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「召喚者になるべく負担をかけない為には精霊の力を使った方が良いんだよ。俺は魔術師たちの使うような魔法の心得もあるけど、うかつに使うと術者への負荷が大きくなり過ぎる危険性があるからね」

 一般に魔法使いという者達が使う術というのは魔法力(マナ)ってものを別の力に変換するという仕組みになっている。

 この魔法力が何者かってちゃんと説明しようとすると、まーた長くなる話なんだけど......万物に含まれる構成物というか......コレがあるからこそ世界が安定するというか......まあ、眼には見えないそういう力が、空気のように水のように、常に世界には溢れているのですよ。

 ――魔法力って言い方も本当は語弊があって、元々世界を造る構成物である事が「マナ」の第一義で、それを魔法に利用したのは後付けなんだけど、神々の時代から魔法は使われていたので、これは仕方ないとしようか。

 で、説明が長くなったけど、魔術師が魔法を使うっていうのは、術者本人の「マナを具体的な力に変換する」能力が可能にしている事なのだ。

 これは種族や個人によって差のある能力で、魔法を使える向き不向きっていうのはこの「変換力」の有無やら引き出し方やらのお話。まあ、鍛えて伸びるものでもある。

 ――で、俺はこの魔法を使う為の能力も、実はものすごく高い。

 ......必要なさそうなんだけどね。普通に精霊やってる分には......

 しかし、俺が物質界で魔法をがっつり使おうとすると、召喚者には俺自身に加えてマナを変換する為の負荷まで掛かってしまう。

 ちょっとした術なら兎も角、戦闘向きの派手な魔術は使わない方が無難なんだよね。

「......あと、一番の理由は――ああいう方法ならお嬢さんにも出来るでしょう? 次からの為に見本を見せたつもりだったんだけどさ」

 まあ、これが大きいかな。

 大気の精霊の力で大きな風を起こす。それ程難しい術じゃないけど、効果は高い。

「......確かに、私でも出来ると思うわ」

 一応納得してくれたのか、そんな言葉が返ってくるが、

「......でも、やっぱり精霊の行動や思考とは思えないわ」

 続いた、厳しいご意見。

「それとも、私の精霊に対する認識に何か誤りがあったのかしら?」

 ......声が、表情も、冷ややかで怖いですよ。

 それにしても――また、返答に困る質問をしてくれるなあ。

「......そうだねー、その問いに強いて答えるなら、どこの世界にも変わり者がいるってトコロかな」

「変わり者?」

 お嬢さんがそう、俺の事を指差す。

「そ。どこにだって規格外はいるもんさ。――で、君は俺を呼び出して、そういう事が訊きたかったってわけかな?」

 好き勝手遊んでいる俺の行動ってのは、彼女の精霊観に非常に衝撃を与えたんだろう、きっとね。

「そう......ね。私もこれでも精霊使いとしてのキャリアはそれなりにあるつもりでいたわ。契約は無理でも、上位精霊を呼び出す事だって出来るくらいにはね。......なのに、貴方がやってくれた事は私が築いてきた精霊に対する考え方をしっかり裏切った。このままじゃ消化に悪すぎるの。――闇の精霊王、貴方の在り方を、何か納得のいく形で受け入れなければ」

 真っ直ぐに、彼女が俺を見据えている。

 うん、真面目だね。実直に生きてるんだろうな。――好感が持てますね、こういう人は。

 ......では、どうするか――

「お話し合いをするって言うなら、この姿はないよな」

 先刻ここに現れてから俺が取っているのは何の色気もない霧のような姿。――けど、この姿では眼を見て話し合い、とはいかない。やっぱり、人間的な格好を取らないと討論はしにくいよね?

 と、いう訳で幻影を――

「......どういうつもりかしら?」

 姿を変えた俺にお嬢さんから冷たいツッコミが入る。

「どうって......話しやすいように姿を変えたんだけど......」

「......訊き方を変えてあげる。――なんで、私の姿になるのかしら? 目の前に自分とそっくりの姿をした闇の精霊王がいて、話がやりやすいと思う?」

 霧と話をするよりはずっといいと思うんだけど......

「召喚者の姿になるのが一番楽なんだけど......イヤ?」

 幻影で姿を変える。これは、召喚術とか魔術とか以前の、精霊(おれ)の持つ能力。

 ただ、どんな姿になるかをキッチリイメージしなければならないんだよね。

 だから、実在の誰かをイメージするのが早道なんだけど――

「嫌」

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