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人機のアストライア  作者: 橘 雪
EP3『オペレーションライトニングストライク』

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37/129

37: EP3-13 ブロークンアロー─異変

罠にかかったのは、どっちだ?

コロニー協定連合体 "CAU"

ライトニングストライク作戦─ブロークンアロー作戦[ステータス:異常]

1日目

西暦3020年3月18日

協定宇宙時(STC)21:30、火星新太平洋西時間(MNPWT)12:30

火星(マーズ)大気圏、軌道エレベータブラボー上層


作戦ステータスに異常を検出、基部基地の『異変』を察知。



『何が起きてる?』


自由落下するマリエルのコックピットでシオンハートが1人呟く


『シオンハート大隊長、敵の対空砲火が確認できません!』

『こっちもだ、連中、俺達に気づいていないのか?』

『そんなわけはない。 さっきからレーダーにロックされてる。』

『妙だな... 各機、罠かもしれない。 警戒しろ!』


基地の防空レーダーは確かにCAU降下部隊を捉えていた

しかし、対空ミサイルはおろか、対空機銃の1つも飛んでくることはない

バトルワーカーに搭載できる程度のカウンターメジャーでは対空ミサイルを妨害することは難しく、有効打足りうるし、対空機銃も回避に専念しなければならない以上、有効である

それなのに、だ


『対地高度...3000...何のつもりだ?』


─嫌な予感がするね─

先の白いツインテールの少女の言葉がシオンハートの脳裏を掠める


しかし、今更この落下を止めることはできない

今はただ、目標へ向かうだけ


『ドロップタワーよりマリエル、緊急事態だ。 基地の────』

『ドロップタワー? ...どうした? 応答しろ!』


ドロップタワーから一瞬通信が入るも、すぐにモニターが暗転する


『どうなって...いや... 通信妨害か!』


気づけばチームとの通信も途絶えている

原因は考えるまでもなかった


『チッ... 対地高度...1500!』


周囲のバトルワーカーを一瞥し、シオンハートはマリエルの右手に装備されたHALLを地上へ向ける


『原因はあそこに間違いなくある。 なら...』


対地高度が1200を切った瞬間、シオンハートがそれをトリガーを引いた

同時に、発射されたHALLは一気に加速し...


一瞬の閃光と共に、その威力を解き放った






─火星地表、軌道エレベータ基地ブラボー、基地外縁部



『各機、状況報告!』


通信は徐々に回復していた


『罠だったんだ... 敵は誰もいない。』

『こっちもだ。 施設内に生体反応はない。』

『電源は無事落ちてるがな... シオンハート隊長、どうするんだ?』


シオンハートも既にこれがESFの罠だということは分かりきっていた

だが、目的が読めない


『今... ドロップタワーとの通信を試みてる。 それか...』


ドロップシップの艦橋でもいい、シオンハートがそう言いかけた時


『───るか? 繰り返す、ドロップタワーより地上部隊へ、聞こえるか?』

『ドロップタワー、こちらシオンハート、ドロップタワー、どうぞ?』

『ドロップタワーだ、シオンハート、無事で良かった。 状況は... いや、それより報告がある。 現在そちらの位置に西から敵の大規模なバトルワーカー機甲師団が接近している。 すぐに残りの部隊...それから、正規軍、セイバーの全部隊を降下させる。』

『バトルワーカー機甲師団? まさか... 連中、あらかじめ退避させておいたのか!』


シオンハートの予想はまさに的中していた

ESFはCAU艦隊が軌道上からの爆撃で基地ごと攻撃する可能性を考慮し、全ての部隊、人員を退避させていた

そして、CAU部隊が降下...つまり、基地ごと攻撃されるリスクがなくなってから攻撃に転じたのだ


『シオンハート、軌道上からの偵察データを送る。 ...信じられない数だ。』

『了解。 ...マズいな...』


シオンハートは投入されるであろう敵味方の戦力を計算する

結果は...


『五分か。 ちょっと...いや、かなりマズい。』

『シオンハート准将!』

『ん? あぁ、ローランド。 どうだ?』

『完璧です。 と、准将、今ディケから見せてもらいましたが... かなりの敵が来てるようですね。』


マリエルの横にライブラが駆け寄る


『そうだ。 今から降りてくる味方を含めてもどうなるかは分からない。 幸い、接敵まで少しだけ猶予がある。 ローランド、お前は遊撃だ。 ただ、気をつけてくれ。 ここじゃ補給は満足に見込めない。 いくらそのライブラのエジタイトストレージが大きかろうと、無駄にはするな。』

『了解、准将。 ディケ、なるべく消費を減らすように調整しといてくれ、いいな?』


ライブラがマリエルから離れ、装備を確認し始める

一方シオンハートはモニターを操作し通信を開く


『ドロップタワー、聞こえるか?』

『どうした、シオンハート?』

『早めにコンバットエンジニアを降ろすよう上に伝えてくれ。 基地の防衛システムを復旧できないか試させたい。』

『分かった。 陸戦隊のポッドになるべく同乗させるよう伝える。他にはあるか?』

『いや...ない...あぁいや、エジタイト、それに弾薬等補給も早めに送ってくれるように頼む。 この敵の数じゃあ...足りなくなるからな。』

『それも伝えよう。 それから、ブリッジから伝言だ。 本艦はしばらくこの空域に留まり、通信中継を行う、だ。』

『ありがとうドロップタワー。 また用事があれば通信する。』

『幸運を、シオンハート。』


通信が終了し、モニターが暗転する


『大隊長、敵は...もう20分もあれば到着するだろう。』

『20...13時ぐらいか?』

『そうなるな。 狙撃チームは今のうちに固めておく。』

『頼む。 ...すぐにルプスレフィアが降りてくるはずだ、その後はそっちの指揮に入ってくれ。』

『了解、大隊長。』


狙撃チームのバトルワーカーが高所を確保するために行動を開始する


『シオンハート隊長。 重装機の編成が完了した。』

『よし分かった。 座標を送る。 ここと...ここに配備してくれ。 恐らくウィークポイントになるはずだ。』

『了解。 よーしお前ら、着いてこい!』


大きく、分厚い盾を構えた重装バトルワーカーが前線となるであろう方向へ歩いていく


『...後は... ルプスレフィアと正規軍の砲撃機が頼りか。 ネイヴィガーも場を荒らすには十分だろう。』


ふと、シオンハートの脳裏に白い機体が浮かぶ


『...クロノスは... その時は私が叩くしかないな。』


シオンハートはそう言い、未だ見えぬ敵を、西の方角をじっと見つめるだけだった


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