表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/174

家族②

 七歳になる王太子は、すでに将来への不安と、周囲からの期待でつぶれそうになってた。あ、我ら皆年子(としご)ね。そして、姿は母親似。瞳の色だけ、私以外は灰色だ。

 氷の王妃似のアイスブルー。美少女に産んでもらってうれしいけど。少々、複雑。

 で、お兄ちゃん。

「そうか」と「うん」声を聞いたのはそれだけ。ツンと澄ましてたけど、陰ではオラオラ系の片鱗がすでに出ているらしい。がんばれよと内心、無責任に応援。

 第二王子は、ただただやんちゃ。おもちゃの剣を振り回して、脳筋まっしぐら。でも、いちばんしゃべったかな。

「へー、おまえが二ばんめの妹か。いざ、オレとしょうぶ!」

「にいたま、おつよいんでしょ? キララはおんなですし、ちっちゃいからかなわないですぅ」

 ぜんぜんキャラじゃないんだけど、両手組み合わせてきらきらお目々をイメージしたら、先方はまんざらでもないご様子。

「ちぇ、つまんねー。でも、おんなこどもは守ってやらなきゃな」

 腕まくりして、ぶんぶんおもちゃを振りながらどこかへ行ってしまった。

 第一王女は、お菓子に夢中だった。

「あげないわよ」

 そんなお言葉をいただいた。

 かなりぽっちゃりだけど、そのうち化粧やドレスに興味を持って、しゅっとするんじゃないかと想像。

 箱ごとかかえて、ぼりぼりやってる。

 従者たちが止めないのは、うわさに聞く癇癪(かんしゃく)を恐れたのでなければ、父の毒牙から守るためって、好意的に受けとめることもできるけど。

 それ、敵を見る目だよね? 私の乳母ユリリアも負けてないけど。

 女王なんて前例のない国で、どちらも政略結婚の道具でしかない。競う意味あるのかな?

 第三王子はまだ幼くて、私の存在をよく理解してないようだった。

 あいさつしても聞いてるんだか、いないんだか。あさっての方向をむいているのが幼児ってものだよ。

 だからユリリア、そんなプリプリしないで。私がちょっと異常なだけだから。

 第四王子は、それに輪をかけている。だって、赤ちゃんだし。

 ただ、お付きの人たちは、私が訪れたことを喜んでくれた。少なくとも五割は演技じゃない。

 第四王子なんて第二王女以上に、みそっかすみたいな感じで肩身がせまいみたい。与えられてる居室も、北東の上階だしね。

 赤ちゃんだからっていい加減にしないで、カーテシーを披露したのもポイント高かったようだ。だっこは無理だけど、そうっとほっぺを(つつ)かせてもらった。マシュマロだぁ。

 あいさつ回りを終えて、いちばんの収穫は、城の中をわりと自由に動き回れるようになったこと。今回、特に問題を起こさなかったから、まあ、目こぼしてやるかって感じ? 乳母付き、護衛の騎士付きだけどね。

 菓子の賄賂(わいろ)をばらまきつつ、情報収集だ。

 子供の脳は甘味を欲しがるけど、アラフォーの記憶は砂糖の害を知っている。

 クッキーもどきの焼き菓子を一日ひと欠けと決めて、あとはメイドにわける。別に何か質問するわけじゃない。私はメイドたちのたまり場に顏出せる身分じゃないし。

 でも、廊下ですれ違いざま、「はい、あげる」子供だましでも、世間一般からすれば貴重なものだし、ゼロ円のスマイル付き。護衛騎士には、甘党だってわかってる人にだけね。

 一部じゃ、頭弱いんじゃないかとか言われてるらしいけど、油断してくれるならこれ幸い。

 同情なんだか、協力なんだか、自衛なんだが、よくわかんないけど。

 来週から寝巻に針を仕込むので(よろしく)とか、今日の菓子は下剤入り(だから配らないで)とか、これから誘拐を試みるので(阻止してくだされ)とか。

 こそっと忠告や、密告に助けられたことが何度かあったと、乳母やの言。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ