59

地球の衛星、月地表、ルナ・ゲートウェイ・ステーション

司令室



「レライエ、偵察隊からの緊急報告だ! こちらから2000万キロの宙域にCAU艦隊が確認された、ほぼ全軍規模だ!」

「なっ... 何故今まで気づかなかった! いや、そんなことはどうでもいい、やはり嗅ぎつけられていたか。 アネッタが消息を絶った時点で分かってはいたが...」

「そうだな、この際御託はいい。 レライエ、こちらはすぐに全てのバトルワーカーをいつでも上げれるように準備する。 ジャンプドライブジャマーもワープドライブジャマーも健在な以上、準備する猶予はまだある。」

「頼んだ、オロバス... こちらも全ての艦隊を動かせるようにする。 ここが最後の決戦だな... ジャッジメントの犬め。」


ルナ・ゲートウェイ・ステーションの司令室、ESF艦隊の司令官たるレライエ少将は部屋に駆け込んできたその人物、部下であり、バトルワーカー部隊の司令官であるオロバスに対応していた


「待て、レライエ... 全て、だと?」


レライエの言葉に何か引っ掛かるところを覚えたオロバスがそう問う


「あぁ。 隠し玉も投入する他ない。」

「早まるな... そんなことをすれば本部の介入を招くハメになる。 ただでさえ向こうはあの... ライブラを投入許可しているんだ。 本気度が違うんだぞ。」

「そんなことは百も承知。 だが、こちらの保有戦力は推測されるCAU戦力と比べれば心もとないのも事実だ。 結局何なのかは分からず終いだったが、何らかの超級戦力の情報もある。」


レライエが苦々しい顔をしつつもそう答える


「...巻き添えだけは勘弁だからな、レライエ。 ...今は置いておこう、ともかく、準備を...」


オロバスがそう言い残し、部屋を出ようとした時、まさに部屋の時計がSTC14:00を指したその瞬間


『ゲートウェイCICよりレライエ司令へ! 艦隊直近に大規模なジャンプ兆候を察知! ...ジャマーを突破されます!』


部屋の通信端末がレライエの応答を待つことなく起動し、向こう側の相手がそう告げる


「んな... あり得ない! ここのジャマーは特に...」


驚きを隠せないレライエがそう言いかけた直後、ルナ・ゲートウェイ・ステーション上空に浮かぶ艦隊から更に月から離れる方向に約50キロの空間、そこが大きく歪んだかのように見え...


『ジャンプ反応! CAUのジャンプドライブのシグナルと一致! 敵艦隊、来ます!』


レライエが次の言葉を発する前に、それは現れた






STC14:00

ルナ・ゲートウェイ・ステーション上空



『全艦ジャンプアウト! 誤差5キロ、グッドジャンプ、グッドジャンプ!』

『アマテラスより全ユニット司令官へ! 事前の通告通り戦闘を開始せよ! ブリッヂよりCIC、リアクター、シージモード起動!』


アマテラスを中心とするCAU海軍連合艦隊が戦闘を開始する

目標はただ1つ、戦闘準備の整っていないESF艦隊だ


『スピアヘッド各艦へ、高速巡行機動を維持せよ! 海王星の御礼参りだ!』

『スピアハンドル全隊、スピアヘッド各艦の突撃を支援する。 カエデ、厄介な連中は任せろ。』

『スピアヒルト準備完了、カエデ、我々も共に往こう! バトルワーカーは敵艦隊に接敵後出撃! 連中を月に叩き落してやれ!』


連合艦隊の一角、纏まってジャンプアウトしたセイバー艦隊(シルバースピア)もそれぞれ行動を開始する

そのコールサイン通りに、彼らは1つの槍としてESF艦隊に突き刺さろうというのだ


『バトルワーカー各隊、こちらシオンハート。 敵陣に突き刺さり次第、我らは動く。 ここを抜けるかどうかが我らの未来を決める。 抜かりなくやるぞ。』

『長距離狙撃、及び砲撃隊は各自甲板へ展開開始! 自身の判断で射程内の敵を攻撃開始!』

『エンスウェン、高脅威目標を走査してくれ。 ネイヴィガーの本領発揮と行こう。』


バトルワーカー隊も出撃の時を今か今かと待ち、備える


とある輸送艦のハンガーでもその光景は見られた


『中隊長! 憧れの艦隊長閣下が見てるぜ!』

『うるせぇ、こんな時まで茶化すな!』


口調は荒っぽくも、それに本気の怒気は含まれていない


『スコルピオン共、俺らの腕の見せ所だ! 駆逐艦か巡洋艦をターゲットにしろ、戦艦の装甲はさすがに俺らじゃ荷が重い! アルビオンだのランティッヒだの、お高く留まった戦艦共に任せてやれ!』


CAU海軍、第一バトルワーカー大隊に所属する第2世代型バトルワーカー『『UF2869BTS-E スコルピオンⅡ』を駆る砲撃中隊、それを率いる少佐『ベリル・マッケンジー』とその部下達だ


『見ろよ、ルプスレフィア大佐、早速始めてるぜ。』

『当たってるのかあれ?』

『さぁな? でも知ってるだろ、あの人は決して無駄なことはしない。』

『それもそうだな、よし、たいちょ、俺達もそろそろやろうぜ!』


隊員達の会話に返すように、マッケンジーが口を開く


『よっしゃ、行くとするか!』


その視線の先、話題に挙げられたルプスレフィアはというと...



『砲偏差、異常なし。 試射完了。 誤差を補正。 ...んー。』


ルプスレフィアの駆る愛機、アルティアの背にはいつものように大型砲が搭載されているが、よく見ると砲の後部が火星での戦いの頃より更に大型化している

それもそのはず、アルティアの背部レールガンはあの頃の『125mm機対艦レールガン』から更に改良され『120mm機対艦ブラストレールガン』へと変更されていた

口径こそ以前の120mmに戻ったものの、射撃機構を一から見直しており、砲寿命やメンテナンスコスト、その他諸々を犠牲に射撃機構を火薬式に変更、その上で砲身を電磁レール化することで、2段階加速による超高初速を実現していた

そのため、射程距離、貫通力は以前とは比較にならないほどに向上している


さすがに1発目は距離があることもあり、外れたようだったがルプスレフィアにとってはそれも折り込み済みで、その最初の射撃により収集されたデータを元により実戦的な調整をその場で施していく

いつもぽわぽわとしているルプスレフィアであったが、こと自身の機体のこととなると、そういうわけではないのが彼女でもあるのだ


『...よし、次はいけるかな。 ...お姉さま、見てて。』


彼女はそう小さく呟き、そして、視線を前へと向けた


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