二つの王国①
六歳になった私は、代わり映えしない日々を送っている。
習い覚えたことといえば、初級のマナーと読み書き。刺繍とダンス。あとは簡単な自国の歴史。例によって、都合よく改変されたとおぼしきもの。
それから、絵画と歌と、リュートみたいな弦楽器をちょっとかじってる。貴族の素養だそうで。下手っぴなのに、先生が大袈裟に褒めるから、はずかしくて仕方ない。
計算なんかは、簡単なものでも、できないふりをしている。まだ六歳だから、それが当たり前だけど。この先も、この演技は続けて行こう。
できる以上にがんばっちゃうのは不幸のはじまり。前世でもそういう人をいっぱい見てきたし、自分もそれに近かったし。王妃を見てるとしみじみとそう思う。
乳母ユリリアの奮闘もむなしく、私の愛国心はまるで育っていない。まあ、なかみが擦れた現代人だからね。
ちなみにここは異世界で、地球の過去というわけじゃない。でも、あくまでイメージだけど、中世ヨーロッパによく似ている。それプラス魔法って考えば問題ないんじゃないかな?
で、愛国心うんぬんの話。私は、自分と自分のまわりの人が幸せなら、それでいいと思っちゃう。つまり自分、ユリリア、ハンナ、ブロンゾ。
それ以上は手に余る。親兄弟はもちろん、会ったこともない国民のことなんて、どんなに言い聞かせられても、まったく愛着がわかないし。いや、不幸になれなんて思ってないけど。
ただ、自分たちが豊かになるためなら、隣国は蹂躙してもいいって盛り上がってるのはついていけない。まあ、貴族たちに逆らえないのかもわからんけど。
私は、メイドの言葉を通して世間を見た。
ハンナは生まれた時から裕福で、でも私よりは、物乞いとか、負傷兵とか、孤児とか知っている。少なくとも、自分の目で見てる。
で、そんなはっきり言えば底辺の生活をしている人たちも、戦争万歳な空気にまんまと乗せられているようだ。




