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そういえば、精霊召喚、というモノのシステムについての話をしておくべきかな?
まず、大前提として、世界は物質界と精霊界という在り方の違う二つの領域が対になってバランスを取り合い存在している。
で、精霊召喚は、精霊界から精霊を物質界へと呼び出す、読んで字のごとくな術。しかし、その中身がどういう仕組みになっているかは普通のヒトは知らないだろう。
それには、理由がある。
――言葉での説明が難しいのだ。
......はいはい、ブーイングは受け付けませんよ。そうとしか言いようがないんだから。
別にね、召喚士業界の極秘事項だから世の中に広がらないとか、そんな訳ではないんだよね、これが。
そう。単にこういった事って、精霊使いが成長する上で自然と身に付いていく事で頭で理解したからってどうにもなんないし、説明したって仕方ない類の話に当たるんだよね。
――で、説明を求められても精霊使いとしたって、どう話せば良いか判らない。
下手をすると尋ねられた側が悩み始めるかも知れないくらいに皆、感覚でしか捉えていない事柄なのだ。
......大体にして、この世界の在り方の説明からして問題があるって言えば問題だらけだし。
......物質界の説明は、まあ置いておこう。
普通、世界やらなんやらの話を語るのはこっちの人達だし、自分らの足元については見たまんまだろうからね。
――問題は、それに対する精霊界の説明。
人間やその他生物たちが暮らす物質界に対し、精霊界というところは、純粋な要素である精霊たちが存在する精神世界である、なんてのが一般的説明。
......物質的な実体を持たないから、精神体って表現する事になるんだけどさ、物質界と精霊界って質量的には同じなんだよね。ほら? そうじゃないとバランス取れないでしょ?
でも――イメージ湧かないよね? こんな説明じゃ。
......まあ、そんなんだから、頭で解ったところで......って話に戻る事になるんだけど――ここはまあ、俺もこれでも精霊サイドの実力者として素人さんにも判るような説明を試みましょうか。
そうだねえ......本当は、例え話っていうのは例えたもののイメージで却って正確な理解を邪魔する場合があるから、あまり良くないんだけど、何かに例えない事には話しようがないんで、ここはひとつ例えさせてもらおうか。
まず、精霊界というのは、精霊の性質毎に幾つかに分かれている。――これを絵の具に例えよう。
チューブ入りの絵の具。性質毎に分かれてるって訳だね。
――で、それに対し物質界は、その絵の具がフィールド――キャンバスの上で絵画となっている状態と考えてもらおうか。
その上で、精霊使いが精霊を呼び出すっていうのは、自らがパレットになってチューブの中の絵の具を取り出す事を指す。
......どうだろう? こう言われたらなんとなくイメージしてもらえるかな?
ただ、これはあくまで例えば、の話なので、本物の絵の具とは違うところも出て来る。
絵の具との一番の違いは、チューブから出している、と言ってもそう見えているだけで、実質的には精霊は精霊界から完全に切り離されて現れている訳ではない、という点かな?
......もうね、この時点で、例えを使った意味も半分崩壊した気もするけど。
あとは――術の性質に重点を置いて語るなら、絵の具だったらチューブの口の大きさは一定で、チューブを押せば入っている限りはいくらでも絵の具を出すことが可能だけど、精霊の場合はそうはいかないって感じかな?
口の大きさを決めるのは召喚者の実力。
小さな口からは少しの絵の具しか出す事は出来ない。大きな精霊の力を借りようとするならば、それだけ大きな口を開けるだけの能力が必要なのだ。
しかも、精霊使いは召喚に際し絵筆を握っているつもりだと思うけど、精霊の俺から見れば、彼らはあくまでパレット。物質界に現れる為の足場に過ぎない。
腕が未熟なら絵の具に取り込まれる危険性もあるのだ。
――文学的表現をするならば、精霊召喚というのは、この世界そのものを使った命懸けの芸術と言えるだろう。
何の覚悟もなしに絵筆を取るのは遠慮してもらった方が身の為だね。




