はじまりの記憶
僕の最初の記憶は、真っ黒な世界だった。
ふと気がつくと僕の意識は闇の世界を漂っていて、ふわふわとした頼りない存在だった。まず、ここがどこだか僕自身が理解できていない。曖昧な僕の意識はどうにかこの世界の流れに身を任せているだけで、僕と暗闇の世界との境界が薄れてきているようだった。
スウッと僕の意識が暗闇に消えていきそうになる。そんな時にそれは聞こえてきた……。
どこかで音がした。
それも、僕という存在から遠く離れた場所から……。
不吉な音がしてくる。ズルッズルッと何かが擦れる音が近づいて来るのだ。
僕は言いようのない不安に駆られて、いつもより重い瞼を意識して開いた。必死で目を見開いた先にあった世界は薄暗くて、光のあまり届かない場所だった。ここがどういう場所だかわからない。でも、僕はここがどこか気にしている場合ではなかった。
ズルッズルッと何かが擦る音が、先程より増えていた。その音は確実に僕の方へと向かって来ていて、それに気がついた途端、僕は不安に駆られてこの場から一刻も早く立ち去るべく走りだした。
僕が走っているのは森だった。
木々は禍々しいほどどす黒い気を放ち、毒々しい色をした植物が辺り一面に蔓延っている。鬱蒼と茂る無秩序に育った木々は、日の光を一切通さない。日の光のない森は、ただでさえ暗い色付きをしたこの世界の不気味さをより一層際立たせていた。
植物の暗く不気味な色が、僕を不安にさせる。
ズルッズルッという音以外に、僕には自分の息づかいしか聞こえない。
僕は姿の見えない音から、道のない森をあてどなく走って逃げるしかなかった。僕が走って行く先々に邪魔をするかのように木が現れる。木にぶつからないように避けて走り続けるが、体力のない僕はすぐに息が上がってしまう。
だんだんと走る速度が落ちてきている。
ドクンドクンと僕の心臓の音が耳に煩いほど聞こえて、それを振り払うように首を振るとバランスを崩してしまった。
僕は自分が思っているよりも、体力が限界に近付いて来ていることに気がついてしまった。
息が上がって徐々に顎が上がっていき、息苦しくなっていく。
日の届かない地面はじめじめとしていて、草や根、そして蔦が僕の走りを邪魔する。だんだんと重くなってきた足取りが、ふらふらとおぼつかなくなってきている。すでに、僕は何度も足を取られて転びそうになっていた。
これ以上走るのは無理だと僕は頭では理解していたけれど、ここで逃げきらなければ、本能的に危ないと感じていた。
その時、僕はボーっとしていた。
ハッとした時にはすでに遅く、太い木の根に足を引っ掛けてしまった後だった。ただ倒れるだけなのに一瞬の出来事がとてつもなく長く感じられて、僕はただただ驚くだけだった。
走ってきた勢いのまま、ズサッと顔から草の中に突っ込んでいく。
「うわぁぁああああ!」
転んだ時に思わず叫んでしまった。
しまったと僕が思った時、後悔するには遅すぎた。少し離れていたズルッズルッという音が、僕の叫び声を頼りにしたのか、確実に近付いて来ている。
はじめまして、祐です。
この作品は他サイトで載せている祐の作品の改訂版です。
今は意味不明だと思いますが、これからも読んでくれたらうれしいです。
これからもよろしくお願いします。




