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王都②

 王様から直々(じきじき)に、祝いと(ねぎら)いの言葉をかけられる私。

 すでに書類は提出してあるけど、これで私は正式にワルサさんの妻。わーい!

 《回復》魔法への(ねぎら)いには、各領主たちに道を整備させてることも含まれてるのかな? いや、教会に根回しはしてもらってあるけど、なに勝手なことしてんじゃーって、怒られる可能性もあって、ちょっとドキドキ。

 うん、まあ、いちおう王家にもメリットはあるのよ。ミスリルの採掘地であるうちの領地と、抽出用の炉を持ってる領地と、加工専門の職人を抱えてる領地を(くだん)の街道がつないでるからね。ミスリル製品をより早くお届けできますよ?

 その代わり、うちが謀反(むほん)を起こしたり、隣国が攻め入ってきたら、素早く王都に迫れるようになちゃうけどね。

「予は、新たなるギュベニュー辺境伯夫人を歓迎する。また、神聖なる力をもって民たちを慰撫したこと殊勝である」

 戦争について一言も言及しない。これが逆の立場だったら、うちの実家はいやみ言ったり、もっとあれこれ要求すると思う。

 溺れる犬をたたいたりしないんだね? よい意味での驚き。

 《回復》魔法についても、いろいろ尋ねられたり、もっと言えば、見世物ばりに実演させられるかと思ってたんだけど。

「予はここに宣言する。《回復》の大魔法は、彼の者を通して与えられる、神の加護である。ゆめゆめ強要することがあってはならん」

 これだけ誇り高く、気遣いもできる。少なくとも、そう見せることはできるのに、なんで勇者召喚なんてやってるんだろう?

 宰相の位置にいるカピバラみたいなおじさんが、しきりに(うなず)いて見せる。目はしっかり私に向いてるから、王に礼を言えってことだよね。

 でも、直答していいのかな?

 隣に立つワルサさんをじっと見上げると、顔をこちらに向けて、ゆっくり(まばた)きしてくれる。アイコンタクトって好き!

 私はスカートの両端を持って、ちょこっと(ひざ)を曲げる。

「国王陛下のあたたかいお気持ちが心にしみます。非力な私ですが、少しでもお役に立てるのであれば、これ以上のよろこびはありません」

 よそ見をするのは無礼と承知。これでいい?って、いかにも心配でたまらない(ふう)を装って、見たいものをみる。

 私の手綱(たづな)を握ってるのはこの人ですよー? (ないがし)ろにしたら《回復》魔法かけてあげないからね!

 ワルサさんは表情こそ変えないけど、軽くうなずいてくれる。うふふー。じつは、事前に打ち合わせしてたことなんだ。こうくるってわかっていても嬉しくて、演技なんかじゃなく、にっこりしてしまう。

 張りつめてた空気が、ふわっとゆるんだ。「まあ、お可愛らしいこと」って、そこかしこで微笑ましげに(ささや)き合う声が聞こえる。

 王様の視線をうけて、宰相が一歩前へ出る。

「これより朝議をはじめる。ギュベニュー辺境伯ならびに辺境伯夫人、列に並ばれよ」

「はっ」

 (だん)にかなり近い位置、王様からみて左手にちょっとした空きがある。そこにワルサさんと並び立って、神妙な顔をしている自分が不思議。そう、この国は夫婦そろって政治に参加できるんだ! もっとも女性は、夫を(つつ)いて発言させるんだけど。

 社交シーズンじゃないっていうのもあるけど、戦後処理中だからって理由で、私のお披露目はこういう形に。よきかな、よきかな。

「テクサ川の水門をさっさと開けるべきだ」「いや、まだ早い」「例年であればもう」「いや、今年はまだ雨が」「いーや、降らぬからこそ」

 ようは、自分も毎朝やってるミーティングみたいなものだけど。規模が全然ちがうね。

「トンマーヌ子爵、いいかげん返すものを返してくださらんか」「ええい、しつこい。四十年前のことなど忘れたわ」「しっかと覚えておられるではないか。あれは祖父が父に残した煙管(きせる)で」「だからワシは持っておらんというに。我がくそ親父殿の墓を勝手に掘ればよかろう」

 そこでは、あとで個人的に話し合ったら?っていうようなことから、国を揺るがす重大事まで、喧々囂々(けんけんごうごう)話し合う。あ、熱いぜ、ケセラサ王国! 唐突にはじまる(つか)み合いの、レフリーつとめる宰相は大変だね。

 そんな喧騒(けんそう)の中。二人ほど副音声つきで話す人がいて、容姿を見る限り違和感はないんだけど、どう考えても勇者だよね?

 あ、いまさらだけど、《飛行》の勇者は流暢(りゅうちょう)にこっちの言葉をつかってたんだ! 意外に努力の人なのかも。無理に近寄ってくる様子は見せないから、たまたま対面したら、あいさつするくらいでいいかな? いまのところ。

 ってか、それどころじゃない! 本来なら、取るに足りないような議案。王の動議で、あれよあれよという間に、私の学院通いが決定していた。

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