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 呼び出しに応じて、物質界へと姿を現す。

 ......うっわー......攻撃的な波長だなー。チクチクする。

 ......召喚者は俺に対して怒りをお持ちのようだ。

 精霊は精神体――これ、物質界に現れた時に関しては、間違いなくその通り。物質的な肉体みたいなものは持ち合わせておりません。

 なので、剣で切り付けられたり......みたいな物質的な攻撃をされても痛くも何ともないんだけど、反面、強い感情を向けられたりすると場合によってはダメージを受けたりする。

 その、「場合」ってヤツは、精霊に対し強い干渉力を持つ相手からの波長である場合が多いんだけど――

「我は闇を司る者。我に何を望む」

 チクチクして嫌な感じなんだけど、とりあえず呼び出されてしまったし、能力は確かなようだから、定石どおりの言葉を投げる。

 ちなみに、俺と契約をしようと思うと難易度は相当跳ね上がるんだけど、ただ呼び出し、その場で力を借りる、くらいなら、一流の精霊使いであれば、まあ、出来なくはない。

 しかし――

「望みはないわ」

 強い口調がきっぱり返される。

 ――えっ?

 ......おや、まあ。

 ちくちくに気を取られていたけど、召喚者は先日のハーフエルフのお嬢さんだったのか。って......おっかない顔して俺の事見上げてるなあ。

 ふむ。何と返してあげようか。

「おいおい、お嬢さん。確かに俺はヒマだけどさ、冷やかしは困るなあ。一応、俺はこれでも世界を造っている要素のうちの一つを統べる存在なワケだし」

 そう、やれやれって感じで共通語で語る俺に、彼女はキツイ目付きのまま、

「貴方、本当に闇の精霊王?」

 精霊語での簡潔な質問。

「いかにも。――しかし、精霊語を使わなくてもいいよ。共通語でも解るから」

 俺のそんな答えを受けてか、彼女は深ーく溜め息をついた。

 ......なんだよ、その反応は?

「......じゃあ、この間のは私が夢を見ていたとかそういう事じゃなく、本当に、闇の精霊王があんなふうに......」

 ......ちょっと待ってよ、お嬢さん。

「折角助けたのに、そういう言い方はないんじゃないか? そちゃ、助けてくれ、とは言われなかったけどさー」

「確かに、助けてもらった事には感謝してるわよ! でもね!」

 嫌味を含んだ俺の言葉に、半ば叫ぶ調子の強い言葉が返されて――

「うわっ! 痛い!」

 思わず叫んだ俺に、彼女は眼を丸くする。

「......えっ?」

「......悪いんだけど、あんまり熱くならないでくれるかな? お嬢さん、やっぱり良い能力を持ってるよ。干渉力が大きくて、負の感情を飛ばされると痛いくらいにね」

 別に、俺の存在に影響するほどじゃないけど、こういう痛みって経験薄いんで、実は苦手なんだよね。

「ごめんなさい。ちょっと......色々と納得出来なかったんで、つい......」

 申し訳なさそうに、お嬢さんが眉を下げる。

 ......いや、謝られるのも心苦しいんだけど、この場合は。

「......ってて、えっと、納得出来なかったって? ん......俺、なんか変な事したっけ?」

 ――まあね、色々したからこそ怒ってるんだろうし、こちらも自覚がない訳ではないが......

 こちらから頼んでもいないのに助けてくれるだなんて、依頼も契約もなしに精霊がそんな事をするなんて信じられなくて......」

 ......なるほど。

「ま、確かに。普通の下級の精霊には根本的にそんな能力はないし、精霊王クラスになれば、その気になれば出来る事とはいえ、俺以外にそんな事をする精霊王(ヤツ)もいないな」

「じゃあ、なんでわざわざ私の身体に乗り移った上に風の精霊の力を使ったの?」

「ヴィジュアル的にかっこいいかなーって......あ、いや、嘘です。ごめんなさい」

 痛い視線を向けられて、俺は慌てて冗談を引っ込めた。


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