58: EP4-8 ブレイクスルー: 計画
ふむ...
レイナ達も何かしようとはしてるようだね。
まぁ、私からどうこうできるような相手でもない。
任せてみるとしようじゃないか。
コロニー協定連合体 "CAU"
オペレーションストームライダー
4日目
西暦3020年3月27日[STC]
協定宇宙時22:00、火星新太平洋西時間13:00
火星地表、新太平洋西部
それでも、前へ
──Side: 3人称視点
『待ち伏せは厄介だが... 情報が正しいならば、もう近いはずだな?』
分散して進行していた他の部隊と合流したシオンハートは次を見据えていた
『あぁ。 偵察によれば敵陣営も本格的な防衛ラインを構築している。 いや、もう要塞化している、とでも言うべきか。』
マルコシアスが続ける
『見てくれ。 ここが我々の現在地。 そしてここが敵基地だ。 それに至るまでに...3つ...そう、3つのセクターがある。』
マルコシアスがシオンハート、ルプスレフィアにこの先の地図を送りつつ伝える
『それぞれ、2つの要塞化された陣地でESFは構えている。 ここを突破せずして基地に向かうのは無理だろう。 未だ軌道通信は復帰しないな?』
『あぁ。 正直なところ、今艦隊が無事なのかも分からないんだがな。 今になってみれば、無茶な作戦もいいところだ。』
『それをそちらが言ってどうする、シオンハート嬢。』
マルコシアスが苦言を呈する
もっとも、本心からというていではないようだ
『はは、悪い。 さて冗談も程々にするとして... 正面から当たる以外の選択肢は...まぁなさそうだ。』
地図を見ながら、シオンハートが続けて言う
『バトルワーカーで水泳でもできるんなら話は別だけどな。 まぁ無理だろう。』
誰とは言わずに、シオンハートがルプスレフィアを、アルティアをこっそりと見る
『シオンハート、もしかして今こっち見た?』
『いや?』
『ふーん...?』
ジト目でシオンハートを見るルプスレフィア
それを躱すシオンハート
『...後でやってくれ。』
『悪い、マルコシアス。』
『ごめんごめん、それで、正面からぶつかるとなると...』
地図を見る限り、敵陣を迂回するのは確かに進行方向を見て左右にある海を泳いでいくしかないだろう
となれば、正面突破以外の選択肢はない
『砲弾の残りは?』
『まだ各隊、十分な余裕はあるかな。 いっぱい持ってきたしね。 はいこれデータ。』
遠距離部隊を取り仕切るルプスレフィアがその手の情報は一身に引き受けている
普段の彼女を見るとどうしても不安が残るが、その手腕に間違いはない
『ふむ... 要塞の正面を砲弾で撃ち抜くのは悪い選択肢じゃない。 正面突破以外に手段がないならそうするしかないんだがな。』
『重装機を前に、砲撃機の援護のもと進撃、制圧。 小手先の手段がないのならば最も分かりやすく、単純だ。 戦力差が勝敗を分けるとも言う。』
シオンハート、マルコシアスがそれぞれの考えを述べる
『相手に特級戦力がいる可能性も十分に考慮しなければならない。 それこそ、昨日のようなバトルワーカーや、姿の見えないスナイパーがいるとなれば、厄介などというレベルではなくなるぞ、シオンハート嬢。』
昨日は別行動中のマルコシアスだったが、データや映像としてその様子は把握していた
『それもそうだな...』
シオンハートは言わないが、クロノスについては心配ないだろうとも思っていた
それと同時に、自身が切り札になりえないという事実もついてきてはいるのだが
『...まぁ、考えていても仕方ない。 この先の...そうだな、セクター1-1、及び1-2の攻略の準備をするとしよう。 戦力の割り振りだけでも時間がかかりそうだ。』
そう言うとシオンハートは2人との会議に思考を割り振る
クロノスのことはまた後で考えればいい、今はただ、それだけだった
『...で? その基地の様子はどうなんだい?』
「うーん... 撤退が前提ってのもあるんだろうけど、警備はちょっと甘めかな? 少なくとも、前に旧チャイナダークゾーンのフリーダム・フロントライン基地に入った時のほうが気を使ったかなぁ。」
『...前、前...ねぇ。 ...あの時のあのロボはバトルワーカーじゃなかったよね?』
「そうだったはず。 ...ん? あの時のは... あれ、ジャッジメントのはそうじゃなかったっけ?」
『そうだったかしらね...』
セイバー部隊の目的地、ESFストームレイン基地の一角、陰になっている場所で誰かと話す人影があった
ブロンドのセミロングの髪、肌に張り付くようなボディスーツのその姿は以前ローランドの目の前に現れたアイリス・シェルヴィのものだ
話し相手は通信越し、黒い髪の女性だ
よく見ると白衣を着ているようにも見える
「あそうそう、セラフちゃんの調子は?」
『問題ないわ。 セラフィエル2のレンズも一応交換して、調整済み。』
「そっか。 さて...キーカードか何か分からないけど、セキュリティキーを偽装しないとね。」
『余程の生体認証でもなければ大丈夫でしょう。』
「ま、そうだけどさ。」
そう言ってシェルヴィははにかむ
シェルヴィが左腕につけた腕時計のような端末に浮かぶ、ホログラム画面の通信越しの相手はここまでの間真顔とでも言うべき表情を崩さない
『それじゃ、よろしく頼むわね、アイリス。』
「はいはい、分かったよ。」
そう言うとシェルヴィが端末を操作したかと思うと、一瞬その姿が歪み、そして消えた
そして、後には何も見えなかった




