種明かし②
これは王族だけが知っているのだがと、ワルサさんが前置きする。はいはい、他言無用ってことですね?
じつは、学院のサロンの隣にはもれなく、盗み見、盗み聞きができる小部屋があるんだそうだ。ひぇっ。王族、こわっ!
どうりでタイミングよく現れたわけだよ。きっと、いま衝立の向こうにいるのも。
「キララはどう思った?」
わざわざ水を向けるってことは、気付いたことを気付かないふりで、裏読みできるって証明してみせなきゃいけない相手なんだね。
「ガス抜きをされたのかと」
「ガス?」
あ、通じないか。えーと、えーと。
「おならと同じです! 思わぬところで出ると困るから、先に少しずつ」
って、待てぃ私! ワルサさん相手になんて例えを。顏がどんどん熱くなる。
吹き出すように笑ってくれて、うれしいやら悲しいやら。
「不満は、押しつぶそうとしても消えないものだからな」
うんうん。さっきのはなかったことにして話を進めよう。
「ということは、ヨスカネ嬢もご協力くださったのですか?」
「いや」
その渋い表情。彼女は、あれが素か。私的にはわかりやすくて助かるけど、公爵令嬢が腹芸できないってどうなんだろう。
ここまでくれば、この部屋に潜んでいるのが誰なのか、確信がもてるよね?
ケセラサ王国の王太子やるのも大変だ。大きな派閥を味方に付けたはいいけど、末端まであの調子だなんて。んん? 違うか、むしろ。
「戦争屋をおさえるためのご婚約でしたか」
不敬な言い方だと咎められるかと思いきや、ワルサさんも苦笑している。
「ふつうは逆だと解釈されることが多いのだが。さすがは私の奥様だ」
おおっ、いただきました! その誉め言葉、最高にうれしいよ。当てずっぽうでも言ってみるもんだね。ちょっと隣に座っていいかな?
くっついて頭を撫でてもらっていたら、衝立の向こうからわざとらしい咳払いが聞こえる。執拗に、二×二度。
「お待たせいたしました、シイル殿下」
おーっ、正解! 相変わらずオーラがすごいよ。
私はワルサさんと並んで立ち上がり、姿を現した王太子殿下に礼をする。
「お二方とも、お直りください。大叔父上、感謝します。突然、失礼、辺境伯夫人。私も、キララ殿と呼んでも?」
肩にそっとワルサさんの手が添えられる。前世でも今世でも、自分より身分が高い人にはなかなか出会わないからね。いまだ、直答を許すとか、はっきり言ってもらわないと、ちょっと躊躇っちゃうんだ。
「はい、王太子殿下」
「どうぞ、私のことはシイルと」
「はい、光栄です。シイル殿下」
ワルサさんとはまた違ったタイプだけど、どこか惹かれるものがある。
威張りんぼは嫌いだけど、自己評価低すぎる奴にもイラつく、私の好みの範囲は針の穴くらいせまいよ!
「キララ殿。先程は、ご協力ありがとう」
やっぱり、ごめんなんて言わないんだね。一言発するにも徹底的に気を遣って、疲れるだろうなぁ。
さっき場をおさめてもらった恩もある。まあ、原因はこの人の婚約者だったわけだけど。愛想はゼロ円。ここはいっちょ、リップサービスでもしておくか。
「シイル殿下のお役に立てましたなら、これ以上のよろこびはありません」
え、やりすぎ? ワルサさんに摑まれたままの肩がちょっと痛い。




