60: EP4-10 [編集済]
コロニー協定連合体 "CAU"
オペレーションストームライダー
5日目
西暦3020年3月28日[STC]
協定宇宙時17:00、火星新太平洋西時間08:00
火星地表、新太平洋西部
───
──Side: 3人称視点
セクター1-1、そしてセクター1-2は計画通りに制圧された
翌朝になり、既に次の一手が動き始めようとしていた
のだが...
「なんだって? 次の陣地はもぬけの殻だと?」
「はい。 偵察隊によれば、セクター2、及びセクター3は既に誰もいないのとのことです。」
シオンハートはセクター1-1の跡に設営された簡易テントで偵察部隊からの情報を受け取っていた
その情報はと言えば、報告通り、この先の敵陣地は既に放棄されているのだということだ
「...つまり、この先の基地へと撤退したというわけか。 それも昨晩のうちに。」
「...そういうことになるかと。」
寝耳に水とでも言うべき報告だった
「更に悪いことに、どうにも明日、それか明後日にスプリングストームが若干ですが弱まる兆候があります。 もし敵が航空機を飛ばすのであれば、そのタイミングになるかと思われます。 加えると、その後は、2週間は今のような強さが予想されています。」
「そういうことか。 敵は既に撤退準備に入った、というわけだな。」
シオンハートがそう結論づける
「分かった。 報告ありがとう。 となれば今日明日が勝負だ。 基地を制圧し、敵の動きを押しとどめる必要がある。 すぐにルプスレフィアとマルコシアスを呼ぶとしよう。」
シオンハートがそう言うなり、テントを出ていった
「...」
気まずい時間が流れる
「あれ、さすがにこんなところまで着いてきたのはまずかったかな。」
ローランドはテントの中で今までの人生でもトップクラスと言っていいほどの難局に直面していた
「...ってそれもそうか。 こんなところにESFの制服着た子がいたら大騒ぎだもんねぇ。」
銀髪にも見える白髪の堕天使、クロノスが目前にいるのだから
いつテントに入ってきたのかすら分からず、唐突にそこにいたというのだから手のつけようがない
「まいーや。 それじゃあねぇ。」
直後、クロノスの姿はどこにもない
「...っ!」
ガサリ、とテントの入口が開かれる
そこから姿を現したのは、シオンハートだ
「今クロノスの気配がした気がしたんだが... 気のせいだったか、ローランド?」
「いえ...今の今までいましたよ、准将。」
「やはりか。 何か言っていたのか?」
「いえ...特には。」
有意義なことがひとつでもあったかと問われれば、かけらひとつたりともないと言っていいだろう
「...准将、聞きたいことがあります。」
「なんだ? ...先に断っておくが、私は大概言えないことのほうが多いからな。」
シオンハートが先手を打つ
「言えればでいいです。 あのクロノスとは、一体何なんですか? どうして准将はクロノスと戦わなかったんです?」
シオンハートがその問いに露骨に目を逸らす
しかし、数舜の後にその口を開く
「既に姿を見てしまったお前に今更隠せるものでもないか。 ローランド、神だの天使だの、というものを信じているか?」
至って真面目な顔でシオンハートがそう問う
言ってしまえば、それはひどく宗教的なものだ
「...いえ、そんな非科学的なもの...」
「それが普通の反応だ。 少なくとも私が見てきた人間なら全員そう答えるだろう。」
「つまり...」
「あぁ。 信じられないことだが、この世界にはそれが実在するようだ。 」
シオンハートがきっぱりと告げ、続ける
「否定したいという気持ちも分からないでもない。 人間は大抵、自分の常識にないものを信じようとはしないからな。 だが、ローランド、目の前にそれが実在すると分かっている以上、否定もできないんだろう。」
シオンハートがローランドの考えていることを推測する
「...えぇ、はい、そうですね... でも、やはり信じづらいです。」
「まぁ、それでいいさ。 あんなものはどんなに考えたって常識の外側にあるものだ。」
「常識の...外側。」
「あぁ。」
互いに無言が続く
その均衡を破るかのように、未だ疑問晴れ切らずと言った表情のローランドが口を開く
「准将、それは分かりました。 では、准将とそのクロノスはどのような関係なんです?」
こちらこそが話の核心だろう
そうローランドが問う
「...」
シオンハートがローランドの顔を見つめたまま押し黙る
その意図は──
「スノー、これは私の推測なんだが... 明らかに効きが弱いように思える。」
「同感だ。 原因は...他元因子だろう。 Code: Kの因子がこちらの制御をバイパスしていると見るのが正しいだろう。」
どことも知れないモノクロ空間
そこに白いツインテールの少女と、黒いボブヘアーの女がいる
言うまでもない、スノーと呼ばれる少女と、アビサルハートだ
「あれからデータを観測し直したんだ。 何度かやって、ようやく偽装を突破できた。 アリア・K・ウィルクスとクロノスの接触を特定できた。」
「ウィルクスと? つまり...」
「Code: K...そう、つまり、私以外の、世界を綴る者の影響が強い。 ジャッジメントはあくまで私の所有物だ。 となれば、世界を綴る者の影響力を完全に打ち消すことはできない。 君のようなイレギュラーよりも、余程厄介だ。」
スノーと呼ばれる少女が深刻そうな顔で告げる
「それに、君との会話からもいくつか情報を得れている。 ウィルクスの神としての能力は相当なものだ。 私が中和しているからこそ、そこまで目立ってはいないんだろうけど... ん?」
「スノー、どうした?」
「...見られてる。」
アビサルハートが周囲を見渡す
「...いや、誰にだ? ここはお前の管理する中でも最重要区画のはずだ。」
「それはそうだけど...」
「...はぁ、なるほどな。 言わなくていい。 よく考えてみればお前のことを見れる存在は...壁の向こう側だな。」
「まぁ、私も一応壁の向こう側にいるんだけどさ。 いや、どちら側にもいると言うべきだね。」
スノーとアビサルハートの会話は奇妙だ
まるで、誰かに聞かれていることを前提にしているような...
「まぁ、よくよく考えてもみれば、ちょうどいいタイミングかもしれないね。 」
だって、ぴったり30話前でしょ、私が君達のことを見たのは。
忘れたなんて言わせないよ、『読者様』。
君達の目に私がどう映っているかを知るのはまぁ難しい。
こういうやり方を好まない人達だっているだろう。
まぁ、それでもどうか付き合ってほしい。
真実は少しずつ明かされるから、楽しいんじゃないか。




