《回復》の儀①
教会からの告知をうけて、どの村まで光が届くか、領民は事前に知らされていたわけだけど。
確実さを求めて、教会を取り巻く人、人、人。おさえた中にも熱のこもった囁きが積み重なり、波のようにうねる。
領境から教会に向かうまでの間、私たちの馬車を迎えた人は疎らだった。その目には、警戒と不安があるように見えたから、正直おどろいている。
群衆をかきわけて道を作り、警備の目も光らせなければならない、護衛たちが気の毒になるくらい。
内訳は病人と怪我人、その家族とおぼしき人たち。なかには、動かしたら危険なんじゃ?って、見るからに重篤な人もいて、私は大いに焦る。
やばっ、やばっ、やばぁー! あれじゃ、儀式の終了までもたないよ。たいてい、こういう時のあいさつとかお祈りって長いんだから。
馬車に乗って通過しながら、私は目につくやばそうな人に、ピンポイントでやんわり《回復》をかけていく。儀式の終了までもつくらいにね。ぎりぎりじゃ不安だから、三日くらい寿命が延びたと思うけど。
余波にさらされた人たちから、「ああ、聖女様が通られただけで空気が清浄になったような」「心洗われる思いだわ」なんて、声が聞こえてくる。
どうやら、心の病も治せるみたいよ? もっとも、本元の原因をなんとかしないと、すぐ元に戻っちゃうと思うけど。
教会の屋上で祈りを捧げる教父様の声が朗々と響く。すっごい肺活量。あれも《身体強化》のおかげなのかな?
南方は目に訴え、北方は耳にうったえるって本当なのね。
ヤラレタ王国では、こちらの教会のことを「北方教会」。こちらの人たちは、ヤラレタ王国の教会を「南方教会」って呼んでいる。自分たちの方をただ「教会」って呼ぶのはどちらも同じ。
もともと同じものらしい。昔、偉大なる魔法使いを認めるか認めないかで意見が分かれた。
いろいろ理由はあっただろうけど、魔法使いがケセラサ人だったことが、「南方」が「北方」を認めないいちばんの理由になったみたい。
「北方教会」は偉大なる魔法使いを認め、保護した。いまの私みたいな立場だったんじゃないかって想像する。
神を信仰するって教義の部分では、ヤラレタ王国の教会の方が形を保っているけど、実際は、貴族専用の免罪符発行機関なんだ。その札の装飾が、また見事でね。各教会にある壁画もすごいらしいよ? 一般人は、色彩豊かに描かれた地獄ってものが訳もわからず怖くて、ほそぼそとお布施を納めているんだとか。
そこへいくと、ケセラサ王国の教会は無敵だね。だって、経済と宗教を牛耳ってるんだよ? 一つの組織が! それでいて、貴族の面子をつぶさない。っていうより、面倒事は貴族に押し付けて、実利をとる強かさがまあ、なんとも。私、キライじゃないわ。




