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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP4『新太平洋の戦い』

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59/127

59: EP4-9 ブレイクスルー: 実行

仮にも敵味方同士が仲良くするのはどうなんだろうね...

いや、それがトラベラーというものなのだろう。

あぁもう、どういうことなんだ?

...いや、これはチャンスか...

コロニー協定連合体 "CAU"

オペレーションストームライダー

5日目

西暦3020年3月28日[STC]

協定宇宙時(STC)07:13、火星新太平洋西時間(MNPWT)22:13

火星(マーズ)地表、新太平洋西部


夜戦、それぞれの戦い



──Side: 3人称視点



「へぇ、雨降る夜にだなんて洒落てるわね。 ね、アイリス?」

『まぁ、確かにねぇ。 でもまぁ、夜、しかもこんな豪雨の中なら、バトルワーカーなんていう騒がしいものもそれなりに紛れはするし、いい選択じゃない?』


厚い雨雲に阻まれ月光すら届かぬ新太平洋

そんな豪雨の最中、1人の人影がESFが防衛ラインを敷くエリアの高台に立っていた


「まぁそれもそうね。 アイリス、君はどうするんだい?」

『私はまぁ... 余計な手出しはしないかな。 というか、さすがに人型ロボに生身でどうこうするのは無茶があるしさ。 ってか、今更こっちからそっちまで行くのは無駄というかそれこそ無理だし。』


その人影は、誰かと通信越しに話していた


「...まぁ、正論だね。 あんなものを目立たずに処理するのは不可能だ。 何より、いなくなった場合に気づかれるかどうかという話で言えば文字通り、無理だ。」


肩をすくめながらそう返すのは、以前ローランドの前に現れたアイリス・シェルヴィと同じぴったりとしたスーツ姿─スーツ全体に入っている淡いライティングがシェルヴィのそれ、彼女の髪を模したようなブロンドのような色と違い、空のような青さであることを除けばだが─の人物

腰より下まで届くほどの長い黒髪が目立つその人物は、言葉を続ける


「まぁ、我らがジャッジメントの期待の新星とやらに任せてみようじゃないか。」

『ぷっ、それ、誰が言ってたの?』

「今私が考えたものさ。 正直適当言ったことは認めるよ、アイリス。」

『あはは、だと思った。 その適当っぽい雰囲気、やっぱレイナらしいよ。』


レイナ、そう呼ばれたその女性は、ふと通信のホログラムモニタが映る左手首あたりに装着した端末を見る


「おや... セラフから呼び出しだ。 あぁ、そろそろセラフィエルのメンテナンスも終わるか... それじゃあ、私は戻るよ、アイリス。」

『行ってらっしゃい。 私はまぁ、もう少しここにいるよ。』

「頼んだわよ。」


そう言った直後、レイナの姿はどこにもなかった






そんなレイナが見下ろしていたエリアに、ゆっくりと大きな影が近づく



『ガートルより各ユニットへ。 まもなく敵陣地へと到達する。 ルプスレフィア指揮下の部隊により敵陣地の正面を突破した後、一気に近づき、陣地を制圧する。 間違いなく敵味方入り乱れての乱戦となるだろう。 現時点の偵察によれば、敵バトルワーカーは一部を除き駐機状態にある。 隙を晒しているうちにいかに敵戦力を破壊できるかが勝敗を分けるだろう。 各ユニットの奮戦を期待する。』


シオンハートが作戦決行前の通知をセイバー部隊へと行いながら、ESF陣へ接近していた


『事前の決定通り、各ユニットはセクター1-1及びセクター1-2へとそれぞれ攻撃を行い、両セクターを制圧することが目的となる。 どちらか一方でも制圧できなければ、先へ進むことは困難だ。』

『ルプスレフィアより全隊、もうすぐ攻撃を開始できるよ。 突撃用意!』

『了解だ、ルプスレフィア。 ネイヴィガー1、ネイヴィガー2、突撃に備えるんだ。』


今回の作戦では、ネイヴィガー隊もそれぞれマルコシアス、クランツが率いる2隊に部隊を分けて、それぞれセクター1-1、1-2の攻撃部隊を率いていた


『...リーコンユニットより報告だ、ルプスレフィア、20秒後に砲撃開始だ。』

『了解、シオンハート。』


それからきっちり20秒後、ルプスレフィアが率いる砲撃隊がそれぞれの目標に対し、砲撃を開始した






─セクター1-1



『どこからの攻撃だ!?』

『分かってない! 動ける奴は全員バトルワーカーに乗れ!』


セクター1-1のESF部隊は混乱の最中にあった

時刻も22時をまわり、警戒要員を残し部隊の相当数が休息中であったところへの急襲に、対応しきれずにいたのだ


『正面の防壁が突破されてる!』

『遠距離砲撃だ! 姿を晒すな!』

『なんだあれは... てっ敵だ! CAUのバトルワーカーが突撃してきてるぞ!』


急襲による混乱が効果を発揮し、セイバー部隊は既に防衛陣地の目前まで迫っていた!


『奴らを押しとどめるんだ! 絶対に突破──』


そこまで言いかけたバトルワーカーが突如爆散する

それを成したのはもちろん...


『そんなところで棒立ちしてたらいい的だよ! 全部隊、砲撃を切らさないで!』


そう、ルプスレフィアのアルティアだ

たった今彼女が撃ったのは『125mm機対艦レールガン』だ

しかも、ただの貫通弾ではなく、直撃の瞬間に内蔵の炸薬を起爆するHE弾頭と呼ばれるものだ

あまりの反動に超重装機のアルティアですら地面にアンカーを突きささないと弾き飛んでしまうほどだが、その威力は標準的なバトルワーカーを一撃で跡形も残らず消滅させるほどでもある

そんな彼女の号令を元に、砲撃機部隊は陣地の防壁、あるいは隙を晒している敵バトルワーカーへ無慈悲に攻撃を加え続けている


ちなみに、ルプスレフィアは信頼のおける副官にセクター1-2を任せ、セクター1-1の指揮に専念している状況のため、こんなにも堂々と自身も攻撃に参加しているわけではある


『フェオ2-1よりルプスレフィア大佐へ、こちらは突入位置に着きました。 砲撃を止めてください。』

『おっけー、突入ポイントB-2の砲撃を停止、その分は他に回して!』


砲撃によって防壁に空いた穴から部隊を突入させるという、シンプルな作戦である

正面突破する以上、ある意味最も効率的ではあるのだろう


『ゴー、ゴーゴー!』

『敵バトルワーカー、まだ動いてないのがあるぞ!』

『動いてる奴から潰せ!』


遠距離からの砲撃を恐れ突破口から距離を取っていたESFバトルワーカーはこの突入への初動に対処できず、一気に踏み込まれる状況となる


陣地内の近距離戦ともなると、銃よりも剣のほうが優秀である場合もある

事実、今現在セクター1-1陣地内部では、壮絶な近接戦闘が繰り広げられていた



『この程度! 甘いぞ!』


セイバー部隊の中でも特に獅子奮迅とでも言うべき活躍をしていたのは、やはりネイヴィガー隊の面々だ


副長であり、セクター1-1攻撃部隊を率いるネイヴィガー2こと、ブレンダン・クランツ

ネイヴィガーの紅一点、かつて暴れ馬とも呼ばれた勇猛な兵士、ネイヴィガー4ことジーナ・ファウスト

何につけても謎の多い人物、トリッキーな挙動が敵を翻弄するネイヴィガー6ことロビン・グッドフェロウ


それぞれがそれぞれを援護しつつ、戦果を増やしていた


クランツが敵の懐に一気に詰め寄りながら、手にしたソードをコックピットへと突き立てる

バトルワーカーの最大の急所であるコックピットを一撃で貫くその戦法は、効果的に敵の数を減らしていく


『動かねぇ的はただの的だ! 行くぜオラァ!』


いつもに増して口の悪いファウストが手にしたロケットランチャーを駐機状態のESFバトルワーカーに次々と撃ち込んでいく

彼女の言う通り、動かないバトルワーカーは確かにただの的だろう

その爆発はついでと言わんばかりに、バトルワーカー周囲にいた生身の兵士すらをも吹き飛ばしていた


『いやー、おふたりとも派手にやりますね...っと。』


グッドフェロウはそんな中でものんびりとした様子だった

どちらかというと彼は味方部隊の掩護に徹している様子だった

味方の背後を取ろうとした敵を優先的に排除したり、逆に敵の気を引いて味方に背後を取らせたりと、目立たないにしろ、重要な役割をしっかりと果たしていた


『というか、ジーナさんこんな狭いところであんな派手にやってよく誤射しませんね... 手慣れてるなぁ。』


こんなことを呟きながら戦闘している相手に撃破されるESFバトルワーカーはどうにも、哀れに思えてくるかもしれない



ところで、混乱の最中でまったく気づかれることがなかったのだが、この場を冷静に観戦していた者がもしいたのなら、気づいたことだろう

砲撃以外の、遠距離攻撃が行われていたことに


「で、ディケ... やってて思ったんだが、これ、俺達必要だったのか?」

『...まぁ、同意しておきますよ、エリソン。』


ライブラのコックピットの中、ディケの小さなアバター体が目を背けながらそう言う


「目を逸らすな目を。」

『いえ...皆さん、お強いですよねって。』


ディケがほとんど現実逃避のような発言をしつつ再び目を逸らす


ローランドの任務はシンプルなもので、混乱に乗じ敵機を狙撃することだったのだが、思った以上の混戦、そしてESFの動きの悪さにほとんど必要がないという状況になってしまっていた

もしまだこの身体が生身だったらあくびの一つでもしてそうだったな、なんてことをローランドは思いながらも、決して油断はしていない


「...?」


ふと頭が冴えるような感覚をローランドは覚える

なんだ? 何が起きているんだ?

そう言わんばかりに、ローランドは周囲を見渡す


周囲に何も異常は見当たらない、気のせいか?

そうローランドが警戒を解こうとした瞬間...


ライブラの機体の肩に、何かが手を置いた(・・・・・)






『ま、動かない方が身のためだよ。』

「...」


ライブラの背後に現れたもの

純白の装甲に身を包んだ、堕天使


『まぁそう固くならないでって。 私はシオンハートが動かなければ動かない、そう約束したからね。』


そう言葉を紡ぐクロノスは、その言葉の顕れなのか、自身のフェリシアには一切の武装を持たせていない


『ま、どうせそこで見てるんでしょ、シオンハート?』


ライブラから手を放さずに、フェリシアが横を向き、空いている左手で指さす

その指さされた空間には何もない


『あれ、ハズレかな? それとも当てたからって出てきてくれるわけでもないか。 ま、いる前提で話すけどさ。 だって近接通信は繋がってるし。』


ローランドがふと通信モニタを開く

確かに背後にいるフェリシアの他に、何かが通信に繋がっている


『ところでー。 えーっと、ローランドくんだっけ。 何か喋ったら?』


この状況で呑気に会話なんてできるか、ついそう言いたくなるのをローランドはこらえる


『まぁいいや、どうせ私の姿は見てるんでしょ? それとも前にも見せたっけ?』


クロノスの姿

コックピットの座席に座ったその少女の頭上には漆黒に輝く輪、そして背後からは同じような漆黒の翼が見えている

橙と青のオッドアイ、そして長い銀の髪

それでいて、着ている服は腹周りが見えているほどに短いシャツに、オリーブドラブ色のジャケット

まじまじと見たのは初ではあるが、見れば見るほど奇妙な姿だとローランドは思っていた


『反応ないのって思ったより悲しいね。 まぁほら、この世のモノでない同士、仲良くしようよ。』


ローランドはクロノスの発言に引っ掛かるところを覚える

─この世のモノでない同士─

どういうことだ? そう訝しむ


『うん...? もしかして... 図星?』


クロノスが小さく呟くのが聞こえる

図星も何も、言っている意味が分かっていないローランドである


『...クロノス、そこらへんにしておいたらどうだ。』

『あ、シオンハート。 ようやく答えてくれたね。』


通信に繋がっていた何か、それはやはり、シオンハートのマリエルであった


『げ。』

『背後ががら空きだぞ、クロノス。』


そのマリエルの姿は、先ほどのフェリシアとライブラの関係性のように、フェリシアの背後にあった

そして、マリエルはその手に片刃のソードを握っている


自身の通信モニタに、クロノスとシオンハートの姿が映るローランド

見方によっては白金にも見えるかもしれないクロノスの髪と、黒いシオンハートの髪がなんとも対照的だ


『...はぁ、まぁいいか。 でもこれで、この場の上位勢は皆揃ったわけだ。 仲良くしようよ。』

『まぁ、そういう話だからな...』


少々焦ったようなクロノスに対し、シオンハートが呆れたような態度で返す

この会話に入っていくのは無理だな、とローランドはあくまで自身からは音声も映像も送らず、そのまま通信に参加し続ける


フェリシアがライブラの肩に置いていた手を外す

それを見たシオンハートも、構えていたソードを降ろす


『ところでだ。 ローランド、状況が呑み込めないでいるだろうが...』

『まぁいいんじゃない? 私としては、もうちょっと気になることはあるけど...』


クロノスが困ったような顔をして、そう言い放つ


『...ねぇ、シオンハート。 教えてほしいことがあるんだけどさ。』

『なんだ?』

『このローランドって子さ、どういうわけなの?』


抽象的すぎる質問

シオンハートが目を細める


『...さすがに言えないさ。』

『まぁそりゃそうだよねぇ。 でもまぁ、あれでしょ、どうせジャッジメントでしょ。』

『...』

『無言は肯定だよ、シオンハート? まぁでも、ジャッジメントが何をどうしたのかまではさすがに分からないけどね。』

『なら私はずっと無言でいるさ。』


自身のことを話していることだけは辛うじて理解できたローランドではあったが、その内容がまったく分からない

そもそも、目の前の白い機体は敵であるはずなのに、シオンハートは何故普通に話しているのだろうか?

この場の上位勢とは? ジャッジメントとは?

疑問が多すぎるのだ


『そっか。 まぁいいや。 ここから仲良く観戦ってことにしよ。』

『...まぁいい、乗ってやるさ。』

『あ、君もだよ、ローランドくん。』


訳の分からない2人に振り回されるローランドであった

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