衝突③
まあ、こんな輩が現れるだろうなって予想はしてた。むしろ、春の式典や、オリエンテーション、授業をのぞいて歩くお試し期間に、皆がやさしくしてくれた方が不思議。
大人たちは損得勘定するから、こっちの対応もそれに習えばいいんだけど。子供は、なんか嫌だ、なんか違うって、自分の気持ちを無視しにくいからね。
今回もそんな例にもれず。
「彼女の叔父様が、先の戦争で亡くなったのですわ。あなたの国が仕掛けた戦争で。そういう方は、ここにはたくさんいらっしゃいます。それなのに、あなたは頭のひとつもお下げにならない。わたくし、身分をかさにきて傲慢にふるまう方、きらいですの」
前半に関しては、ああ、きたかって胃が重くなるけど、後半に関しては、そのままそっくりお返しするわ!
私は背筋を伸ばし、よく通る声を出す。和音を意識すると、張り上げなくても、まわりに響き渡らせることができるんだ。
「まずは、マヒク様と呼んでよろしくて?」
おどおどしながらも、赤毛さんがこくんとうなずく。おおっ、それはネズミさんの耳かな? それとも鳴きウサギ?
そういえば、ヨスカネ嬢は猫系なんだ。こんなかわいい耳を見逃すなんて、縦ロールのインパクトおそろしや。
「マヒク様、叔父様をなくされたとのこと、さぞおつらかったでしょう。同じ人として、その痛みに同情いたします」
ぐっと涙ぐむところをみると、よい思い出のある間柄だったに違いない。
自分が死んでおいてなんだけど、死なれるのは想像するだけでもつらい。どうやって人はこの苦しみに、連綿と耐えてきたんだろう?
もらい泣きしそうになるけど、私はあえて、感情をコントロールする。私はただの女の子じゃない。
本当の敵が誰なのか、よくわからないのが困るな。
それで?って顔をしている縦ロールこと、ヨスカネ嬢。雨に打たれた花みたいにしおれてる、赤毛のマヒク嬢。どっちが、どっちを利用しているんだか。
ケセラサ人相手にあんまり深読みしても意味がないって、ワルサさんは言ってたけど。うーん。穏やかに話を引っ張ってれば、誰かがこの場をおさめられる人を呼んできてくれると思ったんだけど。誰も部屋から出ていかないだよね。ちょっと不安になってきた。
「謝罪をというお話でしたけれど。それはマヒク様が望んでいることでしょうか?」
おどおどしつつ、あ、うなずくんだ? しかたないなぁ。
「行き違いがあるようで残念ですが。マヒク様、私があなたに謝罪する理由がありませんよ」
なるべく穏やかに言ってみる。内容はひどいけどね。
「え?」
え? そんなショック受けましたみたいな顏をされても。
「なんてことをおっしゃいますの!? キララ様はヤラレタ国の第二王女ではありませんか!」
あ、キララって呼んでくれるんだ。顔を真っ赤にしているヨスカネさん。ちょっと、好きかもこの子。
「はい。その通りです」
「では、なぜ」
「王女としての立場に立てば、なおさら謝罪はできないのです。理由は、お察しください」
わぁ、日本語風の言いまわしって、ステキ。察しろよ、察しられなかったらバカだよって、やんわりとすごいよね?




